不知火に落ち度はない その18

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yamoto @yamoto

ほいじゃあ、よいこのみなのしゅう 落ちぬいを始めるとするんじゃ。 ふぇっふぇっふぇ。 #落ちぬい

2014-09-11 21:04:34
yamoto @yamoto

突然だが最悪である。 現在俺は悲しいことに、上着を引っぺがされて鎮守府内をうろついている。 事の発端は、ゲロかけ軍服の洗濯品。 洗いおきにしまってあったアレを俺が着ていくなり、不知火が顔を露骨に歪めたのである。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 21:11:30
yamoto @yamoto

その後の第一声も酷かった。 「司令、臭いです」 お前俺が傷つかないと思ってねえよな不知火。 鼻を当てて嗅いでみたのだが、得に変な臭いはしない。 寧ろふんわりした良い匂いなんだが。 ドーベルマンは染みついたゲロ臭を感知したらしい。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 21:16:04
yamoto @yamoto

「そんなに臭うか? これ」 「ええ。プンプンします。司令は何かかけられでもしましたか?」 あ、やべ。 未成年に酒を飲ませて、急性アルコール中毒にしちゃいました☆ なんていうとんでもない俺の悪事が明らかになってしまう。 一番いい言い訳を言え。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 21:26:01
yamoto @yamoto

「あー、そいやモグリと飲みにいってさー、あいつが正体無くしてなー」 「そうですか」 淡々とメモ取るなよお前。 「ちなみに何時でしょうか?」 「えっと……覚えてねーな。ああ、集会より前」 なるほど、と言い。 不知火はさらにメモを取っていく。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 21:31:04
yamoto @yamoto

「その時の様子を覚えてますか? 店の名前などをどうぞ」 「わり、覚えてねえ」 よし。回避完了。 「まあ、ともかくちょっとそれでぶっかけられてな」 「そうですか。お一人で飲みに?」 あ、いかん。長門が居たとかは言えない。 矛盾が発生する。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 21:39:02
yamoto @yamoto

「おう。あいつの車で飲みに行って、タクシーで帰ってた」 「わかりました。──で、司令、これからプリントアウトする書類がありますのでサインを」 何不知火。 やけに綺麗な笑顔してないかお前? 「えっと。何に?」 「ボルネオ行き申請書です」 はい詰んだ。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 21:44:33
yamoto @yamoto

「……と、言うことがあってだな」 「そう。あの時やっぱりそんなことがあったのね」 口調がすっかり、いつもの仕事モードでなくなってる当たり超こええ。 司令室にあった酒瓶を一気のみしちゃったって事にしたわけだが。 疑いの目は続行中である。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 21:52:30
yamoto @yamoto

「他に隠していることはないのね」 「ないっす」 顔面騎乗の話は、名誉のために伏せてある。 あと、もっと後のことは言わぬが華。 と思ったら不知火さん、俺の服を掴んでこう言ったわけで。 「司令。上着を脱いで」 え、ちょっと。 なにそれ? #不知火に落ち度はない

2014-09-11 21:55:27
yamoto @yamoto

「いいから。脱ぎなさい」 「断る。理由を述べよ」 上半身脱いだ俺と、不知火と。 遠征帰りの連中が見たら何事かって思うじゃん。 「臭いのよ、とても」 どうやらドーベルマンの嗅覚に、これはとても耐え難いものらしい。 艦娘って臭いにここまで敏感だっけか? #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:00:22
yamoto @yamoto

そう言われたんじゃしょうがない。 追求もないことだし、俺は上着を明け渡す。 受け取った不知火は鼻をすんすんと鳴らして、明らかに不快な表情を見せた。 「酷い臭い。洗って来ます」 え。ちょっと待て。 それ洗い替えなんですけどー。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:04:13
yamoto @yamoto

で、結果。俺は上着を奪われて今に至るというわけだ。 帰還した遠征組にぎょっとした顔をされたが、そこは不知火がカバーした。 「司令がはしゃぎすぎて汚したので、不知火が洗っておきました」 ナイスフォローであるが、俺は子供か。 納得されたけどなー。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:07:17
yamoto @yamoto

と、いうわけでゲロ本人に愚痴りたい気分になったのでこうして、いつもの星見の場所まで来てしまった。 今日はどうやら先を越されたらしく、ベンチで空を見上げている浜風が居る。 手にはコーンスープ缶。 おいおい、シーズンは過ぎてるぜ、今。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:11:51
yamoto @yamoto

「よっす。隣失礼するぞ」 「どうぞ。提督……ってどうしたんですかその格好」 「脱衣婆ならぬ、脱衣ドーベルマンにもってかれた」 忌憚なきご意見を飛ばしたところ、浜風はため息をつきこちらを見上げる。 「それは大変ですね」 うん、お前のせいなんだけどな。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:14:40
yamoto @yamoto

ま、俺にも責任の一端はあるんで、どっこいどっこいだ。 コーンスープを同じく買って、ぐいっと一杯。 かー。 暑い時期に飲むのも乙なもんだな。 「提督。おじさんくさいですよそれ」 「くさいどころか、おじさんだっての。三十路だぞ」 言ってて悲しい。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:18:55
yamoto @yamoto

「最近衰えも激しくて困るぜ」 「その身体で言いますか」 何? 浜風お前、俺の身体に興味津々ですか。 鍛えてますからとか言って良い展開なの今? 力こぶとか見せてやったほうがいいのかね。 「何、もっと色々教えてやろうか」 「……え?」 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:24:28
yamoto @yamoto

「い、いやあの……! べ、べべつにそう言うつもりじゃ……な、ないですから!!」 あれ、耳まで赤くなって猛然否定ですか。 しかもベンチの端まで高速移動。 そう言う対応をされると追いたくなるってのが筋だわな。 「ちょっとくらい見せてやるけど?」 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:26:40
yamoto @yamoto

「だ、駄目です! そういうのは外じゃなくて……っ」 「いや、どこでも変わらんと思うけど」 「提督はそうかも知れませんけど! だ、駄目ですって……」 なんで浜風兎みたいになってんの? だんだん語尾小さくなってるし。 Whyの嵐が頭を駆けめぐっている。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:33:32
yamoto @yamoto

そして、はた、と気づく。 あ、これあかん。 事情を知らないと、部下に無理矢理迫ってるエロ提督に見える。 フー、危ないところだったぜ。 「まあ、冗談はさておき」 「冗談だったんですか……」 いや、本気だったけど。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:38:19
yamoto @yamoto

「最近、調子どうよ?」 「し・り・ま・せ・ん」 あれー。 会話がいきなり叩き潰されましたよー? ウイットに富んだ会話のきっかけを小足で止められましたよー? 最近の若い子の考えおじさんにはわからんちんですよ。 コロコロ言うこと変わるんだもの。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:41:54
yamoto @yamoto

「そういう対応はおじさん傷つくぞ」 「自分がやってたことをもう一度考えてから喋ってください」 えー。まあ、わがまま嬢ちゃんに付き合うしかないか。 「まあ、傍目から見れば大変いかん光景だとは思う」 「傍目で済む話じゃないでしょう? ……もう」 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:45:02
yamoto @yamoto

「いいです。また考えなしにやったんでしょうから」 何か許された。これでいいのだろうか。 まあ、いいのか。 俺は煙草を口にくわえて、一服付けようとする。 すると隣から火が差し出される。 「お、こりゃどうも」 マッチの火。まだ残ってたんだなアレ。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:50:01
yamoto @yamoto

「それで、そちらこそどうなんですか。また、不知火さんに苦労をかけてるんですか?」 「まるで俺があいつに頼りっきりみたいじゃないか」 「そう見えるから言ってるんです。噂じゃ彼女なしでは回らないそうですよ?」 「失敬な。どこまで無能と思われてんだか」 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:55:06
yamoto @yamoto

「何なら秘書艦を変えてみてはどうですか? 例えばその……」 「お前に頼むとか?」 ちょっと意地の悪いことを言ってみよう。 「!? ……っい、いえ、あくまでその、例……で」 「結構大変だぞー。秘書艦の仕事は山ほどあるからな」 流石に狼狽えるか。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 22:58:49
yamoto @yamoto

「そ、それぐらいなら……こなせますっ」 「ほーう。じゃあ朝俺を起こすところから始めて貰おうかなー」 しししし、と笑いながら言ってみる。 それがいかんかったらしい。 「し、不知火さんにそこまでやらせてるんですか!?」 浜風、上官の胸ぐら掴まない。 #不知火に落ち度はない

2014-09-11 23:03:23