【鼻血論争】放射線や放射能による白血病のせいにするのは、被曝量の桁の違いや時間からみてナンセンス

@loquat_priest さんによる、放射性免疫療法薬「ゼヴァリン®」と副作用の解説  http://zevalin.jp/unmember/about.html ・いったい、「鼻血論争」はいつまで繰り返されるのでしょうか?
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枇杷 @loquat_priest

ゼヴァリンの副作用としての血球減少と二次性白血病、やっぱり一度ちゃんとまとめておいた方がいいかなあ。

2014-05-03 21:39:06
枇杷 @loquat_priest

ちょっと小難しい連ツイします。

2014-05-04 10:30:11
枇杷 @loquat_priest

ゼヴァリンという薬があります。日本では、ある種のリンパ腫で初発以外の使用が認められてるもので、放射性物質であるイットリウム90(以下90Y)をある種の抗体にくっつけた薬です。

2014-05-04 10:32:23
枇杷 @loquat_priest

抗体は、リンパ腫細胞を含むB細胞という白血球の一種を狙い撃ちするもので、似たような抗体で放射性物質を使わないリツキサンという薬は世界中でリンパ腫の標準治療薬として使われています。ゼヴァリンも日本だけでなく世界中で使われる薬です。

2014-05-04 10:34:31
枇杷 @loquat_priest

90Yは純β線核種で、半減期約64時間でβ線のみを放出して非放射性のジルコニウム90になります。このβ線が、抗体がくっついた細胞やそのまわりの細胞を傷害して、リンパ腫に対して治療効果を発揮するという薬です。

2014-05-04 10:39:30
枇杷 @loquat_priest

放射線による治療効果を期待する薬なので、その投与量が検査よりずっと多くなります。標準的には体重1kgあたり14.8MBqで、体重60kgの人には実におよそ900MBq(9億Bq)。大事なのでもう一度言いますが、ひとりの人に9億ベクレルの放射性物質を注射で投与するわけです

2014-05-04 10:45:32
枇杷 @loquat_priest

これだけの量の放射性物質を体内に直接投与するので、当然のことながらものすごく内部被曝するわけです。いろいろな体の障害が出ます。日本で55人の患者さんで行われた治験では、その障害のうち、鼻出血は4例(7%)でした。

2014-05-04 10:55:08
枇杷 @loquat_priest

55人という数は臨床試験の規模としては比較的少数で、もっと大勢の人で確かめた場合、頻度が変わってくる可能性はあります。ただ、これだけの量の内部被曝をしても、多めに見積もっても10%くらいの人にしか鼻血はみられないんです。

2014-05-04 10:58:40
枇杷 @loquat_priest

(海外ではもっと大規模な試験も複数行われてますが、鼻出血まで記載されてる詳細な報告はいまのところ見つけられていません)

2014-05-04 10:59:34
枇杷 @loquat_priest

さらに大事なこと。これだけ大量の放射性物質で内部被曝するので、急性放射線障害としての造血障害(血液細胞をつくる力の低下)が当然起こります。国内の治験では、85%以上の患者さんに白血球、血小板の減少がみられました。

2014-05-04 11:04:57
枇杷 @loquat_priest

ふつうは血液0.001mLあたり(以下、/uLと表記)15万以上はある血小板が、5万/uL未満まで下がった人は58%、2.5万/uL未満まで減った人が3%いました。

2014-05-04 11:08:51
枇杷 @loquat_priest

ゼヴァリンの体内分布を調べた結果から計算すると、体重60kgの人で、いちばん被曝量の少ない皮膚でも吸収線量でおよそ900mGyの被曝をしています。鼻の粘膜でも、少なく見積もってもそれ以上の被曝をしていると考えて間違いありません。

2014-05-04 11:12:08
枇杷 @loquat_priest

何が言いたいかというと、9億Bqの放射性物質を投与され、鼻の粘膜に1Sv近くの被曝をして、血小板が臨床的に出血しやすくなる5万/uLを切るほど下がっても、鼻血が出た人は10人に1人くらいしかいなかったわけです。

2014-05-04 11:16:27
枇杷 @loquat_priest

FIT試験という臨床試験があります。ヨーロッパで、ある状態のリンパ腫の患者さんに、ゼバリンを投与するorしないでその後の経過を調べたものです。およそ200人ずつの患者さんが試験に参加しました。

2014-05-04 11:39:05
枇杷 @loquat_priest

2013年にこの試験の7年長期フォローアップのデータが発表されました (J Clin Oncol 31: 1977-1984)。それによれば、急性骨髄性白血病(AML)およびその前段階といえる骨髄異形成症候群(MDS)の発症率は、ゼヴァリンを投与された群で7人(4.2%)でした。

2014-05-04 11:46:24
枇杷 @loquat_priest

AML/MDSを発症するまでの期間は中央値で4.8年、1.8-7.0年の範囲でした。付け加えると、7人の患者さんのうち3人は自家移植を含む化学療法を、3人は放射線治療をゼヴァリンの後に追加治療として受けています。

2014-05-04 11:53:23
枇杷 @loquat_priest

体内分布からの計算によれば、ゼヴァリン900MBqを投与された人の骨髄での吸収線量は、およそ1.8Gyと見積もられます。これだけの被曝をしても、AML/MDSの発症率は7年後まで4%程度にとどまるということです。

2014-05-04 12:02:51
枇杷 @loquat_priest

私の知る限り、原発作業員以外の方で、福島第一原発事故後に100mSvを超える内部/外部被曝を受けたと証明された人はいないはずです。各地のデータから推測される被爆線量でも、それを超える被曝量が推定される人はいません。

2014-05-04 12:07:17
枇杷 @loquat_priest

また、90Yによる2ヶ月以内での急性被曝に対して、原発事故の被曝は少なくともヨウ素131以外では長期にわたる慢性被曝です。

2014-05-04 12:09:03
枇杷 @loquat_priest

まとめ。体重あたり14.8MBqの90Yの急性被曝による障害でも鼻出血は比較的少ないのに加え、AML/MDSの発症率も低く発症時期は数年後。仮にいまの日本で鼻血が多くみられるとしても、それを放射線や放射能による白血病のせいにするのは、被曝量の桁の違いや時間からみてナンセンスです。

2014-05-04 12:15:18
枇杷 @loquat_priest

ひとつ計算間違いがありました。鼻の粘膜の吸収線量はおよそ500mGyで、0.5Svほどになります。訂正してお詫びします。

2014-05-04 12:22:55
枇杷 @loquat_priest

なるべく正確を期したつもりだったけど、1ヶ所計算ミス。やっぱりまだまだだな。

2014-05-04 12:48:15
枇杷 @loquat_priest

@SAKURA11124 http://t.co/JImEzal4wEを参考にして下さい。90Yはβ線しか出さないので、投与後の患者さんも(排泄物を除いては)ごく近いところまでしか放射線の影響はないので、あまり厳密な管理は必要ありません。

2014-05-04 11:58:45
リンク zevalin.jp Zevalin® 医療関係者様用サイト|ゼヴァリンについて|放射線安全管理上の注意事項 Zevalin.jp は「ゼヴァリン®によるRI標識抗体療法」が安全かつ最大の治療効果を得るべく実施されるための様々な情報を提供しています。このページでは医療関係者向けにゼヴァリン療法の留意点について説明しています。