夏の季語で兎虎を書いてみた

夏の季語を調べたら素敵な言葉がいっぱいあったのでこれを使ってSSを書いてみました。 出来たらもうちょっと増やしたいなぁ。
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なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

しばしの涼を求めて片蔭に寄る。見上げた空は真夏の色。「あっちぃなぁ」思わず漏れた言葉を聞きとがめた様に目の前にクルマが止まった。見慣れた車体。「お送りしますよ」窓が開き、金糸が光を弾いた。「かーっ、王子様の登場かよ」「何か問題でも?」しれっとした笑顔に俺は笑い返す。 #TBss

2014-07-30 17:19:40
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

短夜を恨んでみても仕方が無い。それでも貴方に触れていられる時間が惜しくて惜しくて。「貴方が足りない」ぼそりと呟く僕に貴方はぶはっと吹き出した。失礼な人。が、「バニーちゃんは欲張りだねぇ。でもそんなお前が好きだぜ」腕を引かれそんな事を囁かれた日には!飛んで火に入る夏の虫 #TBss

2014-07-30 17:25:31
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

レイヤードメトロポリスを浮かべた海では夏場しばしば赤潮が発生する。「あー、苦潮だ」バニーの運転するクルマから見えた景色に俺は呟いた。「何です?ニガシオ?」「赤潮のこった」「あぁ貧酸素水塊が浮上してきたんですね」「はぁ?」「とにかく夏だってことですよ」いい加減なヤツ! #TBss

2014-07-30 17:32:52
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

半ば管理都市であるシュテルンビルトに虫は少ない。それでも何年に一度か蝉が大量発生する。「何です?これ」ジージーと大音量で鳴く声に顔を顰めながらバニーが地面を指さした。公園の芝生に所々穴が空いている。「あぁ蝉の通った穴だ。何年も地下で暮らしてたんだぜ」まるで俺の心の様に。#TBss

2014-07-30 17:45:56
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

夏の暁、隣で幸せそうに微睡むあいつにしみじみと思い知らされた。こいつの夏はこれからで、俺のそれは終わろうとしている。あぁでも間に合った。まだ俺はこいつの傍らに立てる。そう思ったら何だか涙が出ちまって。でもよ、バニー。最高の夏にしようぜ! #TBss

2014-07-30 18:33:54
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

「よぉ」ふらりとやってきたあの人の手にはコンビニの袋。「何です?」訊けばぐいとそれを差し出された。「バニーちゃんに夏のお届けでっす」意気揚々としたあの人に僕は思わず笑う。「アイスキャンディ?」「おうよ」それは虎徹さんが教えてくれた季節の品。あぁまた夏が来た。 #TBss

2014-07-31 20:46:26
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

大きな窓から差し込む灼けつくような西日があの人の裸の背を照らしていた。傷だらけの肌は銅色。僕は神聖な気持ちでそっとその背中に口づけを送った。許してくれてありがとう。許されて僕はうれしい。貴方を崇めるつもりはないけれど、間違いなく僕のヒーローで僕の全てだ。あぁ輝ける夏よ!#TBss

2014-08-01 14:51:48
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

階層エレベーターから降りるや否や物陰にそっと滑り込み、ゴールドでは滅多に使わないサングラスを掛け、野球帽に髪を押し込んだ。そして真夏の通りに足を踏み出す。多少の視線は感じるものの日頃の比では無いので僕は無視を決め込んだ。目指すはマーケット。たまには僕が季節を届けたい。 #TBss

2014-08-01 15:42:02
なち@土曜 東 パ 09a @nachi8118_ss

黄昏時、中空をすぅっと黒いものが掠めた。「蝙蝠か。めっずらしー」視線を追いかけると確かに翼を持つ小さな生き物が飛んでいる。「スカイハイじゃ無いんですね」思わず零せば、笑いながらばしんと背を叩かれた。「ちげぇよ!」そして僕らは笑いながら歩き出す。今日の夕飯は何だろう。 #TBss

2014-08-01 16:03:27