細馬先生『今日の「あまちゃん」ロケ地ツアーから』

『今日の「あまちゃん」から』の細馬先生が、『あまちゃんサミット』のツアーで初めて「あまちゃん」ロケ地を回られたあとにつぶやかれた一連の感想まとめ。
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細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

「あまちゃん」を見てから初めて久慈に来て、ロケ地のあちこちを拝見した。これは、予想していたよりもずっと楽しく、考えさせられるツアーだった。ドラマの「聖地巡礼」がもたらす感覚というのを見くびっていたが、これは自分のドラマの見方を変更させられるようなショックだった。

2014-09-01 01:17:44
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

たとえば久慈駅前。わたしの頭の中にあった久慈駅前は、アキとユイが大人の監視の目をかいくぐって東京行きのバスに乗るべく大脱走を試みる舞台で、その場面は何度か見直して頭の中に入っているつもりでいた。

2014-09-01 01:20:30
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

ところが、実際の久慈駅前を見ると、ああ、この駐車場のサイズにあの駅前デパートの階上からヒロシが監視していたのだ、そしてアキとユイが右往左往していた駅構内はこんなサイズなのだという、ありありとした臨場感が立ち上がる。

2014-09-01 01:20:37
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

ヒロシの監視の仰角も、それをかいくぐるアキとユイの奮闘も、自分の体もそこに割り入れることができるような、抜き差しならない身体感覚を伴って立ち上がってくるようになる。ドラマで見た記憶を、自らの体で取り戻し、バージョンアップする感じ。

2014-09-01 01:21:15
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

あるいは小袖海岸(袖ヶ浜)の高台。アキが海を見つける高さ、海に向かって下っていく角度、そしてその場所のあちこちに咲いている花を見ることで、海に対する感覚は全く新しく、生々しくなる。わたしは、石碑の位置とそこから見える光景にかなり驚かされた(詳細は各自で)。

2014-09-01 01:21:57
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

いわゆる「あまロス」の人はもちろんだけれど、ドラマを好きでみていて、いまではさほどの喪失感はない、という人も、久慈に一度来てみるといいと思う。自分の記憶が現実の空間によって書き換えられ、確かな臨場感を得るこの感覚は、どんなアミューズメント・パークでも得られない、特別なもの。

2014-09-01 01:22:41
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

とりわけ、「あまちゃん」は制作スタッフが久慈の人々と丁寧に関わったドラマなので、町のあちこちに、このドラマを作ったときの記憶が刻まれており、その記憶を語る人々がいる。誰かとちょっと立ち話をするだけで、それぞれの人の記憶がドラマをさらに重層的にする。

2014-09-01 01:22:15
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

小久慈焼の窯元の方や、琥珀の坑道の方のお話をきくうちに、地元の方々と関わりながらその場やものの力に頭を垂れ、その力を借りてドラマを作るというのは、もしかしたら最良のフィールドワークなのではないかという気がした。

2014-09-01 01:32:15