茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1304回【嗜好が人間の牙城である容】連続ツイート
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小学校に上がる前、ファンタが猛烈に流行っていた。それで、ぼくは、「絶対にグレープだ!」と思っていた。子ども会などで、ファンタオレンジとグレープがずらりと並んでいると、まよわず、グレープの方に手をのばした。子ども心に、この世にこんなに美味しい飲みものがあるのか、と思ったのである。
2014-08-21 07:37:01ところが、ある時期から、「ファンタオレンジもいいんじゃないか」と思い出した。その「動揺」がどのように始まったのか、よく覚えていない。友だちがおいしそうに飲んでいたのかもしれないし、コマーシャルの影響かもしれない。それで、ある日、グレープじゃなくて、オレンジを飲んでみた。
2014-08-21 07:37:51その日を境に、ぼくは、「ファンタグレープ派」から、「ファンタオレンジ派」に、宗旨替えをしてしまった。昨日までファンタはグレープだと思っていたのが、ファンタはオレンジだ、の人になってしまったのである。あの時の、自分が揺れ動く感じは、未だに鮮明に残っている。
2014-08-21 07:39:05さて、講演会などで、「きのこの山」と「たけのこの里」のどちらが好きですか、と聞くと、だいたいキレイに5対5に分かれる。しかも、それぞれの「派」において、はっきりとした理由がある。「きのこの山」が好きな人はそれなりの、「たけのこの里」支持派はそれなりの、理由を挙げるのである。
2014-08-21 07:40:29私自身は、「たけのこの里」が好きである。ここで興味深いのは、嗜好に正解はないということだ。そして、嗜好は、ある時突然、変わるかもしれないということだ。「たけのこの里」が好きな私が、あることをきっかけに、「いやまて、オレは実はきのこの山が好きだったのだ」と思うことがあり得る。
2014-08-21 07:41:32正しい答えをすばやく出す、という能力においては、おそらく人間は人工知能に凌駕される。「知能指数」なんてものがあるが、人間の場合せいぜい振れ幅が100とか160とか。人工知能は、知能指数4000とか、そういうやつらがこれからきっと出てくる。人間に勝ち目はない。
2014-08-21 07:42:39人間のすごさは、その嗜好性にあると言えるだろう。なぜ、ある人は「たけのこの里」が好きで、別の人は「きのこの山」が好きなのか。なぜ、ファンタグレープが好きだった人が、突然ファンタオレンジが好きになるのか。そのような嗜好性、およびその変化こそが、これからの人間の牙城になるだろう。
2014-08-21 07:43:38ところで、この夏、私はとつぜんグレープジュース、特にウェルチのが好きになってしまって、自販機で見つけては買って飲んでいるのだが、そうしているうちに、子どもの頃、ファンタオレンジに宗旨する前、ファンタグレープ命だった頃の気分が蘇ってきた。あの頃、私は4歳か5歳くらいだった。
2014-08-21 07:45:02