茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1292回【なぜ、音がリアリティを支えるのか】連続ツイート
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駅を降りたら、ものすごい音がした。クマゼミの合唱。それで、一気に子どもの頃の記憶が蘇ってきた。母のふるさと、小倉に、夏帰省するたびに、迎えてくれた、「わっし、わっし、わっし」という大合唱。本州で聞くミンミンゼミやアブラゼミに比べて、格段に力強いその声。
2014-07-29 07:45:11音だけが持つ、臨場感がある。視覚情報では、決して補えない、まさにそこにしかない音。ドキュメンタリ制作のプロ(NHKの有吉伸人さん)に教えていただいたことだが、とにかく音を押さえることが大切なのだという。極端な話、映像がぶれたり、ぼけてしまっていても、音さえ撮れてればなんとかなる。
2014-07-29 07:46:39たとえば、ある現場を取材する時に、何か予想できない事態が起こって、カメラがぶれたりフォーカスが外れたりしても、その場の会話、音、ノイズがとれていれば、後にそのドキュメントを見るものは、あたかもその場にいるようなリアルな感覚を持つことができる。だから、現場で音声さんは大切だ。
2014-07-29 07:48:10数年前、池袋の立教大学でシンポジウムがあった時、出番の前に舞台袖で会場運営の学生たちと雑談していて、彼らはドキュメントを撮っていて、まさに、この、「音が大切」という鉄則を知らずに、あとで音だけ取り直した、という話を聞いた。つい絵作りに夢中になって、音を忘れてしまうのである。
2014-07-29 07:49:33歴史に残る事件でも、現場にいた者しか聞いていない音が、臨場感をもたらす。1945年の8月15日の玉音放送についてはさまざまな証言があるが、「音」がリアリティを支える。2001年9月11日の同時多発テロでも、世界貿易センターの近くにいた者たちは、ものすごい音を聞いたという。
2014-07-29 07:51:08なぜ、音がリアリティを支えるのか。私たちの視覚は、顔の方向や注意の対象によって、必ずしもすべてを見ているわけではない。視覚は断続的である。それに対して、音は、ずっと、継続的に聞こえている。だからこそ、音のつくる世界こそが、「そこにいる」という包まれた感覚を生み出す。
2014-07-29 07:54:00夏祭りの音とか、球場でバットが振られカキーンとする音とか、かき氷をつくる音とか、夜明けの鳥のさえずりとか、あとそれからそうだ、花火の上がる音とか、さまざまな音が、恋しくなる季節。九州にいる間は、クマゼミがワシワシワシと臨場感をつくってくれるが、やがてそれも消える。
2014-07-29 07:55:34