茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1326回【100円玉で買える国宝】連続ツイート
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仕事で、栃木市に行った。浅草で地下鉄から乗り換えるとき、地下街のお店に、小津安二郎監督の『東京物語』や『晩春』、『麦秋』、『秋刀魚の味』といった代表作のDVDが売られていた。廉価版らしく、おどろくほど安かった。100円玉何枚かで、ひとつの作品を買うことができる。
2014-09-17 06:47:17映画が制作されてから、年月が経ち、著作権の保護が切れた、ということがあるのだろうか? 時々、とても安い小津映画のDVDを見かけることがある。松竹から出ている正規版の方が、画質は良いのだろうが、いずれにせよ、小津安二郎作品を、とても手軽に見ることができる時代になった。
2014-09-17 06:48:28ところで、今年の秋は「国宝」ブームのようだ。複数の雑誌で特集が組まれ、国宝をうたった展覧会も開催されている。「国宝」に選定されるような美術品は、当然のことながら、敷居が高い。個人が所有している国宝も数多くあるが、それに値段をつけるとしたら、いくらになるのだろう。
2014-09-17 06:49:40仏像など、そもそもお金に換算できない、したくない国宝も多い。芸術の秋という言い方もある。次第に涼しく、気持ちのよい気候になるこの季節、お近くの美術館や、お寺さんに行って、国宝を鑑賞するというのは、とてもよいことだと思う。オススメです。
2014-09-17 06:51:05それで、小津安二郎さんの映画のDVDが、今や100円玉何枚かで売られているということに戻る。小津さんの映画は、その価値、見た時に受ける感動、芸術性において、間違いなく「国宝」級だと思う。フィルムの上の記録芸術は、残念ながらまだ「国宝」の対象にはなっていないけれども、
2014-09-17 06:52:22日本の文化の伝統の中で、あるいは、外国から日本を見た時の、価値のあり方、ということを考えた時、日本に小津安二郎の映画があって本当に良かった、もし小津作品がなかったら、日本映画という景色も、まったく違ったものになってしまっていたろう、と思うのである。まさに「国宝」にふさわしい。
2014-09-17 06:54:10「国宝」はかけがえのないものだが、先に書いたようになかなか敷居が高く、またきわめて高価であって個人で持つことなど普通は思いもよらぬ。その点、小津安二郎監督の映画は、100円玉何枚かで買える、しかもその複製を「所有」できる、なんとありがたい「国宝」なのかと思う。
2014-09-17 06:55:22原節子さんがこの地上に生きていらっしゃることは、私にとって心の支えの一つである。小津安二郎監督の下、松竹撮影所で、原節子さん、笠智衆さんをはじめとする名優たち、スタッフたちが心血を注いだ映画が、時代が流れて、100円玉何枚かのDVDになっている。ふしぎで、ありがたいことと思う。
2014-09-17 06:56:59