アンダー・ザ・ブラック・サン ＃６

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

（親愛なる読者のみなさん：本日の更新は磁気嵐濃度によってもしかすると更新ペースが不安定になる可能性がありますが、「46億年のタイムスパンに比較すれば、なんと些細なことだろう」……彼はそう言って、我々を勇気付けてくれたのです。ご安心ください）

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【アンダー・ザ・ブラック・サン】#6

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（これまでのあらすじ：ユカノとエーリアスは、ポータル・ジツを操る双子のニンジャ、アンバサダーとディプロマットを伴い、岡山県を訪れた。目的地は山奥のドラゴン・ドージョー始まりの地だ。）

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（前回の訪問時、神聖なドージョーには、正体不明の侵入者の痕跡が残されていた。ユカノはこれを憂い、世界を回って情報を集めた。ドラゴン・ドージョーには超自然の領域に繋がるリンケージが築かれている……彼女の懸念は的中した。再びドージョーを訪れた彼女は、敷地内を占拠するテント群を発見！）

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（ナムサン……それはドラゴン・ドージョーの奥にある地下神殿、ドラゴン・シュラインを荒らす侵入者の前哨基地に他ならない！今や懸念ははっきりと形をもってユカノを打ち据える。キョート城はアノヨの狭間に依然として存在し、ザイバツの残党がなんらかの不穏な陰謀をめぐらせているのだ！）

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（キョート城の超自然機構をさだめたドラゴン・ニンジャの責任を果たさねばならない。ユカノはそのように考えていた。そして、不本意なかたちで借りている肉体を持ち主に返し、己の肉体を取り戻す為に、エーリアスもまた、事の発端となったキョート城に出向く必要を感じていた）

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（ベオウルフ率いるザイバツ・ニンジャの集団とユカノ達の激しい戦いが、ドラゴン・ドージョーで繰り広げられた。乱戦のさなか、キョート城へ繋がるポータルが開かれる。ユカノとエーリアスは覚悟を決め、飛び込んだのだ……！）

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「「今だ！」」双子が言った。エーリアスは二重のポータルに向かって身を乗り出した。当然、初めての行いだったが、滞りはなかった。他者の精神に潜り込むユメミル・ジツの手順と似ていた。イクサの光景が視界から弾け飛んだ。彼は冷たい砂を踏んだ。ドージョーの白砂ではない。浜辺の砂だった。 1

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彼は振り返った。浜辺には焚き火があった。その傍らに、赤い髪の女が立つ。お互いを見る。「とっとと行きな」イグナイトは不機嫌そうに呟く。「ああ」シルバーキーは頷いた。「本当に、すまなかった」「バァカ！」イグナイトが砂を蹴った。シルバーキーは手を振った。「絶対また会おう。現実でだ」 2

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「その前に、てめェの心配しろッての」イグナイトは言った。「行き当たりばったりにも程があンだよ」「そう言うなって」シルバーキーは笑った。そして念を押した。「約束だぞ」「わかったから、行けよ！」「オタッシャデ！」シルバーキーは走り出し、浜辺に開いた二重のポータルに飛び込んだ。 3

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0100101000100010001……01000100100010……010001001000101ーモ0100010010010001ンクィジター010100100010イ0010100010001クィジタ010010010001ジター0101101ンクィジター010 （4

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「グワーッ！」シルバーキーは冷たい感覚に呻いた。背中を冷たく長い否定的情報の爪が掠めたのだ。無限に重なり合う0と1のガスめいたノイズで作られたトンネルを飛びながら、シルバーキーは追い来る凶悪な笑いを引き離そうとする。前方に急カーブ。シルバーキーは論理の歯を食いしばり、舵を切る。5

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ZANKZANKZANKZANKZANK……トンネルの壁から無数の人型が隆起し、シルバーキーをあざ笑うようにオジギを繰り出す。「ドーモーモーモーモーモ、インクィジターターターターター010111ター01010111」「イヤーッ！」シルバーキーは稲妻めいたトリッキーな軌道を描く！6

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「オイッ！もうちょっと遊ぶか？」シルバーキーは飛びながら後方を見、追いくる発狂存在を挑発した。人間型のノイズ塊一つ一つが長い手の形を取り、震えながら殺到する。まるでステュクスだ。だがシルバーキーには多少余裕がある。後からユカノが飛んでくる筈。先にこいつらを引きつけてやろう。7

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やや後方、強い赤の光が視認できる。来た。ユカノだ。「インクィジターターターターターターターターターター010101110111」「イヤーッ！」シルバーキーはトンネルに車体を擦り付けるボブスレー選手めいて、ノイズ火花を放ちながら加速した。伸び来る手が絡まり合い、牙を剥いた。 8

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ユカノがシルバーキーとインクィジターの横を高速で行き過ぎる。(((うまく行ってるぞ)))シルバーキーは論理汗を拭った。インクィジター。押し寄せる。前からも……横からも。(((でも、こいつらの事、いつまで相手すりゃいいのかな……)))「ドーモーモーモーモーモー010101」9

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(((ヤバイか？)))シルバーキーの脇腹を冷たい感覚が掠め、多少、抉り取っていった。「ヤバイ……グワーッ！」カーブを避けそこね、シルバーキーはバウンドした。01ノイズに拡散する己の論理肉体をあわてて再構成しようとした。「ドーモーモーモーモー」インクィジターが集まる……！ 10

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「アブナイ！」その手を掴んだのは、赤く光る論理肉体！ユカノだ！「共に！」「す……すまねえ！」シルバーキーは握り返した。結びついた二者は二重螺旋を描きながら急加速！ZANKZANKZANK……後方ではインクィジターがノイズの壁に衝突し、飛沫を上げる……！「「イヤーッ！」」11

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010111101……「グワーッ！？」シルバーキーの論理肉体に、キラキラする否応ない物体がまとわりついた。網だ。それが彼を船上に引きずり上げた。「イヤーッ！」「グワーッ！」「ンアーッ！」そして、ユカノも！「大漁！大漁！」濡れ鼠めいた二人を、船上の男は笑ってみせた。 12

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「ヒヒヒ！これはこれは、セクシーな美女！人魚かね？……あと、男」「ちょっと待ってくれ、どういう……アンタは何だ」「ドーモ。カロン・ニンジャです」男はアイサツした。ニンジャ装束を着、ニンジャ頭巾の上から海賊帽を被っていた。網の中で二人は震えながら沈黙。「すまん、カロンは嘘だ」 13

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「カロンでも何でもいいよ。何だいアンタは」シルバーキーは網と苦闘しながら、船の周囲を見渡す。暗い水だ。不穏だ。頭上には黄金の立方体が冷たく自転する。「網が……」ユカノが呻いた。「これはしたり」海賊帽のニンジャは己の頭をピシャリと叩いた。そして器用に網を外した。14

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「俺にはたくさんの名前があるが、特に気に入っているのは、コルセアだ」彼は自分の海賊帽を指差した。そしてオジギした。「ドーモ」「ドーモ。シルバーキーです」「銀の鍵！成る程！」「ドーモ。ドラゴン・ニンジャです」「うむ、哀しい、絡まり合った女！今の名は？」「ユカノ」「成る程！」 15

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「アンタ、ここで何してんだ？ここは……ほら、ここ、現実じゃなくて……」シルバーキーは立方体を指さした。コルセアは眉根を寄せた。「現実だと？ここも現実だろ。まあ、言わんとする事はわかる。俺は、そうさな、航海よ。概ね死んだものしかない世界。さみしがりやの男よ」「そうなんだ……」16

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「しかしな、インクィジターで度胸試しかね？お前たち。度胸と蛮勇を一緒にして、全く……そういうデートは、よしたがいい」「あれは何です」ユカノが尋ねた。「奴はな……」コルセアは目を細め、キセルを取り出して火をつけた。「哀れなバケモノよ。かつては真っ当なニンジャだったのさ」17