手塚ジュニアによる宮崎駿への反駁について

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It happens sometimes @ElementaryGard

手塚ジュニアが自著のなかで宮崎駿を揶揄しています。名指しにこそしていないものの、読めばわかる。平成元年に手塚が亡くなり、その追悼メッセージのなかで宮崎が、アニメ作家そして経営者としての手塚をけなし倒したことは有名。それに息子が噛みついたのです。

2014-09-16 22:50:34
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『アトム』がなければ今のアニメ大国日本はなかったじゃないか。これほど多彩なアニメ作品が生まれているのは、父がリミテッド技法を編み出し、マーチャンダイジングで赤字を埋めるやり方を確立させたからだ。その恩恵にあずかっている分際で父を批判するとは何事か、と。

2014-09-16 22:52:04
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手塚ジュニアは残念ながら間違っています。たしかに手塚を恩人とするアニメの才能は大勢います。しかしながらその発言を真に受けるわけにはいかない。あのひとたちは、私に言わせれば外来魚。本来の生態系にはいないはずの種が、手塚によって持ち込まれ、固有種を食い荒らし、すべてを変えてしまった。

2014-09-16 22:53:53
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食い荒らして、新生態系の主勢力となった者が、そのルーツである手塚を否定するわけがない。

2014-09-16 22:55:47
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これも過去に何度かした話ですが、その昔、今の天皇が皇太子だった頃、アメリカから繁殖性の高い魚を持ち帰り、それが日本各地の湖に放されました。戦時中の食糧不足の記憶が根強かった頃です。タンパク質補給の強力な切り札として持ち込まれたのがこのブルーギルでした。

2014-09-16 22:57:32
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そしてどうなったか。この魚は確かにタイに似て美味なのですが、骨ばっていて料理が難しく、あまり捕られなかった。数を増し、琵琶湖をはじめ各地で固有種を食べ荒らし、生態系を変えてしまった。後に天皇はあるスピーチのなかでそのことを悔いている旨を発言。科学者の良心からでしょう。

2014-09-16 22:59:23
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日本の皇室はタイにもある魚を送っています。やはりタンパク質補給の切り札として。現在はタイの名物料理となり、皇室への強い敬意のもとにさえなっているそうです。日本と正反対。

2014-09-16 23:00:46
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ある国では害虫ならぬ害魚として嫌われ、ある国では益をもたらす魚としてありがたがられる…結局、人間の都合なのです害とか益とかは。

2014-09-16 23:02:06
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日本のアニメが多彩といっても、ほとんどはまんが文化を母胎とする、つまりDNAを調べると種としては非常に偏っているわけです。

2014-09-16 23:03:55
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マーチャンダイジングがどうこうという話も正しくないことは、これまでの私の論説を読んでいただいた方ならわかるはずです。togetterにまとめてあります。

2014-09-16 23:04:48
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手塚ジュニアによる宮崎への反駁は、原爆投下があったからこそ戦争が早く終わったとか、大東亜戦争のおかげでアジアは独立に目覚めたとか、その類の極論にどこか似ているように思います。

2014-09-16 23:06:59
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『ナウシカ』で描かれる生態系改変のイメージは、手塚によって始まってしまったアニメ業界の変動を体で味わった者ならではのものを感じます。 pic.twitter.com/ZX88J9gNTr

2014-09-16 23:12:45
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映画で圧倒的存在感をみせた王蟲が、粘菌に飲み込まれていきます。 pic.twitter.com/QE86CgCaK1

2014-09-16 23:15:46
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一度はパニックに陥るナウシカ。ですが残った理性でその背後にあるたくらみに気が付く。王蟲は自分たちの体をあえて粘菌に食べさせ、やがて体についた胞子が粘菌のなかで目を覚まし、新腐海を作って粘菌をそのなかに迎え入れて融合させる… pic.twitter.com/7cN06IyMmF

2014-09-16 23:18:41
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以前、夏目房之介ゼミで語ったとき、この話を少ししました。手塚が召喚してしまった超巨大粘菌に宮崎も一度は飲み込まれたが、それで終わらず内側から再発芽して今度は粘菌を自分が飲み込んでさらに進化した。そういう自負があるからこそ手塚を正面切って批判できたのではないか、と。

2014-09-16 23:21:08
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手塚がまき散らした超リミテッド技法をしっかり消化しつつ、そこからついに突き抜けることはなかった冨野や杉井や出崎やりん等と違い、映画に再進化。その成果のひとつが皮肉にもアニメ版『ナウシカ』。リミテッドをいかに宮崎が使いこなしているかは片山、庵野のコメンタリーを聞けばわかる。

2014-09-16 23:24:08
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マルクス的社会進化論が幻であることを身をもって思い知った宮崎はその後エコロジーに系統。そして森林生態系に着目。高校の生物でも習うよね。あのイメージで人類の希望を描き直すことをもくろんだ。それが『ナウシカ』です。私の『宮崎駿の時代』のなかでも論じたとおりです。

2014-09-16 23:26:34
It happens sometimes @ElementaryGard

あれ、アニメ産業の変異、偏移のイメージもあるんですよきっと。

2014-09-16 23:27:18
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手塚がアニメの『ナウシカ』を観て嫉妬で怒り猛ったのは有名。その数年後、なんと彼も森林生態系を題材にした中編アニメを制作。『森の伝説』。ディズニーの『白雪姫』に出てくる七人のこびとに酷似したキャラクターが「森を切るな」と訴えるも、ヒトラーみたいな開拓者が機械で切り倒していく。

2014-09-16 23:30:10
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フルアニメーションの森を、テレビ用リミテッドアニメが食い散らしていくという寓話です。

2014-09-16 23:30:51
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手塚も薄々認めていたような気がします。自分が生態系を破壊した張本人なのだと。

2014-09-16 23:31:25
It happens sometimes @ElementaryGard

面白いのはさらにその数年後に、今度は宮崎の盟友・高畑勲がやはり森を題材にした『平成狸合戦ぽんぽこ』を手掛けていることです。多磨の森を守ろうと狸たちが立ち上がる。しかしながら結束は次第に崩壊し、狸たちは人間の姿で人間社会にひっそり生きていく。

2014-09-16 23:33:19
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あの狸たちは60年代東映動画の労働組合メンバーの似姿だそうです。

2014-09-16 23:33:57
It happens sometimes @ElementaryGard

森林生態系になぞらえて、宮崎、手塚、高畑という三人の天才が、同じイメージを描こうとしていたのは興味深いです。

2014-09-16 23:35:50
It happens sometimes @ElementaryGard

天才の頭脳はしょせん天才にしかわからない。少なくとも手塚ジュニアはここまで私が語ったことを何もわかっていない、とみます。天才の息子必ずしも天才ならず。

2014-09-16 23:37:49