お遍路の件

朝日新聞徳島総局 @asahi_awa

「『大切な遍路道』を朝鮮人の手から守りましょう」と書かれた貼り紙をめぐって、ネット上では「差別ではない」と言い切る書き込みも拡散しました。遍路道を歩きながら、いまの社会を考えました　（徳島）遍路道「貼り紙」問題、歩いて聞いた - http://t.co/HnilptyMif

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貼り紙は２３日までに、徳島県内の４市３町１１カ所で１７枚、香川県の４市１０カ所で１４枚、愛媛県の２市４カ所で７枚発見され、愛媛では５市２町の９カ所の休憩所の記帳ノートから同内容の書き込みも見つかりました。

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貼り紙がやり玉にあげているのは、韓国人女性が貼ってきた道案内用シールのようです。貼り紙問題が報道されると、ネットでは「景観や日本の文化を破壊するものだ」と、韓国人女性批判も拡散しました。案内シールの一部が、条例で広告物が禁じられた道路標識などにも貼られていたためです。

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試みに、小松島市内の１８番札所恩山寺付近から１９番札所立江寺に至る約５・２キロを歩いてみました。５０～２００メートルほどの間隔で様々な道しるべのシールが電柱、標識などに貼られています。確認できたのは、約１０種類４０枚ほど。うち半分ほどが、韓国人女性のものでした。

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しかし、どのシールも小さく、分散して貼られていることもあり、目障りというほどではありません。住民は「気づかなかった。景観を壊すとは思えない」と語り、歩き遍路の人々は「シールに随分助けられた」と感謝しています。

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韓国人女性が貼ったシールをめぐっては昨春、一部のマスコミで紹介された後、「屋外広告物条例に違反しているのでは」と指摘するメールなどが四国４県に寄せられていました。韓国人女性は行政当局からの説明で、条例による規制を初めて知ったそうです。

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それまで、遍路道の案内シールに関する苦情が４県に寄せられたことはほぼなく、行政側も、お遍路さんの利便性などを考慮して柔軟に対応してきたようです。条例をしゃくし定規に解釈して一律に撤去すれば、かえって混乱が生じかねないからです。

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案内シールを長年作ってきた香川県のＮＰＯ法人の関係者も、「感謝されることはあっても問題視されることはなかった」と言います。八十八ケ所霊場会に所属する寺の住職らも、「道しるべを置くのは遍路の文化」と振り返ります。

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遍路道に様々な案内シールがある中、なぜ韓国人女性のものだけが標的にされたのか。「シールに記されたハングルに反応したのでは」との見方もあります。「礼儀しらずな朝鮮人」「気持ち悪いシール」という文言からは韓国・朝鮮人への悪意が感じられます。県や法務局が調査に動いているのもそのためです

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差別表現に詳しい奈須祐治・西南学院大学教授は「『嫌韓』の潮流が大きくなっていることが背景にある」としつつ、「外国人を受け入れる観光地に人種差別をあおる紙が貼られる事例はほとんど聞いたことがない」と、世界遺産登録を目指す遍路道で起きたことに驚いています。

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「日本型排外主義」の著書がある樋口直人・徳島大学准教授は、保守的な論壇が歴史認識をめぐる問題で近隣諸国をバッシングし、既成政党もそれに乗る中、ネットを通じて排外的な論調が拡大していると指摘します。

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「政治的に裏打ちされた主張だ」という気分が拡散に拍車をかけ、ヘイトスピーチを繰り返す団体のネット映像が個人の行動を助長している面もあるとして「排外主義に染まるのは特殊な人ではない」と注意を促しています。

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そして、樋口氏は「今回のような事例をきちんと検証し、許してはいけないと繰り返し報道し続けることが大切だ」と、マスコミの責任も強調します。憲法記念日を前に、その指摘をあらためてかみ締めたいと思います（J）