座敷鎮守府◆艦これSS◆その3

座敷犬 @zash_dog

木曾:球磨型軽巡洋艦五番艦。座敷鎮守府の秘書艦。他の艦娘と差して変わった所は無い。身長158cm、外見は17歳位。TACネーム(形骸化している)は「ウォーウルフ」。 #zashiki_memo

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木曾2:座敷鎮守府にやってきた最初の駆逐艦以外の艦娘であるが、IKEA(国際艦娘運用旗艦)によって一時期モスポール保存を受けていた為、他の艦娘から「古株」という認識はあまりされておらず、本人もそれをあまり意識しない。 #zashiki_memo

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木曾3:重雷装艦化した為に深海棲艦係数が上昇。それまで一切動かなかった右眼が再生したが、その虹彩はフラグシップ艦同様金の光を放つようになった。他の艦娘がそれを意識する事はないが、本人にとってはコンプレックス。 #zashiki_memo

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木曾4:本編開始直後にケッコン。深海棲艦因子によって提督と「特殊な」結びつき方をする。提督と艦娘の魂の境界線を取り払う「シンクロナイズ」を使用すると一時的に深海棲艦係数が大きく軽減、右眼が金から蒼に変わり、各所に深海棲艦のそれより明るい蒼い炎を纏う。 #zashiki_memo

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僕の一日はしがみつく腕をそっと引き剥がす事から始まるようになった。 #座敷鎮守府

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僕は提督として自分の部屋を一つ持っている。寝床はやや古いシングルベッドだ。僕は寝相が悪いから、腰を打って以来は日曜大工で付けたフェンスに体重を預ける場合が多くなっている。尤も地球に降りて筋肉がついたせいか、最近はフェンスが軋むようになってきた。 #座敷鎮守府

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この唯でさえ狭い寝床に、同衾するやつが一人出来た。秘書艦の木曾だ。これまでは秘書艦用の個室で大人しく寝ていたのだが、ケッコンしてからは決まって僕の寝床に入ってくるようになった。曰く「悪い夢を見るようになった」とか。 #座敷鎮守府

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悪夢。僕もケッコンしてからは彼女の「前世」の記憶を見るようになった。14cm砲の砲火。魚雷を投射する音。21発の礼砲。砲撃戦。護衛。襲い掛かる敵機。沈む身体。彼女も同じ物を見ているのを思ったのと、何時も強気な彼女の繊細な一面を見れば、それを拒否する事は無かった。 #座敷鎮守府

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だが狭くなったし、寝苦しくなった。木曾は小柄だが、その体温は明らかに高いし力も強い。彼女に枕が如くしがみつかれれば、どんな屈強な男でも寝返りを打つ回数は半分以下に減るだろう。こんな美少女と同衾できるだけ幸せ物だと思うようにして割り切ったが。 #座敷鎮守府

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しかしここまで距離を狭めている筈の彼女の、その平常はやはり「少女」よりは「戦士」という形容が似合う。何時もこれ位近ければ良いのだが――そこまで来て思い直す。僕が彼女を一人の異性として好いていても、彼女が僕を好きである訳ではない。それにその真意を問える程の度胸は無い。 #座敷鎮守府

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それを問えば今の――何処と無く心地よい関係は消え去ってしまうような気がした。彼女がYesと言うにせよNoと言うにせよ。それに昔からテレビジョンのメロドラマのような「愛し合い」は好きではなかった。共依存にも近い関係が、互いを破滅へと追いやるような気がして。 #座敷鎮守府

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互いにこの関係を詮索する事無く続いてきたのだ、出来れば続けていたい。寝間着の僕は軍装(普段は海軍の物でなく着慣れたシンプルな宇宙軍のそれを着ている)に着替え、鎮守府の胃袋を担う食堂へ向かう。腹が減っては戦は出来ぬ、とは良く言ったものだ。 #座敷鎮守府

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食堂は既に人だらけだ。この鎮守府で戦うのは艦娘だけではない。整備スタッフ、管制オペレータ、医療班、回収班、今まさに働く糧食班、その他諸々。規模は500人程度。日本海軍の人も居れば、現地雇用した人も。WASPからアジア系、アフリカ系まで幅広く揃うここはサラダボウルだ。 #座敷鎮守府

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提督だからとは言え真っ先に食事にありつける訳ではない。ここではスタッフ全員が平等だ。そうしてこれまでやってきたのだからここに居る誰にも不満は無い――筈だ。提督として認知されているから、色んな人に話しかけられる。おはよう、程度の挨拶から備蓄資源の枯渇問題まで。 #座敷鎮守府

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僕にはこの鎮守府の問題の有象無象を認知する役目がある。とは言っても「生身」の僕が覚えられる情報はインプラントメモリを使う人々の容量より遥かに少ない。故にペンを走らせる。プレートに付属する紙ナプキンは僕の荒い字で埋まっていく。 #座敷鎮守府

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5分程して、列の最先頭まで辿り着く。今日のメニューを確認するのを忘れたが、大抵の日は献立の殆どをインドネシア料理か日本料理が占める。「おはようございます、提督」 受け渡しをしていたのは糧食班長、軽空母の鳳翔さん。世界初の空母である彼女は 戦場より家事が似合う女性だ。 #座敷鎮守府

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「お早う鳳翔さん、ナシマレックを」「分かりました、ちょっと待ってて下さいね」穏やかな口調とは裏腹に、彼女の動きは極めて素早い。ココナッツミルクで炊いた白米をメインにした定食は15秒程で提供された。「ありがとう、いただきます」「どうぞ」定食を貰い、受け取り口を去る。 #座敷鎮守府

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本来高カロリー食であるナシマレックだが、鳳翔さん率いる糧食班は付け合せのメニューやら何やらの調整でこの定食を栄養バランスの取れた実用的な物に仕上げた。食という観点から僕達を支える彼女達の努力には頭が上がらない。合流した回収班の集まりに混ぜて貰い、テーブルに着く。 #座敷鎮守府

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#座敷鎮守府

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回収班。文字通り戦域の艦娘を回収する部隊だ。時に深海棲艦からの攻撃を受ける彼等の仕事はこの鎮守府で最もハードと言ってもいい。尤もうちの場合は敵に追われるようなケースは数が少ないから、共に食事を摂るメンバーが欠けた事はない。 #座敷鎮守府

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彼等はPMCから派遣されている為階級に縛られた態度を取る事はない。年上に上官扱いされるのも気苦労するから、こうして気軽に話してくれるメンバーの存在は僕としてはとても有り難い。話す内容は色々だ、食事の話から衛星放送で見るベースボールの勝ち負けまで。 #座敷鎮守府

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食べ終わり、彼等とは分かれる。今日は非番だそうだ。僕も今日のスケジュールには出撃を組み込んでいない。「協定」に基づいた出撃や鎮守府への奇襲が無い限り、彼等の出番は無い筈だ。と言っても滅多な事が無ければ人工島の外へは出られない。大方島の商店街で過ごす事になるだろう。 #座敷鎮守府

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自室に戻るためにはエレベータを使わなければならない。食堂とオリエンテーションルームのあるここは第3層。提督室があるのは第6層だ。人工島の地下全体を使っているこの鎮守府はとても広いが、階層毎の移動手段は物資搬入用の大型エレベータシャフトだけなのだ。正直、迷子になる。 #座敷鎮守府

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やってきたゴンドラに最初に乗ったのは僕だった。続いて乗ってくるスタッフ達の為に扉を押さえつけながら、操作パネルの階層を示すボタンを片っ端から押していく。居住区は各階層でバラバラだし、色んな階層に色んな設備が分散しているから各階層で止めていくのが一番手っ取り早い。 #座敷鎮守府

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ゴンドラがギュウギュウ詰めになった所で手を離しドアを閉める。重い駆動音。建造当初建材を運んでいたらしいこのエレベータも、ここまで多くの人数を載せる物になるとは考えられてはいなかっただろう。徐々に疎らになっていく人混みから抜け出し、自室に戻る。 #座敷鎮守府