茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1305回「惑うことが、脳にいい」

脳科学者・茂木健一郎さんの8月22日の連続ツイート。 本日は、ときどき思うこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート1305回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、ときどき思うこと。

2014-08-22 07:12:23
茂木健一郎 @kenichiromogi

よく質問されることのベスト3に確実に入るのが、「〜は脳にいいですか」「脳にいい〜はなんですか?」ということ。そもそもそういう視点で研究していないし、評価関数も明らかではないのだけれども、こちらも困って、当惑した笑顔を浮かべるか、「悪くはないです」くらいのことを言うしかない。

2014-08-22 07:13:46
茂木健一郎 @kenichiromogi

ただ、最近思うのだけれども、おそらく、ほぼ確実に「脳にいい」と言えることはあると思う。それは、当惑すること。自分が今まで知らない、新しい現場に入って、そこでみんなが共有している「暗黙知」のようなものがわからずに、どうしよう、と当惑して探ること。これは、とってもいいね。

2014-08-22 07:14:46
茂木健一郎 @kenichiromogi

振り返ってほしいのだけれども、ひらがなとかカタカナ、さいしょに書き始めたとき、かなり当惑した。ゲシュタルト崩壊から始まるというか、「あ」がなぜこんなかたちをしているのか、ふしぎで仕方がなかった。大人になると、文字にすっかりなれてしまっているから、そんなこともなくなる。

2014-08-22 07:15:53
茂木健一郎 @kenichiromogi

あるいは、プールに初めて入ったとき、顔をつけるところから始めたよね。ぼくもそうだったけど、水の中で目を開けていられなくて、先生が、いち、に、さん、と数えて、あの時間の経過が、当惑とともに心に刻まれた。あのような時間は、確実に「脳にいい」と言うことができると思う。

2014-08-22 07:16:54
茂木健一郎 @kenichiromogi

おとなになると、いろいろなことに慣れてしまっているので、その現場の暗黙知、文脈に自分が慣れていなくて、当惑する、ということが少なくなってしまう。だからこそ、最初にひらがな、カタカナを学んだ日、プールで水に顔をつけた日、九九を覚え始めた日の当惑を思い出すことが肝心である。

2014-08-22 07:18:16
茂木健一郎 @kenichiromogi

昨日、私はある現場に行って、何しろ人生でそういうことをやるのが初めてで、ところがすぐに始まってしまって、そこにいる人はみなプロで当たり前のようになっていて、ぼくも様子を見ながらそれに合わせて、その時間帯が当惑するとともに、とても幸せだった。ひらがなを最初に学ぶ子どもに戻っていた。

2014-08-22 07:19:22
茂木健一郎 @kenichiromogi

初めてのこと、当惑すること、その場の暗黙知を探るしかないことは、脳にいい。そして、その内容は人によって異なる。なぜならば、人生で積み上げてきたものが違うから。そう考えると、万人にとって、「これをやると脳にいい」ということは、一つメタの階段を上り切れていないことになる。

2014-08-22 07:20:55
茂木健一郎 @kenichiromogi

あなたが、まだ、したことがないこと。慣れていないこと。当惑すること、探るしかないこと。そのようなことが、「脳にいい」のです。そして、その内容は、一人ひとり違うのです。あなたの今までの人生で積み上げたものはいったん脇に置いて、惑い、探るしかないものに向き合う時、脳は活性化します。

2014-08-22 07:22:13
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、「惑うことが、脳にいい」のテーマで、8つのツイートをお届けしました。

2014-08-22 07:22:54