ニチョーム・ウォー……ビギニング #7

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ニチョーム・ウォー……ビギニング】#7

2014-05-25 22:40:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆ジュクレンシャは爆発四散した。イキツモドリはセンコ花火めいたサクラ・エンハンス爆発で宙に弾かれていく。ヤモトはドス・カタナを白砂に突き刺し、身体を支える。イクサがまだ終わっていない。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ショーゴーとヘンチマンに加勢するか?それともエンプレスを目指すか?◆

2014-05-25 22:41:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆ヤモトの思考は答えにたどり着かなかった。ドウン!唐突に、全く唐突に、闇の中から無灯火のゴールデン・ヤクザリムジンがロケットスタート加速で出現し、ヤモトを撥ねた。ドアが開き、デッドフェニックス・クランのオヤブンが優雅に降り立った。落下したイキツモドリがボンネットに突き刺さった。◆

2014-05-25 22:41:39
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(((何をされた)))ヤモトは必死に思考を巡らす。(((アタイ、今、何をされた?)))ヤモトは手をついて、身体を持ち上げようとした。動かない。凄まじき強敵ジュクレンシャ。最後の悪あがきへの警戒。ザンシン。衝突の瞬間、彼女の集中とニンジャ第六感はジュクレンシャに費やされていた。1

2014-05-25 22:45:22
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「小娘!その身に刻んだか?ヤクザの礼儀を」凛とした女の声をヤモトの聴覚が拾い、脳内でグラグラと反響させた。「よう暴れたの。その意気や良し。しかしヤクザクランはナメられたら実際オシマイじゃ。たっぷり歓迎してやろうのう」声の主の後ろに運転ヤクザが素早く侍り、毛皮コートを脱がせた。 2

2014-05-25 22:54:19
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「ドーモ。エンプレスです」コートの下から現れたのは、鯉を鉤爪でとらえる双頭の鳳凰の刺繍が金銀の糸で施されたキモノ、はだけた上半身に巻かれた黒いビスチェ、ブラックオニキスのカンザシ、幻惑的なヴェールを身につけた、威厳に満ちた女ヤクザニンジャであった。「アイサツせえ。無礼娘」 3

2014-05-25 23:06:04
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ヤモトは砂と土を掴み、力を込めようとした。「イヤーッ!」「ンアーッ!」エンプレスが、そこへ容赦なきケリ・キックを見舞った。ヤモトは庭に並ぶボンサイの鉢植え群に叩きつけられた。エンプレスの両手が空を切ると、それぞれの手には極めて恐ろしい業物が握られていた。ナンバンとカロウシだ。4

2014-05-25 23:12:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイサツせえ!」エンプレスが怒声を張り上げた。傍らの運転ヤクザは失禁を堪えた。「イヤーッ!」ヤモトは手元の地面に拳を叩きつけ、立ち上がり、アイサツした!「ドーモ。エンプレス=サン。ヤモト・コキです」その目に再びニンジャソウル光が灯る!メキメキと盆栽が裂け、破片が舞い上がった。5

2014-05-25 23:17:18
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木屑はヒトダマじみた桜色の光に吸い寄せられ、不可思議なパッチワークを作り上げる。鳥じみたシルエットの木屑集合体が二羽、命をもって羽ばたき、ヤモトの周囲を旋回し始める。「デッドフェニックス・クランは今夜でおしまいだ」ヤモトは再び言った。「今夜アタイがこの世から消す」「ホホホ!」 6

2014-05-25 23:24:44
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エンプレスは威圧的な二刀のカラテを構えた。むき出しの背に双頭フェニックスの刺青。今にもその燃える翼をひろげ、飛び立つかのようだ。「アマクダリが昼ならば、デッドフェニックスは夜。義侠のニンジャはすべて妾の元へ集う。光あらば影あり。陰陽はこの世の道理。アマクダリにも止められぬ」7

2014-05-25 23:34:47
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「義侠?」ヤモトが拳をかたく握った。「お前は卑怯者のヨタモノだ」「卑怯!なんとまあ!」エンプレスは面白そうに目を細めた。「なんとまあヤクザがナメられたものじゃ。通り一遍のつまらぬモラル議論に弁護士先生でも呼ぶかえ」「要らない」ヤモトは言った。倒すからだ。ヤモトは地を蹴った。 8

2014-05-25 23:49:24
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「イヤーッ!」ナンバンが閃いた。ヤモトの胴体を横薙ぎの斬撃が狙う。時間差でカロウシが頭部切断を狙う。何たる通常であれば到底回避が不可能な多重斬撃か!だがヤモトの周囲を下僕めいて旋回する木屑の鳥が斬撃軌道に割って入り、砕けながら切っ先を反らした!「イヤーッ!」 9

2014-05-25 23:52:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

首を刈り取るハイキックがエンプレスを襲う!「イヤーッ!」エンプレスは回転しつつ身を沈めてこれを回避、ヤモトの軸足を狙う払い切りを繰り出す!ヤモトの回避が一瞬早い。軸足だけの力で軽く跳ね、足首を切断しようとするカロウシを躱した。空中で身を捻り、「イヤーッ!」手をついて側転した。10

2014-05-25 23:59:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」エンプレスの攻撃は止まらない。庭のボンボリの光を受ける二刀の刃が闇に白い斬光を刻み、側転するヤモトを追う。砕けた木屑が再び歪な飛行物体の形を取り、刃を受け、再び砕ける。致命傷を防ぐ。エンプレスは舌打ちする。しかしこのイクサは彼女のものだ。ヤモトは所詮、丸腰だ。11

2014-05-26 00:04:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方のヤモトは朦朧の中に落ちかかる意識を意志の力で引きずり上げ、斬撃軌道を読もうと努め、傷を最小限に抑える動きをとり、勝機を探り続けていた。(((勝つ。倒す。そしてニチョームに帰らないとダメだ)))彼女は心中呟く。(((勝って、無事で帰る。絶対だ。そうしないとダメなんだ)))12

2014-05-26 00:09:53
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イクサはここから始まる。憂いを断ち、準備を整え、アマクダリに対し蜂起する。ヤモトは戦わねばならない。ニチョームはヤモトの故郷になってくれた。自分をこれまで護ってくれた。だが、子供のように護られていては、戦えない。護られるのは終わりだ。恩を返す番だ。護る番だ。それがケジメだ。 13

2014-05-26 00:17:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「ンアーッ!」ナンバンがヤモトの左上腕を薙いだ。骨まで達するかという深い傷だった。ヤモトは人工の川のほとりを転がり、傷を押さえた。きれいな傷口であることが幸いだった。ヤモトは跳び下がって間合いを取り、裂いた袖をかたく縛りつけた。その傷口すらも桜色を帯びて光った。14

2014-05-26 00:24:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

得物が要る。ヤモトのカラテはイアイドーだ。カギ・タナカのインストラクションを受け、逃走と戦闘の中で練り上げ、研ぎ澄ませたワザだ。ナンバンとカロウシを構え、エンプレスが近づく。ヤモトは彼女の肩越しに黄金のヤクザリムジンを見る。ボンネットにアーサー王の伝承めいて刺さったカタナを。15

2014-05-26 00:30:10
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「イヤーッ!」KRAAAASH!「グワーッ!」邸宅の壁が破砕し、スーサイドが縁側を転がって、砂の上に落下した。頭を振って起き上がる彼を、邸宅側から侮蔑的に見下ろすヘンチマン。コートの埃を払い、帽子を被り直す。赤熱する右手は白い煙の筋を立ち昇らせている。 16

2014-05-26 00:34:05
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「自慢のジツはネタ切れか、ア?」ヘンチマンは巨大な右手を握った。内なる熱で、すぐさまそのサイバネ指が赤く染まる。「スレッジハマーのバカがどうしてくたばったか、だいたいわかったぜ。吸収者。奴もどうしようもないクソバカだ。バカだから裏街道に堕ちて、そして死んだ」「テメェも死ぬぜ」17

2014-05-26 00:40:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「悪態をつくがせいぜいか、ドチンピラ」ヘンチマンが縁側を降り、スーサイドに近づく。リムジン越しにヤモトとエンプレスを見やる。「あっちが片付いちまうじゃねえか。手間ァかけさせやがって」「ヘッ!」スーサイドは口中の血を吐き捨てた。「要はテメェが大した奴じゃねえのさ」「ありがとよ」18

2014-05-26 00:44:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヘンチマンが手のひらをスーサイドへ向ける!「イヤーッ!」グレネードスリケンが放たれる!だがスーサイドはこれを先読みしていた。放たれた瞬間、グレネードスリケンは接近したスーサイドによって高く蹴り上げられていた。KABOOOM!上空でグレネードが花火めき、イクサを照らした。 19

2014-05-26 00:48:21
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「何ィ?」「イヤーッ!」「グワーッ!」スーサイドのボディブローがヘンチマンに叩き込まれる。スーサイドはヘンチマンの懐をそのまま掴み、キアイを込めた。「イヤーッ!」「イヤーッ!」吸収を阻止すべく、ヘンチマンが左チョップを振り下ろす。スーサイドはこれを右腕でガードした。 20

2014-05-26 00:50:56
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「チィーッ!」更なる攻撃をヘンチマンは諦め、スーサイドを振り払って後退する。スーサイドにとっても厄介なイクサだ。ニンジャのエネルギーを吸うのは至難。しかもヘンチマンは手の内を知り、絶対にそれをさせようとしない。ジリー・プアー(徐々に不利)だ。 21

2014-05-26 00:53:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「来いよ」スーサイドは挑発的に手招きする。ヘンチマンは乗らない。ゆっくりと間合いを調節し、サイバネティクス右拳の必殺の赤熱打撃を浴びせようというのだ。イクサは徐々に破滅的収束に向かいつつあった。スーサイドの背、リムジンのボンネットに刺さったカタナに、木屑の飛行体が止まった。22

2014-05-26 00:58:57
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