茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第１２９６回「宇宙旅行の経験者Nの増大」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート１２９６回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、「旅行」について。

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夏だから、旅行の話を書こうと思う。グランドキャニオンに初めて行ったのは、田森佳秀（@Poyo_F ）とだった。アリゾナ州ツーソンから、自動車で向かった。途中、ハイウェイパトロールが時々通って、「気をつけようね」などと言いながら。交代で運転していった。

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さて、何かを写真やビデオで見ることと、実際に経験することは違うと言う。グランドキャニオンも、そこに行くことで確かに何かが変わったが、その体験は、アプローチから始まっていた。近づいていっても、なだらかに変化する平野があるだけで、山や丘のようなものが、一切ないのだ。

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そこに、いきなりグランドキャニオンが出現する。つまり、見渡す限りの平らな土地の広がりの中に、いきなり、あの急激な落ち込みがある。そりゃあ、びっくりするよね。大峡谷自体もびっくりだけど、その周辺とのつながりも驚き。水の浸食作用って、凄いな。

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自分の中に、グランドキャニオンに相当する気分というか、身体感覚のようなものがあるように思う。それが自分をどう変えたかはわからない。旅の醍醐味は、どう影響を受けたかわからないかたちで、自分自身が影響を受け、変わることだろう。もう、元には戻れない。自分探しというより、自分作り直しだ。

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ヴァージンなど、いくつかの民間企業が、宇宙旅行のサービスを始めようとしている。地球周回軌道に入って、無重力状態を経験し、漆黒の宇宙空間に浮かぶ地球を見ることで、おそらく、体験者の無意識のなにかが変わるだろう。宇宙旅行の経験者の数が増えるにつれて、人類社会に影響を及ぼすかもしれぬ。

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立花隆さんの『宇宙からの帰還』にもあったが、地球周回軌道に出ることは体験者の無意識を変える体験であるが、地球を離れて、月面に立つことはさらにレベルの違う体験であるという。月に降り立った宇宙飛行士が、神の声を聞いたり、意識の変容を経験する事例は、非常に多い。

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２０世紀に撮られたすべての写真の中で、もっとも重要な二枚は、地球から見た青い「地球の出」と、太陽系を出るボイジャーが振り向きながらとった、青い点のような地球の写真なのかもしれない。これから宇宙旅行が一般化していくと、意識の変容を経験する人が、増えていくことだろう。

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私も、もし機会があれば、月面に立つ、というのは難しいにしても、地球周回軌道から地球を見るという経験は、ぜひしてみたいと思う。どんなに写真や映像、文章で疑似体験していても、実際にそこに行くということの作用には及ばない。宇宙旅行の経験者数Ｎの増大は、人類のあり方を変えるはずだ。

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以上、連続ツイート１２９６回、「宇宙旅行の経験者数Ｎの増大」をテーマに、８つのツイートをお届けしました。