【鼻血論争】放射線や放射能による白血病のせいにするのは、被曝量の桁の違いや時間からみてナンセンス
ゼヴァリンという薬があります。日本では、ある種のリンパ腫で初発以外の使用が認められてるもので、放射性物質であるイットリウム90(以下90Y)をある種の抗体にくっつけた薬です。
2014-05-04 10:32:23抗体は、リンパ腫細胞を含むB細胞という白血球の一種を狙い撃ちするもので、似たような抗体で放射性物質を使わないリツキサンという薬は世界中でリンパ腫の標準治療薬として使われています。ゼヴァリンも日本だけでなく世界中で使われる薬です。
2014-05-04 10:34:3190Yは純β線核種で、半減期約64時間でβ線のみを放出して非放射性のジルコニウム90になります。このβ線が、抗体がくっついた細胞やそのまわりの細胞を傷害して、リンパ腫に対して治療効果を発揮するという薬です。
2014-05-04 10:39:30放射線による治療効果を期待する薬なので、その投与量が検査よりずっと多くなります。標準的には体重1kgあたり14.8MBqで、体重60kgの人には実におよそ900MBq(9億Bq)。大事なのでもう一度言いますが、ひとりの人に9億ベクレルの放射性物質を注射で投与するわけです。
2014-05-04 10:45:32これだけの量の放射性物質を体内に直接投与するので、当然のことながらものすごく内部被曝するわけです。いろいろな体の障害が出ます。日本で55人の患者さんで行われた治験では、その障害のうち、鼻出血は4例(7%)でした。
2014-05-04 10:55:0855人という数は臨床試験の規模としては比較的少数で、もっと大勢の人で確かめた場合、頻度が変わってくる可能性はあります。ただ、これだけの量の内部被曝をしても、多めに見積もっても10%くらいの人にしか鼻血はみられないんです。
2014-05-04 10:58:40さらに大事なこと。これだけ大量の放射性物質で内部被曝するので、急性放射線障害としての造血障害(血液細胞をつくる力の低下)が当然起こります。国内の治験では、85%以上の患者さんに白血球、血小板の減少がみられました。
2014-05-04 11:04:57ふつうは血液0.001mLあたり(以下、/uLと表記)15万以上はある血小板が、5万/uL未満まで下がった人は58%、2.5万/uL未満まで減った人が3%いました。
2014-05-04 11:08:51ゼヴァリンの体内分布を調べた結果から計算すると、体重60kgの人で、いちばん被曝量の少ない皮膚でも吸収線量でおよそ900mGyの被曝をしています。鼻の粘膜でも、少なく見積もってもそれ以上の被曝をしていると考えて間違いありません。
2014-05-04 11:12:08何が言いたいかというと、9億Bqの放射性物質を投与され、鼻の粘膜に1Sv近くの被曝をして、血小板が臨床的に出血しやすくなる5万/uLを切るほど下がっても、鼻血が出た人は10人に1人くらいしかいなかったわけです。
2014-05-04 11:16:27FIT試験という臨床試験があります。ヨーロッパで、ある状態のリンパ腫の患者さんに、ゼバリンを投与するorしないでその後の経過を調べたものです。およそ200人ずつの患者さんが試験に参加しました。
2014-05-04 11:39:052013年にこの試験の7年長期フォローアップのデータが発表されました (J Clin Oncol 31: 1977-1984)。それによれば、急性骨髄性白血病(AML)およびその前段階といえる骨髄異形成症候群(MDS)の発症率は、ゼヴァリンを投与された群で7人(4.2%)でした。
2014-05-04 11:46:24AML/MDSを発症するまでの期間は中央値で4.8年、1.8-7.0年の範囲でした。付け加えると、7人の患者さんのうち3人は自家移植を含む化学療法を、3人は放射線治療をゼヴァリンの後に追加治療として受けています。
2014-05-04 11:53:23体内分布からの計算によれば、ゼヴァリン900MBqを投与された人の骨髄での吸収線量は、およそ1.8Gyと見積もられます。これだけの被曝をしても、AML/MDSの発症率は7年後まで4%程度にとどまるということです。
2014-05-04 12:02:51私の知る限り、原発作業員以外の方で、福島第一原発事故後に100mSvを超える内部/外部被曝を受けたと証明された人はいないはずです。各地のデータから推測される被爆線量でも、それを超える被曝量が推定される人はいません。
2014-05-04 12:07:17まとめ。体重あたり14.8MBqの90Yの急性被曝による障害でも鼻出血は比較的少ないのに加え、AML/MDSの発症率も低く発症時期は数年後。仮にいまの日本で鼻血が多くみられるとしても、それを放射線や放射能による白血病のせいにするのは、被曝量の桁の違いや時間からみてナンセンスです。
2014-05-04 12:15:18@SAKURA11124 http://t.co/JImEzal4wEを参考にして下さい。90Yはβ線しか出さないので、投与後の患者さんも(排泄物を除いては)ごく近いところまでしか放射線の影響はないので、あまり厳密な管理は必要ありません。
2014-05-04 11:58:45