茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1303回「ダメ人間は希望を与える」

脳科学者・茂木健一郎さんの8月20日の連続ツイート。 本日は、夏の盛りを過ぎた頃に思うこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

8月13日以来となる、連続ツイート1303回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、夏の盛りを過ぎた頃に思うこと。

2014-08-20 06:57:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

弟子の植田工(@onototo)は、いろいろダメなやつなのだが、最近、植田がダメなことで、周囲の人に「希望」を与えていることに気付いた。東京藝大に入るのに、4浪する。生活がだらしない。絵が売れない。いろいろトホホである。それで、「植田がだいじょうぶならだいじょうぶだ」と思う。

2014-08-20 06:58:47
茂木健一郎 @kenichiromogi

世の中には、偉大なことを達成することで他人に希望を与える人たちがいる。たとえばイチロー選手。あるいはアインシュタイン。モーツアルトの音楽は、人をインスパイアする。「私も、あのような高みに行けたらいいな」と思わせる。これが、世間で普通に言うところの希望であり、野心であろう。

2014-08-20 06:59:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

小学校の道徳の教科書には、「こういう人になりましょう」と模範的な人が書いてある。偉人伝の類いである。それによって、インスパイアされる子どもはきっといる。一方で、ダメな人間もまた、そういう人間がこの地上で生きているというその事実の力によって、人に勇気を与えるのではないか。

2014-08-20 07:01:00
茂木健一郎 @kenichiromogi

文学は、基本、ダメな人間を描いてきた。漱石はのっけの『我が輩は猫である』からして、ダメ教師、くしゃみ先生を描いてデビューした。以来、一貫してダメな人間を描いている。太宰治がダメ人間なのは言うまでもない。してみると、文学とは、ダメ人間の博物館のようなものではないか。

2014-08-20 07:02:15
茂木健一郎 @kenichiromogi

偉人にしたって、野口英世などは、その医学者としての偉大さが強調されてきたが、実際にはダメ人間だったことが知られている。偉大な人が、同時にダメ人間だったと知ると、私たちは納得し、感動し、なんだあ、と思い、おい待てよ、自分もひょっとしたら生きていけるかも、と思うのだ。

2014-08-20 07:03:29
茂木健一郎 @kenichiromogi

なぜ、ダメ人間は私たちに希望を与えるのか。一つには、心のワクチンのような側面があるのだろう。自分の人生だって、いつダメの時期を迎えるかわからない。そんな時も、なんだ、ああいう風にのらりくらい生きていけばいいんだという、一つの内部モデルを与えてくれる。

2014-08-20 07:04:35
茂木健一郎 @kenichiromogi

もう一つ。ダメ人間は、おそらく、生の多様性と関係している。偉大な人生だけだったら、生きることはおそらく息苦しくなってしまう。そうではなくて、生き方にはいろいろあって、そのうちの一部は、世間から「ダメ」と思われるような様相なんだと、そこに多様性があるのだと。

2014-08-20 07:06:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

あと、これはおそらくもっとも大切な秘密なのだが、ダメな人間、ダメな時間というのが、案外生産的だということ。この生産が何を生み出しているのかは、そんなに簡単にはわからないけど、発酵したり、触媒したり、つながったり、ダメが一発逆転で超イイになることもあるということ。

2014-08-20 07:07:17
茂木健一郎 @kenichiromogi

それやこれやで、ダメにも希望がある。ダメは、偏差値や、経済指標に反映される価値を生み出さないけれども、土の中のミミズくんのような、容易には把握できない生産性を秘めている。ダーウィンが最後にミミズの本を出したのは、生涯定職につかなかったダメ人間のフィナーレとして誠にふさわしかった。

2014-08-20 07:08:55
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、「ダメ人間は希望を与える」のテーマで、9つのツイートをお届けしました。

2014-08-20 07:09:30