放射性粒子吸入で甲状腺に10mSvの被曝をした場合とI-131MIBGを5ギガベクレル投与した場合、前鼻道の等価線量が高くなるのはどちらか?

言葉のイメージに引きずられて定量的な評価を怠ると判断を誤ることになりそうです。そして今回の原発事故による鼻血の可能性は・・
24

放射性粒子吸入で甲状腺等価線量10mSvの被曝をした場合の前鼻道等価線量

スカルライド @skull_ride

(1)ICRPの前鼻道(ET1)被曝モデルでは、微粒子吸入による前鼻道の等価線量は甲状腺等価線量の4.6倍程度とされています。(排出半減期17時間) bit.ly/1tX674q

2014-06-09 12:36:33
スカルライド @skull_ride

(2)よって放射線粒子吸入で甲状腺等価線量10mSvの被曝をした場合、前鼻道の等価線量は46mSv程度となりそうです。

2014-06-09 12:36:46
スカルライド @skull_ride

(3)粒子径が大きくなったり不溶性粒子の割合が多くなると甲状腺等価線量の10倍程度まであるようですが、ここでは4.6倍を採用しておきます。

2014-06-09 12:36:56

I-131MIBGを5ギガベクレル投与した場合の前鼻道等価線量

スカルライド @skull_ride

(4)MIBG核種動態に関するこの資料によると、I-131MIBG投与による各臓器の吸収線量は肝臓で0.83mGy/MBq、唾液腺で0.23mGy/MBq、甲状腺で0.05mGy/MBqとなっています。 bit.ly/1u6XHJz

2014-06-09 12:37:08
スカルライド @skull_ride

(5)PKAさんご提示の画像では鼻腔付近(青矢印)の集積が肝臓(赤矢印)より遥かに少ないのは当然として、唾液腺(青矢印の周辺)より少なく、甲状腺(青矢印の少し下)より多いのが分かります。 twitpic.com/aeubu9

2014-06-09 12:37:21
拡大
スカルライド @skull_ride

(6)唾液腺の中で一番重いのは耳下腺(青矢印の両脇)で重量は片方20~30g。そして甲状腺は20g程度なので、鼻腔付近の集積部位のボリュームとそれほど変わらなそうです。 bit.ly/1uHYoJB

2014-06-09 12:37:34
スカルライド @skull_ride

(7)以上より鼻腔付近の吸収線量は0.1mGy/MBq程度と考えておけば大きな間違いはなさそうです。

2014-06-09 12:37:47
スカルライド @skull_ride

(8)ここで鼻腔付近の集積は一体どこに集まっているのか?という疑問が。もし鼻水なら鼻腔を全部塞いでいることになるし、短時間で排出されるので3週間もそこにとどまり続けることは出来ないでしょう。

2014-06-09 12:38:00
スカルライド @skull_ride

(9)そしてもし鼻粘膜のみなら薄い膜状の集積になり、ガンマカメラで正面から見た時にぼんやりしたリング状に見えるはず。そもそもガンマカメラで写るためにはある程度のボリュームが必要なのではないでしょうか。

2014-06-09 12:38:12
スカルライド @skull_ride

(10)よってMIBGは鼻粘膜と粘膜の下の組織にある程度のボリュームをもって集まっていると考えられます。それが3週間ほどかけてゆっくりと生体に吸収され尿として排出されると考えるのが合理的でしょう。もちろん一部は鼻水として排出されると考えられます。

2014-06-09 12:38:23
スカルライド @skull_ride

(11)鼻血論争を見ていて重要な点が見落とされているようなのでここで確認。鼻腔付近の集積はどう見ても前鼻道ではないでしょう?MIBGの集積は後鼻道(ICRP動態モデルET2の上部)のように見えます。 bit.ly/SGul7a

2014-06-09 12:38:36
スカルライド @skull_ride

(12)前鼻道と後鼻道は数cm程度離れています。後鼻道の粘膜下の組織からのβ線はほとんど前鼻道には届きません。γ線と一部鼻水として流れてくるβ線から被曝を受けるだけなので、前鼻道と後鼻道の被曝線量は桁で違うと考えられます。

2014-06-09 12:38:48
スカルライド @skull_ride

(13)前鼻道の被曝線量を後鼻道の1/10と仮定すると前鼻道等価線量は0.01mSv/MBq。5ギガベクレル投与なので5000倍して50mSv程度。前項と大きな違いはなさそうです。

2014-06-09 12:38:58
スカルライド @skull_ride

(14)前鼻道は体内というよりむしろ体外であるというイメージを持たないと理解するのは難しいかも知れません。

2014-06-09 12:39:10

前鼻道キーゼルバッハ部位にある血管頂部の被曝線量について

スカルライド @skull_ride

(15)前鼻道等価線量50mSv程度では通常鼻血は出ないでしょう。しかし鼻血が出るか出ないかを評価するにはさらにミクロな視点で、キーゼルバッハ部位の血管の頂部がどれくらいの被曝を受けるかを考える必要があります。 pic.twitter.com/yYbstyoDoD

2014-06-09 12:41:53
拡大
スカルライド @skull_ride

(16)β線で100ベクレルの粒子が血管に1日付着したときに、そこから半径1mmの半球(鼻腔側が割面)の等価線量がどれくらいになるのかを推計してみます。鼻腔の対側面からのβ線は簡略化するためにあえて無視します。

2014-06-09 12:39:34
スカルライド @skull_ride

(17)球の体積は4/3×πr^3なので、半径1mmの半球の体積は1.33×3.14×1/2≒2.1m^3。密度を1とすると半径1mmの半球の重さはおよそ2.1mg。

2014-06-09 12:39:47
スカルライド @skull_ride

(18)鼻腔側にエネルギーの半分は逃げ、β線の届く範囲を2mmとするとこの粒子のエネルギーのさらに半分はさきほどの半球より深部に逃げることになります。

2014-06-09 12:40:01
スカルライド @skull_ride

(19)よって粒子直下の半径1mm半球状の血管壁の等価線量はβ線エネルギーを0.3MeVとすると(100×1/2×1/2×24×60×60×0.3MeV)/2.1mg=(648000×1.6E-13J)/2.1E-6kg=0.049Sv=49mSv。

2014-06-09 12:40:17
スカルライド @skull_ride

(20)これだけではキーゼルバッハ部位の血管は破綻しないでしょう。しかし運悪くこの粒子がこの半球割面に40個集まれば等価線量は約2Svとなり、細い血管を破綻させられます。あるいは運悪くこの粒子10個が4日間半球割面にとどまっても同じです。

2014-06-09 12:40:28
スカルライド @skull_ride

(21)人間は1分間に20回呼吸しますから1日の呼吸回数は28800回。キーゼルバッハ部位の血管上のピンポイントに大き目の放射性粒子が偶然複数付着することは状況によって十分起こり得るのではないでしょうか?

2014-06-09 12:40:39
スカルライド @skull_ride

(22)このように局所被曝のメカニズムから定量的に考えると、今回の原発事故で多くの人は鼻血を出さないことが分かりますし、逆に一部の人に放射線起因の鼻血が起こっても何ら不思議ではないことも理解できます。

2014-06-09 12:40:51