座礁艦隊その38 ~真相~

@ryorinovels 氏の座礁艦隊まとめです
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RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「ええっとぉ…」 明石はスクリーンの隣に立って、前方に並んでいる私たちを見渡し、戸惑いの表情を浮かべて頬を掻いた。 「どう説明したら良いです? 順番に? 結論から?」 彼女はこの小隊のために建造された、初の小隊所属の艦娘だ。購買勤務経験すらないのだ。無理からない。 #座礁艦隊

2014-07-25 08:48:00
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「結論から話して、理由を付け加えるのがいいかな」 オッサンが助け舟を出すと、明石は途端にホッとした風になって、それからキリッと力を宿した。 「では、始めますね。まず、今回の検視で分かったことは一つ有ります。あの艦娘たちがどのようにして作られたか、です」 #座礁艦隊

2014-07-25 09:44:31
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

明石は慎重に言葉を選んでいるように見えた。建造されたでも改造されたでもなく、作られた、という曖昧な表現。明石はもう一度私たちに目を配る。勿体ぶっているのではない。その後に続く言葉をひどく恐れているようだった。続けて、とオッサンが促す。 「…あの艦娘たちは、轟沈艦です」 #座礁艦隊

2014-07-25 10:45:46
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

隊長室が一瞬ざわついた。空気が張り詰める。轟沈艦? 沈んだ艦娘ということ? 「正確に言うと、轟沈した艦娘をサルベージし、修復を加えたものです」 「オウ、いったいそりゃどうゆうことだ? 何で沈んだヤツって分かんの?」長波が手を高く上げて質問する。 #座礁艦隊

2014-07-25 10:53:04
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「ええっと、順を追って説明しますね」明石はプロジェクターを起動。パワーポイントで作られた簡単な画面が現れる。手に持ったリモコンを操作し、画面を送る。 「まず、三隻の艦娘はいずれも生命機関を損傷、ないし破損しており、火が消えていました。今回の戦闘のはるか前からです」 #座礁艦隊

2014-07-25 10:58:49
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

はるか前って、どのくらい? 「ここの限られた設備で出来る限りの年代測定で、おおよそですが、それぞれ50年前、20年前、15年前です」 予想外の時期が出た。ずいぶん前なのね。範囲も広い。 「私も驚きました。轟沈したと特定できたのは、一隻の胸腔部からこれが出たからです」 #座礁艦隊

2014-07-25 11:53:30
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

明石は持ち込んだ箱から透明な小ケースを一つ取り出した。白い緩衝シートに載せられた、鈍い青黒色の破片。これってまさか。 「深海棲艦の砲弾片だな」 猪口敏江が即答する。 「戦闘による轟沈と断定できるわけだ」 「はい。これが無ければ別の原因も考えられましたから」 #座礁艦隊

2014-07-25 12:00:41
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「別の原因って…」 「あまり気分の良い話じゃあないぞ、朧よ。演習中の事故はまだ可愛い方で、いざこざからの私闘、処罰的本解体と称した私的極刑…。外務情報局とはいえ、憲兵隊とも連携することが多くてな。その手の話には事欠かん」 #座礁艦隊

2014-07-25 12:21:51
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

猪口敏江は天井を仰ぎ見ながらフンと鼻を鳴らした。やっぱりそういう事件や鎮守府は、どこかにはあるのか。 「すまんな。続けてくれ」 「あ、はい。生命機関が欠けているのになぜ動いていたかですが、やはり戦闘機関にバイパスしていました」 スクリーンに簡単な図解が映る。 #座礁艦隊

2014-07-25 12:30:40
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

そうか、夕立犬は「ぽいっ!ぽいっ!」と鳴くのか(今更)

2014-07-25 13:14:09
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

※迫真の演技の強制前後プレイを行ったためケンペイ天狗にエントリーされる提督と艦娘

2014-07-25 16:23:51
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

提督「『もう中やだ』ってところが迫真すぎたからな…おれも罪悪感湧いたし」 暁「そ、そういうわけで、ただのプレイだったの…ケンペイさんごめんなさいっ!」

2014-07-25 16:29:21
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

特型駆逐艦の背部艤装、その内部にある戦闘機関を、生命機関の代用としている。だから艤装を撃ち抜いただけで停止したのだ。ただ、これだと自我は持たないはずよね。 「ええ、生命機関と戦闘機関の構造は殆ど同じですが、私たちの自我が宿るのは生命機関だけです。理由は不明ですが」 #座礁艦隊

2014-07-25 22:37:41
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

妖精さんのオーバーテクノロジー。その最たるものが私たち艦娘だ。で、艦娘の核となるものが生命機関。私たちがなぜ私たちでいるのか、自我がなぜただの機関に芽生えているのか。戦闘機関は構造的にほぼ同じながら、それをバイパスして代用しても、言うことを聞くロボットにしかならない。 #座礁艦隊

2014-07-25 22:43:15
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

あるフィクションの言葉を借りるなら、「ゴースト」が有るか無いかになる。戦闘機関で動くこの敵艦娘は、ゴーストの無いお人形といったところだ。 「あのキモい外皮は何なんですかあ? やっぱり個体を特定させないため?」 巻雲が手を上げる。 #座礁艦隊

2014-07-25 22:50:00
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「というよりは、ただのカバーです。元々の外皮は長く海水に晒されて、堆積物等で無惨な状態でした。臭いの原因もそれです。外皮が無くても動かないことは無いんですが…、ゾンビと一緒に戦いたくは無いですよね」 なるほど。納得した。 #座礁艦隊

2014-07-25 22:53:53
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

それで、肝心の出処は? それぞれどこで上がった艦なの。 「それは、残念ながらここの設備では…。一応カバー下の、本来の外皮に残留していた堆積物や微生物は保管してあります。もっと専門的なところで見てもらえれば、場所くらいは分かるかと」 じゃあ艦娘の個体も? 「未特定です」 #座礁艦隊

2014-07-26 01:00:39
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「個体番号は。各臓器にインプリンティングされている」 猪口敏江から容赦の無い突っ込み。 「妖精さんの技術であるならここでも解析できるはずだぜ」 「もちろん見ました。綺麗さっぱり消されちゃってたので、特定できなかったんです。つまり、敵方に妖精さんの関与があったわけで…」 #座礁艦隊

2014-07-26 01:05:08
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

ちょ、ちょっと、大事件じゃないの。艦娘保有国以外で、艦娘の改造を、妖精さんの関与のもと行われたってことでしょう。艦娘管理法は? 「叢雲、あれ国内法ですよお」 殆ど同じ内容の国際法があったじゃない。人間が破ったならともかく、妖精さんが遵守していないというのは前代未聞だ。 #座礁艦隊

2014-07-26 01:10:27
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「叢雲よ、安心して良い。轟沈艦娘は法の埒外だ」 いやそれ安心するところ? 「まあ大事件であることには変わりない。法の隙を突かれた形になるからな。それに何より、轟沈艦に関する記録は最高レベルの軍事機密なんだ。当事者の鎮守府や、その所属する本部にもテンポラリさえ残らない」 #座礁艦隊

2014-07-26 01:16:05
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

提督の持ってるタブレットには表示されるじゃない。管轄のマップに、どこそこで何支部の誰某が沈んだ、って。 「確かにそれをスクショなり画面をカメラなりで撮られていたらあれだ。しかし少なくとも50年前からだぞ。当時から現役の提督はいないし、引き継ぐにしても途方もない話だ」 #座礁艦隊

2014-07-26 01:20:25
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

猪口敏江は懐から煙草を取り出して、火をつけた。オッサンが煙草を吸うから、隊長室は喫煙可だ。猪口敏江は紫煙をフー、と吐き出した。 「轟沈艦の情報を取りまとめている立場の人間が怪しい、と私は見る。これまでの情報から推測するに、な」 #座礁艦隊

2014-07-26 01:29:49
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「つまり、海軍の本家の情報関係の偉い奴が、轟沈した艦娘の場所を南部解放戦線にリークした」 オッサンがまとめながら、つられて煙草を点ける。喫煙者が急増し、部屋が一気にヤニ臭くなる。巻雲はぺっぺっ、としながら離れ、五十鈴や朧は不快感を隠し切れていない。私も喫煙者から退避。 #座礁艦隊

2014-07-26 01:35:54