ヤフー組織再編裁判には4つの法人が登場します。まず、①ソフトバンク。持株会社。登場する会社全ての連結の頂点。②ヤフー。ソフトバンクが株式の41%を保有。③IDCS社。データーセンター運営、ソフトバンクの100%子会社。④IDCF社。IDCS社から新設分割で切り出しされた法人。
2014-06-09 19:56:23会社名が紛らわしいので、必ず①②③④の番号を振ることにします。③IDCS社は、平成17年に①ソフトバンクが英国の会社から取得して連結子会社化したもの。21年3月末時点で約542億円の繰越欠損金を抱えていた
2014-06-09 19:58:364社の事業目的うんぬんに関しましては、予断を与えることになる可能性もあるので、断定的なことは言いません。ただ事実関係として、①ソフトバンクは社債の償還のため現金調達の必要があったこと。③IDCS社の繰越欠損金は21年3月末に一部期限切れして失効しそうだった
2014-06-09 20:01:55(イ)H20.12.26 ②ヤフー社長X氏が③IDCS社の副社長を兼任します。これは税法上の「特定役員」となり、適格再編として③IDCS社の繰越欠損金を②ヤフーが引き継ぐための要件を満たすことになります
2014-06-09 20:05:59(ロ)H21.2.2 ③IDCS社は、データセンター事業を切り出し、④IDCF社を新設分割します。④IDCF社は③IDCS社の100%子会社になりますので、税法上は適格分割として簿価引継となるはずだったのですが・・
2014-06-09 20:09:10この(ロ)の取引時点で②ヤフーが③IDCS社の株式を取得することが予定されているので、これを非適格分割として処理し、資産負債の時価評価を行って資産調整勘定を計上します
2014-06-09 20:10:57(ハ)H21.2.20 ③IDCS社は、④IDCF社の株式を②ヤフーへ売却します。この時点で④IDCF社は②ヤフーの100%子会社になるわけです
2014-06-09 20:12:32(二)H21.2.24 ①ソフトバンクは保有する③IDCS社の全株式を450億円で②ヤフーへ売却します。ここで③IDCS社は②ヤフーの100%子会社になります。税法上、②ヤフーと③IDCS社は「特定資本関係」となります
2014-06-09 20:14:50これら(イ)~(ホ)の一連の組織再編により、①ソフトバンクは450億円のキャッシュを手に入れ、②ヤフーは繰越欠損金542億円を引き継いで同年の課税所得と相殺し、法人税を節減、④IDCF社は非適格分割で計上した資産調整勘定を償却して5分の1の20億円(ただし月割)を損金算入します
2014-06-09 20:19:02この組織再編に対し、国税当局は②ヤフーの繰越欠損金引継と、④IDCF社の資産調整勘定計上と損金算入を法人税法132条の2を適用し、「不当に法人税を減少させる行為又は計算」だとして否認、更正処分を行います
2014-06-09 20:22:45国税側の指摘は、X氏の副社長兼任は組織再編の法定要件を満たすために行った形式的なものだったというものです。②ヤフーはこれを不服として裁判を起こす(④IDCF社については別の事件(裁判)となりますので今日は説明しません)
2014-06-09 20:25:06国税側が納税者の処理(計算)を否認するためには、法律の根拠が必要なわけですが、多様な手段が想定される組織再編については法132条の2で「不当に法人税を減少させる行為又は計算」を否認できるとする包括否認規定が定められている
2014-06-09 20:38:23ここで問題になるのは、何をもって「不当」とするのか、法律(法人税法)の条文そのものには書いていない(個別否認規定ならこれをやったら損金にできないと明記されているが、包括否認規定なので「不当」としか書いていない
2014-06-09 20:41:03