アンダー・ザ・ブラック・サン #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆(私はドラゴン・ドージョーを再興したいのです)ドラゴン・ニンジャは……ドラゴン・ユカノは、目の前のニンジャスレイヤーに……フジキド・ケンジに、その思いを伝えた。(記憶もほころび、本来のカラテも失われて久しい私ですが、私はその為に生きたいのです)彼女の頬を涙が伝った。◆

2014-06-12 19:26:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆(ナラク・ニンジャを内に宿しながら、その憎悪と邪悪に呑まれる事のなかった貴方の魂に、ドラゴン・ゲンドーソーは未来を見たのです。……彼の確信のもととなった教えを、開祖たる私自身が蘇らせられぬ体たらく。笑ってください)泣きながら、彼女は笑った。(でも、私もそう思います。フジキド)◆

2014-06-12 19:27:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【アンダー・ザ・ブラック・サン】#2

2014-06-12 19:28:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドラゴン・ドージョーをささやかながらも再興し、未来にドラゴン・ニンジャ・クランのインストラクションを遺すこと。受難、記憶の破壊、克服、放浪を経た彼女が見出した、彼女自身の生きる目的であった。(ナラク・ニンジャに呑まれることのなかった貴方のありようを通して、私はそう考えました) 1

2014-06-12 19:40:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(私はニンジャを殺すものだ)フジキドは言った。ユカノは彼の目をまっすぐ見た。そして静かに問うた。(では私を殺しますか?全てのニンジャを殺しますか)やや長い間を置いた。フジキドはかぶりを振った。ユカノは頷いた。(物事はそう短絡できるものでもありません。あなたも重々わかっている事)2

2014-06-12 19:49:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(復讐は成った。そして私は)(あらためて、迷うようになった?考えねばならぬように?)ユカノは瞬きせずフジキドを見つめた。(灰色の在りようが、あなた自身を苦しめてもいる。明快でない思考の拠り所が。ですが、それはそういうものだと……生き続ける限り逃れられぬ問いだと、私は思います)3

2014-06-12 19:56:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは目を伏せ、無言でチャを飲んだ。(その懊悩を大切になさい)ユカノは言った。(ナラクに呑まれることのなかった貴方ならばこそ、その揺らぎをそうして抱える事ができる。今はそれでよい。そのまま在ればよい)(ユカノ)フジキドがユカノを見た。ユカノは微笑んだ。(すっきりしました) 4

2014-06-12 20:16:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チャを交わした二人は、ドージョー全体を念入りに清め、ミソギをした。東西南北に立てられたボンボリの火の間で、ドラゴン・ニンジャはマイを舞った。幾つかのチャドー伝授が行われた。静かな数日だった。二人はその後、キョートの空港で別れた。ユカノは再び海の外へ。フジキドはネオサイタマへ。 5

2014-06-12 20:28:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユカノはフジキドを誘わなかった。ドージョー復興は彼女自身の成すべきことであり、フジキドにはフジキドの人生が、生きる道がある。彼女はそのように考えていた。巡り巡ってフジキドがドージョーに戻るのならば、それもよし。だがそれは無数にある彼自身の選択肢のひとつに過ぎない。 6

2014-06-12 20:30:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドラゴン・ドージョー発祥の地を見出したユカノが再び旅の空に戻ったのは、この折にドージョー内で見出したある品に、ある懸念に基づく。今もユカノは懐にその品を持っている。黒い釘を。何の装飾もない、大ぶりの、黒鉄の釘は、月明かりの下で、何らかのルーンカタカナをあらわす。 7

2014-06-12 20:46:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユカノは過去にこの釘を作成した記憶を持たなかった。長い年月のなかで失われた記憶だろうか。否。彼女の内なる本質がそう告げていた。この釘はドラゴン・ニンジャ・クランに由来せぬ超自然力によって作られ、外部から持ち込まれたものだ。 8

2014-06-12 20:52:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女は世界を旅した。再び大英博物館を訪れ、ガラスケージのなかで変わり果てたゴダ・ニンジャのミイラにアイサツした。そこに紐付く盗掘ブローカーを辿り、チベット、オーストリア、ブルガリア、アステカ、シエラレオネ。ドージョーにあったものと同様の釘を、彼女は幾つかの箇所で発見した。9

2014-06-12 20:57:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

テクノロジー・ケオスの坩堝と化した鎖国日本と比較すれば、世界はドラゴン・ニンジャにとって退屈ですらあった。それでも時には危険な目にも遭った。彼女は彼女自身のカラテでそれを切り抜けた。幾つかの出会い。狂ったフランス人や狐の頭部を持つ男。旅を経て、彼女の懸念は答えに近づいていた。10

2014-06-12 21:12:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

帰国した彼女はフジキドの協力者であるナンシー・リーと接触を持った。電子コトダマ空間の知識が必要だった。ドサンコ・ウェイストランドにおいてアンテナが指し示していた物は何だったのか?そしてエーリアス。彼女は黒い渦をキョート上空に見るという。情報の断片は不吉な答えを示唆していた。11

2014-06-12 21:29:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

即ち、キョート城!ロード・オブ・ザイバツとともに滅び、消滅罪罰罪罰罪罰とともに滅び、消罪罰罪罰罪罰罪罰もに滅び罪罰罪罰罪罰罪罰ート城はいまだアノヨの狭間にあり、主なきままに罪罰罪罰罪罰きままに存在し続けているのではな罪罰罪罰罪罰ではないか? 12

2014-06-12 21:35:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女自身が造らせた超自然の砦が、アノヨの狭間において、いまだ主なきままに放置されているとすれば?真実を確かめねば。場合によっては何らかの手を打たねばならない。彼女自身の責任において……!「だれ?」ユカノは振り向いた。ディプロマットは少し狼狽えた。「いや、俺、私はただ、夜風に」13

2014-06-12 21:44:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユカノはキョート・ヘレニズムを真似たテラスにいる己を見出した。手元のテーブルにはユズ水のグラスがある。氷が溶け、ガラス表面は汗をかいている。しばしの湯冷ましのつもりが、すっかり物思いに沈んでしまった。「ごめんなさいね」ユカノは浴衣をかき合わせた。ディプロマットが目を逸らす。14

2014-06-12 21:55:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「邪魔をしたようなので」ディプロマットは屋内へ戻ろうとしたが、ユカノは留めた。「いいえ。共用のスペースですよ。私が長居してしまって」風が吹き、ユカノの長い髪が揺れた。空には星と月。満月である。「もうこんな時間」ユカノは星々を見上げ呟いた。「判るのですか?」「ええ。星の角度で」15

2014-06-12 22:04:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「角度ですか」ディプロマットは目を細める。ユカノは頷いた。「22時22分です」「ああ」ディプロマットは携帯端末の時間表示を確認し、息を呑んだ。「これもニンジャのみわざですか」「我らは野山を駆け回り、星明かりの下でハイクを詠んだものです」ユカノは言った。「これで信じますか?」16

2014-06-12 22:15:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「信じていますとも」ディプロマットは言った。「あれほどのイクサがあったのですから」「そうね」ユカノはユズ水を飲んだ。「遠い昔のようです。みな、遠い昔のように思えてしまう。でも、キョート城がいまだ在るのだとすれば……いけませんね、ドージョーに至るのはまだ先です。憩いましょう」 17

2014-06-12 22:21:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「エーリアス=サンは?」「エーリアス=サンですか?」ユカノは訊き返した。「部屋の中の……ベランダの個別オンセンです。大浴場は嫌なんですって。奥ゆかしいのね。あなたの弟は?」「どうして訊くんですか」ディプロマットは棘のある答え方になってしまった事に自ら狼狽した。「その……」 18

2014-06-12 22:31:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「今日は少し様子が違いますね、あなたたち」ユカノは言った。ディプロマットは首を振った。「問題ありません。どうだっていいじゃないですか……必ず、しっかりと送り届けますよ、貴方を」「どうだっていいだと?」第三の声。ユカノとディプロマットはテラスの入り口を見やった。アンバサダーだ。19

2014-06-12 22:37:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何をしようとしてるンだ、お前!」アンバサダーはディプロマットに指を突きつけた。「お前だと」ディプロマットは叫び返す。「シツレイな!」「シツレイ?一分一秒でも先に生まれれば偉いッてやつか?お前の大好きなネンコかよ」「な……」ディプロマットはアンバサダーの物言いに鼻白んだ。20

2014-06-12 22:45:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ユカノ=サン、離れてください、その色ボケ野郎から。危険だ」アンバサダーはユカノに向かって言った。「隙を見て貴方の腰に手を回してきますよ!」「お前、素面で言っているのか?ふざけるなよ」ディプロマットが前に出た。「色ボケ野郎はどっちだ?盛りのついた犬めいて、気を引こうと!」21

2014-06-12 22:52:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「犬だと?なら貴様も犬だ!双子だからな。忌々しい!」アンバサダーはディプロマットの肩を押した。ディプロマットは押し返した。「フザケルナ!」「貴方達、」「おい兄さん、ナミダ=サンはどうしたんだよ。ユカノ=サン!こいつにはね、甲斐甲斐しく世話を焼く女がいるんだ。それを、なんだ?」22

2014-06-12 22:59:14