1943 ザ・バトル・フォア・ミッドウェイ#2

本編には微塵も関わってこない狂気設定
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2014-08-28 20:30:55
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss を使用していただけると大変ありがたいです。宜しければ暫くの間、お付き合い下さいませ)

2014-08-28 20:31:58
劉度 @arther456

【1943 ザ・バトル・フォア・ミッドウェイ】#2

2014-08-28 20:33:08
劉度 @arther456

深海棲艦の別働隊は、硫黄島で補足された。現れたのは、戦艦棲姫を旗艦とした、少数ながらも精鋭ぞろいの艦隊である。横須賀の艦隊の大半はMI作戦で出撃中、この奇襲は脅威であると言えよう。だが、決して立ち向かえないというわけではなかった。 1

2014-08-28 20:34:49
劉度 @arther456

「ドッソイオラー!」力士妖精さんが空を飛ぶ。「ノコータ!ノコータ!」力士妖精さんが敵航空機を投げ飛ばす。「ハッキョホー!」雲龍が軍配を上げる。硫黄島上空は今、力士妖精さんたちの土俵と化していた。大鳳と雲龍が操る、第六〇一航空隊、通称『航空力士部隊』である! 2

2014-08-28 20:38:21
劉度 @arther456

零戦の代わりに空を飛び回る力士に、戦艦棲姫は呆気にとられていた。深海棲艦に理解できないのも無理はない。魚雷の代わりに米俵が飛んできて、爆撃の代わりに突っ張りが繰り出され、しかもその威力が本物と遜色ないなど、海軍としても信じられない。相撲の未知の力、としか言いようがなかった。 3

2014-08-28 20:41:33
劉度 @arther456

「のこったぁ!」戦艦棲姫の隙を突いて、十両の時津風が果敢に突撃を仕掛ける!「ヌウッ!」低空タックルを戦艦棲姫は受け止める!がっぷり四つ!「イヤーッ!」「グワーッ!」しかし時津風は死角からビール瓶で殴打!「ガアッ!」「グワーッ!」戦艦棲姫は蹴り返す!時津風の反則負け! 4

2014-08-28 20:44:51
劉度 @arther456

「雲龍!」「ええ、決めてみせましょう!」二人が新たに航空力士を展開する。現れたのは赤青のオーラを纏った力士、彗星・貴部隊と天山・若部隊!「「若貴航空隊、発艦!」」二人の横綱力士が大空へと飛翔!時津風にとどめを刺そうとした戦艦棲姫の真横に、低空から突っ込む! 5

2014-08-28 20:48:28
劉度 @arther456

「ッ!」気付いた戦艦棲姫が対空機銃を放つが、熟練の航空力士はこれを避けていく。そして天山・若部隊が抱えた酸素米俵を投下!航跡も残さず迫った米俵が、戦艦棲姫の足元で炸裂!「グウッ……!?」痛みを堪えた戦艦棲姫は目を見張った。魚雷の爆発で吹き上がった水飛沫を突き抜けてきた横綱に。 6

2014-08-28 20:51:44
劉度 @arther456

「ドッソイオラァ!」突っ張りでもなく、がっぷり四つでもない。己が身を砕けぬ弾丸と化して頭から突撃する、限られた力士にのみ許された必殺技。「決まり手、鬼無双」大鳳が満足気に呟く。横綱の大質量とオーラは、主砲すら弾き返す戦艦棲姫の胴体を貫いていた。 7

2014-08-28 20:55:02
劉度 @arther456

戦艦棲姫が倒れる。そのまま沈むかと思われたが、歯を食いしばり、立ち上がろうとする様子であった。「まだ生きているのか……なら、私がトドメを」「待った!水中からなんか上がってきとるで!」砲を構えようとした長門だったが、ソナーを窺っていた龍驤に妨げられる。 8

2014-08-28 20:58:21
劉度 @arther456

「何かって何だ!」長門の問いに答えるかのように、戦艦棲姫の背後に巨大な"手"が現れた。「――え?」戦艦棲姫が悲鳴を上げる間もなく、"手"は姫を掴み、海の中に飲み込んだ。後にはただ、凪いだ海面が残るだけだ。「……な、何だ今のは!?」愕然と呟く武蔵に答えるものはいない。 9

2014-08-28 21:01:35
劉度 @arther456

「ひえっ……!?」「どうした、龍驤!」「なんやこれ!?デカすぎる!こりゃまるで……!?」巻雲の叫びは、水の吹き上がる音でかき消された。鯨か、と長門は思ったが、すぐに違うと感じた。あれよりもずっと大きいし、何より、禍々しい声が聞こえる。モエロ、シズメと地獄に誘う声が。 10

2014-08-28 21:04:47
劉度 @arther456

「こいつは……!?」長門が、連合艦隊最後の旗艦が呻く。それだけの代物だった。海中より浮上、そして飛行を開始したのは、全長46m,六発のプロペラを備えた、巨大な飛行機であった。ボロボロの胴体側面には、『亜也虎』と白い文字が書きつけられていた。 11

2014-08-28 21:08:33
劉度 @arther456

長門には見覚えがあった。軍艦の頃、見たこともない巨大な爆撃機が、たった一機で硫黄島の方に飛んでいった。艦娘になった後で聞いた話だが、それは富嶽という爆撃機だったらしい。極秘裏に作られた試作機が、終戦を認めない軍人たちと共に南へ特攻したのだと。 12

2014-08-28 21:11:55
劉度 @arther456

亜也虎は一機だけしかない。だが、足元のうねりは更に続く。亜也虎に引きずられるように、海中から次々と飛行機が上がってくる。「こいつは……ッ!」今度は長門にもすぐに分かった。何度も彼女の頭上を飛び越え、帝都を焼き払った、忘れようにも忘れられない忌々しい空の要塞。 13

2014-08-28 21:15:14
劉度 @arther456

「B-29!」叫ぶが早いか、長門は主砲を一番近いB-29に打ち込んでいた。浮上しようとしていた残骸は四散し、バラバラになって海中に戻る。しかしその間に、一機、また一機と上空へと上がっていく。空を飛ぶ亡霊要塞たちが向かう先は、北。まっすぐ日本を目指している。 14

2014-08-28 21:18:29
劉度 @arther456

「大鳳!雲龍!式神であれを落とせ!奴らはまた、日本を爆撃するつもりだ!」「言われなくても!」再び式神が展開、航空力士たちが亜也虎とB-29の大編隊に追いすがる。その時、B-29のハッチが開き、中から何かが投下された。黒い何かは空中で体勢を整え急加速、航空力士に襲いかかる! 15

2014-08-28 21:21:51
劉度 @arther456

「グワーッ!」力士たちが次々と撃墜される!撃ち込まれたのは機銃弾、ならば投下されたのは艦載機であるのが道理。しかし。「何あれ、見たこと……いや、そんな!?」「どうした、大鳳!」「あの艦載機、深海棲艦のじゃない……P-38ライトニングそっくりだわ!」「ペロハチだと!?」 16

2014-08-28 21:25:08
劉度 @arther456

P-38ライトニング。アメリカ陸軍が大戦初期より使用していた戦闘機である。格闘性能は零戦よりも低いが、最高速度は圧倒しており、これを利用した一撃離脱戦法で日本の航空隊と激闘を繰り広げた。だが、かつての戦闘機をそのまま模した式神を使うなど、これではまるで。 17

2014-08-28 21:28:23
劉度 @arther456

「亜也虎、加速します!」雲龍が叫ぶ。亜也虎もB-29も、零戦より速い。加速されれば追いつけなくなる。「貴!せめて隊長機だけでも!」「ハッキョホー!」大鳳の彗星・貴部隊は亜也虎の直上を取っていた。力士は急降下を開始、空気を震わせながら隕石のように亜也虎へと突っ込んでいく! 18

2014-08-28 21:31:42
劉度 @arther456

だが、急降下する力士に追いすがるものがあった。ペロハチではない。見慣れた銀色の機体、零戦二一型だ。「ドッソイ……?」力士は不審に思う。この式神を使っていた空母は、自分の艦隊にいただろうか?答えが出る前に、零戦の機銃が火を吹き、力士の体を貫いた。 19

2014-08-28 21:35:12
劉度 @arther456

「グワーッ!?」撃たれた力士はきりもみ回転しながら失速!鬼無双は亜也虎を捕らえられず、そのまま虚しく墜ちる。海面が迫る。「ド、ドッソイオラー!」しかし横綱の意地で身を起こし、なんとか海面に叩きつけられることは免れた。傷を抑えながら、力士は大鳳の下へと戻る。 20

2014-08-28 21:38:38
劉度 @arther456

「後方の本隊に連絡!敵の爆撃機編隊がそっちに向かった!一機残らず撃墜してくれ!」既に亜也虎の編隊は、長門たちから遠ざかりつつあった。こうなったら、後方の部隊に任せるしかない。「何よ、どういうことなの、これ……」一方、力士と視界をリンクさせていた大鳳は、震えていた。 21

2014-08-28 21:42:02
劉度 @arther456

「大鳳、しっかりしろ!我々もできるだけ早く戻らねば!」「違うの、そうじゃないのよ!あの隊長機……」自分の見たものが信じられなかった。墜ちる瞬間、亜也虎の背に人影を見た。下半身を亜也虎に埋めたその姿は、異形にもかかわらず深海棲艦ではない。よく知った人。「加賀さんだった」 22

2014-08-28 21:45:20