IF戦闘:雨綴vs影纏

影纏≪@s_akiyui≫ 雨綴≪@hakujo_
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――一人
定義:傲慢。長い色の外套を羽織る緋い瞳の青年。
彼の者は『雨綴』。

――一人
大罪:怠惰。黒い髪。長い前髪。紺の長着、黒の羽織。腰には二刀。
彼の者は『影纏』。

――彼の地にて邂逅す。

紺青ものえ @almiyy

ぎしりと音を立てて開いた『扉』の重みは、手を離した瞬間に忘却する。 木蘭色の外套をふわり揺らしながら一歩踏み出せば、何処までも平坦に、いや、遠く地平線のように見える寥郭たる大地があった。 何処か虚ろな銀朱の眸は気怠げに細まり、異色が混ざり色を疑うような灰の長い髪は無風に垂れる。

2014-04-20 20:40:17
紺青ものえ @almiyy

久方振りの日差しに白い手を翳し、鬱陶しそうに眉を寄せ、何かを探すように視線を周囲に散らす。ゆっくりと検分し、しかし近くに適うものはなく、それを認めたように「何もないな」と其処でようやく青年は初めて声を発し、場所を変えようとゆっくりと歩き出した。

2014-04-20 20:40:22
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

ふらり、ふらり。身体を気怠げに揺らし、彼は進む。ふらり、ふらり。足を動かす気配は無く、しかし前へ。ふらり、ふらり。顔は前髪に隠れて見えない。しかし微かに覗いた口元だけはニヤニヤと笑みを絶やすことはなく。 「ふふ、うふふ、ふふふふふふ、ふふ、あは、あははぁ」

2014-04-20 22:03:54
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

幸せそうな声を上げ、ふらり、ふらり。その足元には揺れる黒。目の前にある『扉』を開けて、するりとその向こうへ踏み出す。 広がっていたのは寂寞とした地平線。彼はそれを見て更に笑みを深め、笑い声を上げた。いいや、正確には其処に対して笑ったのではない。其処にある形——

2014-04-20 22:04:32
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

——間違いなく人の形をしたそれに、彼は笑った。 「うふ、うふふ、はは、あは、あははぁ、ツイてますねぇ、ふふ、あはは、ははは」 ふらり、ふらり。羽織を揺らし、彼は歩き出す。彼の周りにはふらふらと揺れる黒の束。まるで長い腕のような形をしたそれらを引き連れて、彼は人影へと近付いて行く。

2014-04-20 22:05:32
紺青ものえ @almiyy

暫くも歩かない内に、青年の耳には他人の声が滑り込む。それは笑う声。 普段聞かない音は珍しく、僅かな興味を惹くが、耳障りだ。銀朱は瞬き、横へ。足を止め身体を声のする方へ返すよりも早く視線を投げつける。じゃりと砂を擦る音。長い髪が遅れて付いてきて曲線を書くように揺れる。

2014-04-20 22:35:33
紺青ものえ @almiyy

視線に立つ笑い声の主は黒い影のようなものを従え其処に居た。影。腕のような。視線はゆっくりと検分する。いや、観察とも言える。それはよく生きた物を見る際にする、何故動いているんだろうという視線。 「お前は何だ?」 高くもなく低くもない、しかし鈴の音のようにはっきりと響いた声を投げた。

2014-04-20 22:35:38
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

人影が、近付く。明確な輪郭を持つ。彼はそれを認識した。男だ。長い髪をした男だ。灰色だ。目は、銀朱だ。ふらり、ふらり。 「うふふ、あはは、さあ?さあ?誰でしょう、誰だと思います?うふふ、ふふは、はは、あははは、あは」 足を止める。ゆらり、身体を揺らす。唇が弧を描く。

2014-04-20 22:51:30
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「あはははは、はは、貴方は人?貴方は物?貴方は罪?貴方は徳?あははっ、あははははははははははははははははははははははははっ」 歓喜するかのように声は膨れ上がる。呼応するかのように、ゆらりと揺れる影の腕。その数、およそ十。

2014-04-20 22:51:48
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「うふふふっふふっふふはっははっあははっ!はははははっ!あははははははははははははははははははははっ!」 そして何の宣言もなく、影は男へ向かって伸びた。その身体を捕らえ、引き裂き、千切らんと、凄まじい勢いで迫り行く。

2014-04-20 22:52:10
紺青ものえ @almiyy

「質問に質問を返すな」 ゆらゆらと揺れる人物の言葉を青年は半ば聞き流す。顔は口元以外見えず、相手の言葉も理解するには意味を見い出せない。ただ、 「俺は『物』ではなく『書』、故に其処示すものはない」 鬱陶しい笑いだと思考し、声に合わせて膨れたそれを見る。影。腕を模したそれ。

2014-04-20 23:16:00
紺青ものえ @almiyy

大きく伸び膨れた『腕』を一瞬のうちに数え、 「躾(マナー)の無い奴だ、人間の形をしているのに」 舌を打ち、後方へ跳躍する。 外套の下から取り出したのはコインの形を模した石。表面に細かな模様の字の掘られた灰色。握り込み、高く投げ。

2014-04-20 23:16:03
紺青ものえ @almiyy

「刃を寄越せ」 歪めた口を開き、紡ぐ。 『――其は鋼の爪、西陽に灼かれぬもの。 高きより落ちる断頭の刃』 何処からか青年の言葉に合わせて、女にも男にも聞こえ、獣にも無機物にも連なる『声』が重なった。

2014-04-20 23:16:46
紺青ものえ @almiyy

直後。 打ち上げた石、それは大きな刃となって黒く伸びた影造りの『腕』目掛けて、風を裂き、音を立てながら重力による加速に追従し、真っ直ぐに落ちた。

2014-04-20 23:16:53
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「うふふ、あっはは、あははは、そう、『書』、『本』、そう、あははっあはははははははっ」 ゆらり、ゆらり。身体を震わせ、喉を震わせ、けたたましい笑い声を響かせる。 「躾?マナー?あはっ、あははっ!そりゃぁあるわけ無いよぉ。僕は卑しい子だものぉ!あははっ!あははっ!あははははははっ」

2014-04-20 23:35:07
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

言葉を掴む。言葉を返す。しかし思考を回しているかさえ怪しい。 跳躍する男を影は追いかける。伸びて掴もうとする。しかし、それは寸前で阻まれる。刃だ。刃だ。刃が、影を散らしてしまったのだ。

2014-04-20 23:35:59
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「うふはっははっははははっあはっあはぁ、不思議だなぁ、面白いねぇ、あははっ、うふふっ、あはっあはっあはっあはぁっ」 しかし彼は気にしない。霧散した影は雨のように地面に落ちる。黒点、黒点、黒点、黒点。ズルズルと彼に集まって、再び腕を形成する。数は再び十。再度、男に向かって行く。

2014-04-21 05:20:56
紺青ものえ @almiyy

……影には効かないのか。 切断と共に着地し、新たな石を取り出し、一つ落とす。銀朱は観察と吟味、思考は緩やかなまま現状把握を継続する。損害・損傷は感じられないまま、切断した影は持ち主に戻り、再度『腕』を模る。 「喧しいな」 鬱陶しい笑い声に顔を顰めて払うように、外套を揺らし、

2014-04-21 12:04:36
紺青ものえ @almiyy

「そう、『本』だ。名乗るとすれば『オルテルシア』もしくは『雨綴』だ」 覚えなくてもいいが、と付け加え、影を見た。それはこちらへ前進。数は――と思考を回し、視線は周囲をなぞる。 「貴様も面白いといえば面白い、しかしその口は喧しくて邪魔としか思えん、閉じろ」 浮かべたのは不愉快。

2014-04-21 12:04:40
紺青ものえ @almiyy

口を開く。 「――火を寄越せ」 『総て焼く火が竈から伸び、轍を越えて遠きを目指す』 その言葉と同時に無情の声。落とした石から伸びたのは赤くゆらぎ燃え盛る炎の槍。腕を無視しそれを伸ばす者へ真っ直ぐに向かう。 「視線を叩け」

2014-04-21 12:04:50
紺青ものえ @almiyy

そして銀朱は黒い腕を見つめ、 「――追加だ、重き鉄を」 『万物標本のまち針、青い砂より時を待て』 袖から落とした細工入りの鋼の棒、文字が僅かに光を帯び、形状を剣にも槍にも見えるものへと変容させる。それはただ歪で、しかし美しい曲線刃が確実な鋭利さを持って其処に在った。

2014-04-21 12:05:06
紺青ものえ @almiyy

青年は柄を素早く握って大きく横に薙ぎ、正面の『腕』と右側を大きく、しかし力強く叩き、すぐさま回避を取って下がり、去なすように刃を『腕』へ向ける。 右腕に『腕』の爪が掠った事も気にせず、確実に腕を裂く為に最短を選び。

2014-04-21 12:05:20
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「うふふ、ふふ、ふは、ははは、『オルテルシア』?『雨綴』?ふふ、ふふふ、うふふふふふふふ、綺麗、綺麗な名前、うふふ、ふふふふふっ!」 ふらり、ふらり。思考を揺らす。男の名を舌先で飴玉みたいに転がして、歓喜したかのように声を上げる。その様、まるで無邪気な子供のよう。

2014-04-21 13:11:28