地獄鎮守府の日常 #32~36

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白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

薄暗い明りの中、目が覚める。視界がぼやけ、意識が朦朧とする。「あ、起きた?」明るい、快活な声、陽炎の声だ。思い出す、昼間猛烈な眠気があったから、叢雲に提督の業務を代わりに委託して休んでいたのだと。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 16:48:13
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

代行、と言っても出撃や遠征の許可を与えた訳ではない。単純な補給や入渠の許可と、施設内のトラブル対処を任せただけだ。後者に至っては彼女に日ごろから委任してる所ではあるのだが。「ねぇ、大丈夫?」そう言いながら陽炎はベッドの上に上がり、私に跨り、私の頬を撫でる。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 16:56:25
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

彼女の顔が近くに感じる、笑顔を浮かべながら、アメジストのような綺麗な瞳が、私の眼を覗き込む。「……少し、喉が渇いた」と言うと、陽炎はハッとした顔で「あ、ごめん、今持ってくるね!?」とベッドから出てダイニングに向かって行った。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 16:58:34
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

ベッドから起き上がり、腰掛けると陽炎が私と彼女の分の、合計二人分の麦茶を持ってくる。「はい、どうぞ」と言いながら彼女は麦茶を差し出す。それを飲むと、冷えた感覚が喉を潤す。「少し暑い日には、こういうのがいいな」と言うと「うん、そうね」と私の隣で相槌を打つ。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 17:02:17
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「テレビ見る?」と陽炎。「今見てもニュース程度しか見るものはないさ」と返すと、彼女が体に寄り添ってくるのがわかる。悪い気分ではない、彼女は愛情を伝える行動を、多く取る。私もグラスをサイドテーブルに置き、彼女のグラスも起き、肩を掴み、押し倒す。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 17:23:14
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「あっ……」と、陽炎は声を漏らし、彼女の鼻梁に口づけをする。顔を近づけられ、唇を離すと目を瞑ってた彼女が可愛らしく、唇にもキスをして、舌を流し込む。ゆっくりと流し込んだ舌に、陽炎も対応するように舌を絡ませる。少し、麦茶の風味を感じた。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 17:27:55
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

キスを終えると押し倒した彼女の隣で横になり、彼女の腕を掴み、その前腕部から、手の甲までの部分をそっと撫でる。「まだ、眠ってたいけど、駄目かな」「まだ眠いの?うん……別にいいけど、一緒に寝てていいかしら?」少し悩んだ素振りのあと、彼女は答える。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 17:31:18
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

彼女からすれば、私と一緒に居る時間が少しでも欲しいのだろう。だが、私も仕事は仕事だ、こうしてサボりすぎるのも、気分が悪い。「ありがとう、その言葉だけでも貰えてうれしいよ」と彼女に言うと「言っちゃうの?」と彼女は私の手を握りながら、返す。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 17:33:02
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「うん。一緒に行こうか」と私は答える、彼女も、私と一緒に居る時間が多いのは嫌いではない。「うん、そうね……でも、ちょっとお願い、いい?」と、私に頼み込む仕草を、彼女は行う。何を頼むのだろうか。そう考えていると、彼女から次の言葉が放たれる。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 17:37:22
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「ちょっと、手を繋ぎながら行きたいけど、駄目?」陽炎の顔を見ようとすると、恥ずかしさに顔を逸らしてる。彼女は二人っきりでない限り、ここまで過剰にべたつかず、私の世話係の一人のようなポジションで傍に居る。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 17:39:34
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

そんな彼女からしたら区画内で手を繋ぎながら歩くと言うのは、ちょっとした冒険なのだろう。「構わないよ」と私は言うと「うん、ありがと……」と、顔を背けているものの、陽炎は手をぎゅっと握りながら、私に相槌を打った。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-03 17:40:56

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白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

鎮守府メンテナンス中の鎮守府、大人しくラウンジで不知火と叢雲と同じソファーに座りながらTVでも見る。見てる内容は刑事ドラマ、当たり障りのない、くだらない理由の殺人事件を調査する話だ。香港なら官憲も見て見ぬフリする程度の些細な事件だが本土では違うらしい。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:28:04
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「つまらないですね」そう隣でポップコーンを摘みながら不知火が言うと「そうね」と叢雲が相槌を打つ。「じゃあ、チャンネル返るかい?」と、私がリモコンを手に取り、チャンネルを変えるがしょうもないニュースかわけのわからない僻地の観光番組ぐらいしかやってない。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:29:58
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「どれもろくでもないな」と、私は結局刑事ドラマのチャンネルに戻す。役者の顔をよく見ると解体された艦娘が役者に混じっていると感じる。主演の女刑事に至っては髪型こそ違うが、愛宕だろう。別に解体された艦娘が役者として浪費されるのも、珍しくはない。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:33:50
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

役者となれた彼女達は別の名を持ち、第二の人生を歩む。現実に存在する輝かしい日々だが、そうなれなかった少女達が露人として困窮し餓死して行くのも、現実だ。「はぁ……」と、叢雲は溜息をつき、鞄から小型のコンピュータを取り出し、電源を付ける。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:36:11
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

緑色のディスプレイにごちゃごちゃの文字とも形容できない何かが投影され、すぐに叢雲は電源を切り、カートリッジを取り出しその端子部に息を吹きかけ、カートリッジを再度コンピュータに接続させ、電源を入れる。『Nintendo』と描かれた文字が、モニターに落ちていく。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:39:52
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

そしてモニターからゲームが始まる。TVゲーム、一人で遊ぶ電子遊戯だ。「何のゲームですか?」と不知火が訊くと「テトリスよ」と叢雲は返す。そしてロシアの王朝風の画面から切り替わりテトリスが開始される。ルールはどうにもブロックを横一列に並べて消し続ける事のようだ。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:42:04
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

私と不知火はその画面を覗き込んでると「後で貸してあげるわよ」と叢雲は言う。「いいのかい?」と私が言うと「私のものは貴方のものだけどね」と叢雲は言う。「徴収はせんよ、高かっただろう?」と私は微笑むと「フフッ、ジャンクの再生品だからタダ同然よ?」と微笑み返した。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:45:06
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

そうして叢雲が飽きたのか、ゲームオーバーになる前に電源を切って渡される。私は挑戦してみたものの、すぐにブロックが穴だらけになってゲームオーバーになり、何回かチャレンジしたものの、叢雲のように上手くいかないなと考え、電源を切り不知火に渡す。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:48:36
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

不知火は大変だった、単純な操作法だがイマイチ要領がつかめず何度もおかしなことになってゲームオーバーが多発、そして何とか要領がつかめるようになっても、どん詰まりになるとパニックになり、そしてゲームオーバーの画面になった時電源を消し、私の方に涙目を向けた。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:51:06
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「司令、不知火に何か落ち度でもありましたか?」と、涙ぐんだ眼で不知火が見つめる、そっと私は近くにあったティッシュで、彼女の眼を拭いて。「別にゲームぐらいで泣き出さなくてもいいんだ」と、抱き締める。すると後ろから、叢雲も私に抱き着いて来た。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:52:47
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「……たまにはちょっと、こういうことしたい時もあるのよ」と、叢雲が言う。彼女は割と甘えん坊な所がある、何かを隠しているが、同時に私に非常に依存しており、だからこそ、害意が無いと私は考える。ただ、前に不知火後ろに叢雲、互いに小柄だが密着するのは少し暑苦しい。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:54:30
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

そして他の艦娘が居るラウンジだ。「皆が見てる」と私が言うと、叢雲ははっとなったのか手を放し、私も不知火を抱きしめた手を緩める。「……ごめん」と叢雲が恥ずかしげに、顔を向けないまま言い捨て「構わないさ」と私は返し「しかし、この機械は何だろうな」と話題を逸らす。 #地獄鎮守府の日常

2014-06-06 14:58:53
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