茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1290回【どの国も、自虐的】連続ツイート
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先日オーストラリアに行ったとき、Bill BrysonのDown Underという本を見つけて買った。昨日、クリケットに関する文章の抜粋をツイートしたが、ユーモアにあふれていて、大変好きな作家である。その中に、気になる一節があった。 pic.twitter.com/5QA5HsAejq
2014-07-27 08:25:04オーストラリアは、天然資源にも恵まれていて、生活水準も高く、住宅も道路も公園も広々としていて、大変良い国のように見えるが、オーストラリア人自身たちは、自信がなく、自分たちの国が欠陥だらけだと思い、将来についても、悲観的だと思っていると、Bill Brysonは書くのである。
2014-07-27 08:26:47オーストラリアについて書いたある歴史学者は、建国以来の流れを振り返った上で、「しかし、次の100年間、果たしてこの国が存在するかどうかは保証の限りではない」と書いている。Brysonは驚く。ベルギーやカナダがそう書くのならわかるけど、なぜオーストラリアが! 隣国ないし!
2014-07-27 08:28:25Brysonはアメリカ出身の作家だが、地理的にも自立し、その政治体制を脅かす隣国もいないオーストラリアが、自分たちの国の将来について悲観的なのは不思議だと書く。しかし、私の経験によれば、自分の国のあり方について批判的/悲観的なのは、世界のどこでも見られる光景だと思う。
2014-07-27 08:29:45たとえば、英国に行って、その文化や歴史の蓄積を素晴らしいと思い、「良い国ですね」と言うのは、訪問者としての礼儀のようなものでもあるし、実際の本音でもある。でも、彼らは、たいていの場合言う。「いやあ、そんな大した国じゃないよ」「ダメなんだよねえ」。訪問者はびっくりする。
2014-07-27 08:31:51アメリカ人に、「アメリカの大学はいいですね」とか、「大統領選は、候補者どうしが直接議論して、これぞ民主主義ですね!」などと言うと、「いやあ、ダメな教授ばかりさ」とか、「選挙なんて、金で決まるんですよ」みたいな答えが返ってくることが多い。ここでも、訪問者は驚く。
2014-07-27 08:32:58つまり、発展し、成熟した国ほど、訪問者に自分たちの国のことを褒められると、「いやあ、それほどでもない」「問題だらけなんですよ」と言う傾向が強い。逆に、「わが国は素晴らしい国である」「わが民族の誇り高い歴史を」などと声高に言うのは、その国が問題があることを示すことが多い。
2014-07-27 08:34:41いわゆる「自虐史観」がどうのこうのというのは、いずれにせよ、成熟しない精神の特徴であるように思う。どの国でも、おそらく例外なく、知的で、成熟した人たちは自分たちの国のことを、ある程度批判的、悲観的な目で見ている。それでも住み続ける。そして、自分の母国を、愛し続けるのだ。
2014-07-27 08:36:30つまりは遠近法の問題である。遠くから見ると、素敵に見える大スターも、身近な人たちは、その実態を知っているから「いやあ」となる。しかし、その「いやあ」の中に、無限の愛があるのだ。外国から見たら、日本は素敵な国であるが、私たちは、「いやあ」と思っているくらいの成熟が、ちょうどいい。
2014-07-27 08:38:03