座礁艦隊その３９　～弔い～

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

[R-18]6/29インテ夜戦新刊あきつ丸本 | ㌝㌏㌋㌨ #pixiv pixiv.net/member_illust.… ちょおオススメだからみんな読もう

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<a-ground fleet> #座礁艦隊

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それらは薄暗い地下保管庫の片隅に、シートをかけられただけの状態で眠っていた。私たちが先日戦った敵艦娘、サルベージ艦という名称がついた、その残骸だ。ここだけまるで死体置き場のような雰囲気をかもしていた。 #座礁艦隊

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近づくと、腐った磯の臭いが鼻を突いた。深海棲艦の臭い。全く関係ないはずのこれらが、同じ臭いを放っている。サルベージ艦はやはり深海棲艦にはならなかったが、うん十年も腐敗することなく海底で過ごすのは、一体どんな気持ちなのだろう。私は一隻の傍に立ち、シートに手をかける。 #座礁艦隊

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「おや、先客でありますか」 あきつ丸が階段を下りて来ていた。アンタも見に来たの、これ。 「実戦ではついにお目にかかれませんでしたから。しかし、まっこと深海臭いでありますな」 艦娘が深海棲艦になる、って迷信のもとだったりするのかもね。開けるわよ。 #座礁艦隊

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シートをゆっくりと捲る。臭いがいっそう強くなり、思わず鼻を覆う。そのサルベージ艦は胴部が抉れていた。私が撃ち、朧がトドメを刺した奴。青白い外皮は、見れば見るほど深海棲艦の皮膚に似ている。仮面のような無機質な顔、丸坊主の頭。でも、確実に私たちと同じ艦娘。 #座礁艦隊

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忌避感と親近感がない交ぜになった、奇妙な感覚だった。だってこれは、かつて私たちと同じように海原を駆け、戦った艦娘なのだから。永遠の眠りから叩き起こされ、また人のために戦った艦娘。そう思うと、憐れみが沸いて出てくる。 #座礁艦隊

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あきつ丸はほおー、とわざとらしく感心しながら、いろんな角度でサルベージ艦を観察していた。横顔を舐めるような距離でじっ、と見つめていた、かと思うと、すっくと立ち、ふうむ、と嘆息する。 「彼女は純然たる兵器になれたのでありますな。いやはや、羨ましいであります」 #座礁艦隊

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どういう意味よ、それ。 「そのままの意味でありますよ」 あきつ丸は手袋を取ると、その手をサルベージ艦の額に置き、慈しむように撫でた。血の気の無い白い手。置いた先の外皮の色とほとんど同じ。サルベージ艦は何も言わず、半開きの目が虚空を睨んでいる。 #座礁艦隊

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アンタだってほぼ兵器じゃないの。巻雲が憧れてたわよ。アンタみたいな体になりたいって。 「確かに、自分は空母と変わらない構造をしているでありますが」巻雲の話をすると、あきつ丸は決まって困ったように笑う。 「叢雲どの、お酒は好きでありますか」 #座礁艦隊

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そう言うとあきつ丸は、提げていたカバンから清酒の瓶を取り出した。お猪口も二つ。ここで飲む気なの？ 「この子らの供養も兼ねて」 お猪口に注いで、一つをこちらに渡す。供養だなんて。人間くさいわね。ちびりと煽ると芳醇な香りが口腔を抜けた。辛口のアルコールが喉を焼く。 #座礁艦隊

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あきつ丸は一杯目は飲まずに、横たわるサルベージ艦の額から胸元にかけた。清酒の香りが深海の臭いを打ち消す。 「人間くさい、良い言葉でありますな」二杯目を呑みながら、あきつ丸はしみじみと言った。その目はサルベージ艦を見つめ続けている。 #座礁艦隊

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レスポンスとモチベーションは比例関係だ。

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「いやあ、美味い。お酒は人類が生み出した至高の飲み物であります。日本酒、ビール、蒸留酒、葡萄酒にウヰスキィ。うーん、お酒がこんなに美味いのならば、食べ物もさぞ美味いに違いないでありますな、きっと」 満面の笑みでそうまくし立て、途端に沈んだ表情になるあきつ丸。 #座礁艦隊

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「ご存知のとおり、空母は人間の飯を食べられないのであります。戦艦のようにあとで洗浄できるからと狂餐に興じることも許されない。空母の誤食による洗浄作業は、あなた方と違って過酷を極めるのでありますから」 並々と注がれた三杯目を一気に飲み干し、陸軍空母は嘆息した。 #座礁艦隊

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あきつ丸、あなたもしかして人間になりたいの。そう尋ねると、血の気の無い肌の空母はふふ、と自重気味に笑う。 「お酒は空母が唯一嗜める、人間の飲みものであります。実に美味い。燃料と鋼材の味気の無さは、叢雲どのも、よおくお知りでありましょう」 #座礁艦隊

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サルベージ艦の頭部を両手で包み込むように掻き抱き、あきつ丸は親指でそっと、半開きの瞼を閉じさせた。 「空母はほぼ人外であります」 その態勢のまま一緒に目を閉じる。 「人のようなのは見た目くらいなものであります。が、そのわずかなヒトの片鱗が、いや、わずかであるからこそ」 #座礁艦隊

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そのままあきつ丸は、しばらく黙った。空調の音だけが、保管庫に満ちる。 「自分のいた幌筵泊地本部は、北方海域で最も前線に近い基地でありまして。連日連夜、戦いどおし。自分も出撃ローテーションに組み込まれ、攻めては退き、攻められては押し返し――まっこと兵器でありました」 #座礁艦隊

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だから逃げて来たわけ？ ここに。 「そう…かもしれませんな。陸は良い。実に人間的で。何を考えているか分からない深海のと撃ち合うよりはずっと」 あなたのわずかな人間は、満足してるの。 「いまのところは」 あきつ丸はサルベージ艦から離れると、シートをかけ直した。 #座礁艦隊

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「この所縁の分からぬ子ら、本解体はしてもらえるのでありましょうか」 調査が終われば、ね。それまでは保管になるわ。 「そうでありますか。もうしばらくの辛抱であります」 あきつ丸はてきぱきと酒を片付けると、すたすたと去ってゆく。階段を上がろうとする間際、振り向く。 #座礁艦隊

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「そうそう。せっかく前線補給のお役目を頂戴しているのであります。もっとボカスカ撃っていただきたい。大発も役目が無くて泣いておりますから」 アンタ今大発積んでないでしょうが。 「これは失礼。では」 そのまま階段を上がり、いなくなった。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

もう一度、シートの掛けられたサルベージ艦を見つめる。ねえ、あなた、もし……そこまで言いかけて、やめた。死者は何も語らない。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

部屋へ戻る途中巻雲とすれ違った。「臭っ！ くっさ！ 深海臭い！ あなた屍姦でもしてきました！？ アッ…、さっきの陸軍空母も深海臭かったから、まさかの3P！ いやあのキモ艦三隻いたから6…」 オーバーなリアクションが鼻についたので、ぶん殴っておいた。お風呂入ろ…。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

艦娘の陸戦をクッソ真面目に考えてるけれど、もっとクッソ真面目にリアリズムに考えてくれる人を待ってる。

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

提督が主人公でないので入れ替わる要素が無いんじゃ…