父が教えてくれたこと

教師としての父の思い出です。 関連記事: 父から学んだ「教える」ということ[Part 1](教えるときの心がけ) https://note.mu/hyuki/n/n478ee16c8dc7 続きを読む
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結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

今日は月曜日なので、そろそろ連ツイをしてみようと思います。

2014-08-11 18:02:25
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

8月は私の亡き父の誕生月。暑くなると父のことを思い出します。父は中学校の理科の教師をしていました。私が通っている中学校の教師です。たいへん指導力があり、先生方も一目おく。そんな教諭でした。

2014-08-11 18:04:08
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

とはいうものの、私自身は父の授業を見たことは一度もありません。教室の教壇に立ったことを見たのは一度だけ。それは単なる連絡事項でした。

2014-08-11 18:04:55
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

でも結城は私の父のことを「教師」と認識していました。それはなぜかというと食卓でいろんなことを教えてもらったからです。いくつかのエピソードはすでに結城メルマガなどで書きましたので、今日は別のエピソードを書きたいと思います。

2014-08-11 18:05:55
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

父は物理(いわゆる第一分野?)を教えるのがとても上手でした。結城がまだ幼いとき、電波の届く原理について教えてもらったのを覚えています。いくら教えるのが上手でも、小学校低学年に電磁気学は難しかったのでしょう。結城は電波のことを「なんとなくもやもや伝わるガスみたいなもの」と理解。

2014-08-11 18:07:38
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

いまにして思えば、その理解は大きく間違っていたわけですが、でもそこがポイントではないと思っています。私の父は、小学校低学年の子供にも電波というものを教えようと試みたこと。そして中途半端であるけれど知識は伝わった。そして、それよりももっと大事なものが伝わった。

2014-08-11 18:09:02
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

それは「目には見えなくても存在するものはいろいろあり、きちんと背後には理論がある。しっかり学べば深く理解することができる」ということ。もちろん小学校低学年の子供がこんな文面で理解したわけではない。言葉抜きで「体験」したわけだ。父親の言葉を聞いて。父親の態度を見て。

2014-08-11 18:10:46
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

父は食卓に紙を広げて説明する。「ちょっと紙出してくれないか」と父が言うと、母は裏が白紙の新聞広告をこちらに一枚よこす。父はそれにていねいに図を描いて説明する。発振回路がどうだの、八木アンテナがどうだの。説明された内容は小学生には難しかった。でも、

2014-08-11 18:12:38
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

でも、父親がでたらめや嘘八百を並べていないということは伝わる(そもそもそんな疑いを小学生は持たない)。そして「きちんとした説明で広がる世界がある」ことを体感する。父親に家庭で教えられたことは幸せだ。教えられた「知識」に感謝しているわけではない。「経験」に感謝しているのだ。

2014-08-11 18:15:00
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

親が子供に伝えているのは知識ではない。それは世界観なのだ。親が世界をどのようにとらえているか。いやがおうでもそれが伝わる。父の世界観はアバウトにいえば理系的な世界観だ。物理的な側面から、科学的な側面から世界を捕らえ、説明し、伝え、理解する。

2014-08-11 18:17:01
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

子供の頃、特に小中学校のころ、父親が語ったことや伝えてくれたことは自分の根底を支えている。情報として支えているわけじゃない。そうじゃなくて、世界の物事や知識に対してどう向かうかという態度として支えている。

2014-08-11 18:18:22
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

父は本を書いたことも、仕事で書く以外の(他人に見せる)文章を書いたこともない。普通の、中学校の理科教師である。結城は教師ではない。文章を書き、本を書いて生活をしている。でもあるとき気付いた。

2014-08-11 18:19:52
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

「本を書くことは、ある意味では教師の仕事なのだ」ということに気付いた。自分が理解したこと、自分が感動したことを正確に読みやすく表現して読者に伝える。それは「教える仕事」と言ってもいい。つまりは、自分でまったく自覚はなかったけれど、結城は父親と同じ仕事に就いていたともいえる。

2014-08-11 18:21:19
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

結城はそれに気付いたときに深い感動を味わった。自分が父親の息子であるということを感謝し、不思議な巡り合わせに驚いた。そしてそれと同時に安堵もした。私は大丈夫、と思えたのだ。父はすばらしい教師だった。私が父の息子であり、同じ仕事に就いたのなら、よい仕事をする可能性だってあるわけだ。

2014-08-11 18:23:16
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

愚かな私がなかなか気付かなかったことがある。父は典型的な理系の人で、文章はそれほど得意じゃなかったし、文章によって自己を表現することにもそれほど関心はなかった。でも、私は文章に深い関心がある。なぜだろう。あるとき、私は自分の母親が文章の素養があることに気付いた。膝を打つ私。

2014-08-11 18:25:39
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

なるほど!私はあの父親とあの母親の子供であった。そしてまた深い満足を得た。私は生きていける。そんなふうに感じることができた。

2014-08-11 18:26:34
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

以上、連ツイおしまい。母親についてはまたいつか連ツイ(もしくは結城メルマガ)でお話ししますね。 hyuki.com/mm/

2014-08-11 18:27:25
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

連ツイは明日くらいにとぅぎゃります。m(_ _)m

2014-08-11 18:27:48