【ここまでの経緯】
世間を騒がせた美味しんぼの鼻血問題「福島で被曝による鼻血がありえるか」という議論。
注意:「鼻血の多発」は未確認
前提1:福島で鼻血が出たという美味しんぼ内で展開された主張(元双葉町長 井戸川氏によるもの)は、確かな裏付けがない。
簡単に言うと「福島県で鼻血の多発発生」は噂の域を出ていない。
前提2:さらに放射線との因果関係を示す科学的知見はない。(急性被曝症状での出血はありうる。しかし急性被曝症状の機序から見て、「鼻からだけ出血」という現象はありえない。)詳しくは次項のまとめ。
「急性被曝症状以外の鼻血」を否定する科学的知見
- 放射線科医PKAnzug氏の解説
- 放射性医薬品副作用事例の統計100万件で鼻血の報告はない
雁屋哲氏の致命的な間違いについて
牧野氏が独自の理論を展開:「β線熱傷による鼻血」
しかし医学系でも生物学系でもない東工大の牧野氏が独自理論を紹介したのがこの論争の発端。
「放射性物質の塊(ホットパーティクル?)が鼻から入り粘膜に6Svの被曝でβ線熱傷を起こす(ことも考えられる)」
多くの人が指摘する、牧野氏の主張の矛盾
牧野氏は「鼻だけβ線熱傷の可能性」を示唆しているが、「鼻にそれだけ被曝すれば、当然肺などにも影響を与えるはずなのに、鼻だけに限定されている矛盾」について合理的な説明が出来ていない。
simesaba0141氏「β線熱傷」についての反証1(前回)
「β線熱傷」に対してのsimesaba0141氏の反論
simesaba0141氏、今回の反証
気道に沈着した粒子がどう排出されるか、それを調べた良い論文を発見した。(env.go.jp/air/report/h20…)なお掲載元は環境省のホームページである。以下、遠藤先生の試算と併せてポイントを連ツイでご紹介。
2014-06-05 23:11:10@simesaba0141 ここの第4章が、いま取りざたされているホットパーティクル仮説に対する明確な否定を与えてくれる。ところで、まず本論に入る前に、基本的に上気道(鼻腔)に留まった粒子状物質は、その性状によらず17時間で半減期を迎えることを押さえておこう。
2014-06-05 23:11:34@simesaba0141 引用先はここ(mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9…)の7ページにある。つまり、粒子の可溶性、不溶性にかかわらず、17時間で半減と言うのはひとまず確定である。次に問題になるのは可溶性か否かだが、まず先に不溶性を見ておこう。
2014-06-05 23:11:53@simesaba0141 まず、前鼻道内の粒子は排出機構によって常に移動している。その部分を、同資料の18ページから引用しよう。「4.2.1.1. 上気道領域:不溶性の粒子が鼻腔の後方に沈着した場合は咽頭へ向かう粘膜線毛輸送により除去される。
2014-06-05 23:12:26@simesaba0141 一方、鼻腔の最前部の粘膜に沈着した場合は前方へ移動し、鼻汁と一緒にゆっくりとクリアランスされるが、通常「鼻をかむ」と効果的に除去される。」(改行位置等は引用者により変更した。)
2014-06-05 23:12:43@simesaba0141 この通り、生体の防御機能と言う観点から見ても、まず不溶性ホットパーティクルが前鼻道に固着すると言う仮説は明確に否定されている。では次に、可溶性の場合はどうだろう。
2014-06-05 23:13:05@simesaba0141 「可溶性の粒子の場合は粘膜に沈着した後に溶解し、拡散して血液中に入る。鼻腔は血管が豊富であり、この領域から速やかに血液中に取り込まれる。 」これを明確に述べた資料を探していたのだが、漸く発見することが出来た。
2014-06-05 23:13:30@simesaba0141 いわゆるチェルノブイリ・エイズの機序となったのが、これだ。可溶性放射性物質は、上鼻道、下気道、肺胞いずれの部位においても、その部位を被曝させたのち、速やかに血中に取り込まれる。取り込まれてしまえば血流に乗って全身を灌流することになる。
2014-06-05 23:13:55@simesaba0141 それはそれで問題だが、では鼻血の理由となり得るだろうか?確かに鼻粘膜は吸着から血液に移行するまでの短時間、被曝することは事実。そこで実際の吸引量が問題となって来る。
2014-06-05 23:14:12@simesaba0141 ここは遠藤先生のツイート(togetter.com/li/670885#c148…)にある、実効線量10-50mSv被曝で前気道部(ET1)最大550mSv説を採って計算してみよう。同じ資料(pic.twitter.com/7zLsgRpE5C)から計算してみる。
2014-06-05 23:15:02@simesaba0141 ここで1日あたりの実効線量係数(Sv/Bq)は、ET1で4.7×10マイナス9乗だから、550×10マイナス3乗をこれで割ってやると、およそ1.2×10の6乗ベクレルと言う数字が出てくる。つまり、1.2MBqの放射性ヨード(1μm径)の吸引摂取となる。
2014-06-05 23:16:18正:ET1で4.7×10マイナス7乗
@simesaba0141 1.2MBqと言うと、とんでもない大きな数字に見えるかもしれないが、ここが数字のマジックであり、引っかからないように注意しなければならない。どういうことかというと、ベクレル単位は最初から/秒という単位を含んでいる。
2014-06-05 23:16:37@simesaba0141 つまり、1.2メガ個の放射性物質を、1秒で吸い込まなければ、この計算は成立しない。そして、コレも大事なポイントだが、この数字はこれ以上増えようが無い。少しでも増えれば、ET1に550mSvという数字が崩れてしまう。
2014-06-05 23:17:08@simesaba0141 思い出して欲しい。一日は24時間、そして1時間は60分、さらに1分は60秒。つまり、一日に吸い込む量が1.2メガ個なら、1秒当たりに吸い込む量は14個、すなわち14ベクレルにまで減ってしまうのだ。これが数字のマジックである。
2014-06-05 23:17:28@simesaba0141 これじゃ少なすぎると思うなら、1日の屋外作業時間を8時間にして考えてもいい。それでも3倍の42ベクレルだ。それ以上短くしたらどうなる?今度は実際の行動パターンとの齟齬が生じることは想像できるだろう。1日最大1.2MBqと言う数字は動かしようが無いのだ。
2014-06-05 23:18:14@simesaba0141 今度は数字が大きく出る甲状腺等価線量で考えてみよう。仮に最大50mSvだとしたらどうなるか。面倒だから計算仮定は省くが同じパラメータを使うと一日あたり5.8MBqになる。約5倍だから、同じく24時間屋外に出っ放しとして70Bq、8時間作業で210Bq
2014-06-05 23:19:01@simesaba0141 先の計算ではET1の等価線量は550mSvだったから、これを5倍して同じく、1秒あたりの被曝量に換算すると31マイクロシーベルトと言う事になる。後はこれで鼻血が出ると思うかどうか?と言う話だ。
2014-06-05 23:19:19@simesaba0141 PKA先生がいつも言っている131I-MIGBの投与量は3.7GBqにも及ぶ。こっちは最初からベクレル、つまり秒単位だから、投与直後をピークとして、毎秒キッチリ(?)3.7GBq被曝することになる。
2014-06-05 23:19:49@simesaba0141 あまり意味のある数字とも思えないが、敢えて計算すると、210Bqは3.7GBqのおよそ1770万分の1と言う小さな値だ。「投与後三週間経ってもガンマカメラに鼻腔が真っ黒に写る」数字は明らかに210Bqより大きいと予想される。さて投与直後なら幾らになる?
2014-06-05 23:20:20@simesaba0141 整理しよう。不溶性物質と可溶性物質とでは、鼻粘膜上の動態が全く異なる。特に可溶性物質はいかなる機序においても、鼻血を引き起こすような局所被曝の原因とはなり得ない。仮に可溶性物質を鼻粘膜に滞留させようとするならば、MIGBなどの結合化学物質の助けが必要だ
2014-06-05 23:21:19@simesaba0141 問題は不溶性物質だが、まず押さえて置くべきポイントは、不溶性と言う事は体内には取り込まれず、ただそこで放射線を出すだけに留まると言う事。従って外照射と同じ条件で考えれば良い。
2014-06-05 23:21:33@simesaba0141 で、いろいろ論考しようと思ったら、既に放医研がキッチリとした考察を出していた。(nirs.go.jp/information/qa…)
2014-06-05 23:21:55