#完全ノープラン艦これ与太話 【ディープ・ナイト・レクイエム】 #1～#2

春魔解丼 @vespiking

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……「ハァーッ！ハァーッ！」アフターマンは闇夜の無人ビル街をひたすらに駆け抜けた。(((畜生！俺はニンジャだぞ！？)))壁を走り、屋上を跳び、だがしかし、彼に安息は訪れない。常に恐怖が背後にあった。だがそれは幻覚だ。本当の恐怖は、既に彼を追い抜いていたのだから。 #KZNPLN

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びゅう、と一陣の風が吹き、アフターマンの顔を撫でる。彼は立ち止まり、状況判断に努めた。極度のニンジャアドレナリン分泌により、前方などまるで見えていなかった。ニューロンを叱咤し、視覚情報をチューンする。眼前に、恐るべき異形の尻尾を持つ深海棲艦が着地したのが見えた。 #KZNPLN

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全身の血が凍り付く。頭部を覆うホッカムリ・メンポ。ギラリと輝く牙。すべてが彼に、食物連鎖の上下を物語っていた。「ドーモォ！アフターマン＝サン！レクイエムです！つれねーなァもっと遊ぼうぜ！」襲撃者はわざとらしく敬礼し（様式がでたらめだ）、挑発的にアイサツした。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ディープ・ナイト・レクイエム】 #1 #KZNPLN

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――数日前。キョート府、マイヅル・シティ。 #KZNPLN

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トラディショナルな奥ゆかしさが支配し、暗黙のモラルが鉄の掟めいて秩序を維持する古風な街並み。ここはキョート府、マイヅル・シティ。かつてエンペラーが君臨した過去の帝都も、現在は些か状況が変わっている。特に郊外ともなれば、尚の事だ。 #KZNPLN

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四大鎮守府と称されるマイヅル鎮守府を中心に、奥ゆかしいオイラン化粧の剥がれた、軍事テック工場郡がいかめしく立ち並ぶ。工場区画とマイヅル鎮守府はキョート川を隔て、遠く離れた異国めいて奥ゆかしいマイヅルの古都から隔離される。キョート川は観光客と住民との軍事境界線だ。 #KZNPLN

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軍事境界線を守護するバリケードめいて、またはキョートの汚点を隠す遮蔽物めいて、大聖堂マイヅル・カテドラルは白く荘厳なシルエットを夜の暗雲に浮かべていた。時刻はウシミツ・アワー。時を告げる美しい鐘の音が、夜の静寂を不気味に浄化していく。 #KZNPLN

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｢ハァ……ハァ……助け、ンアーッ！｣工場区画の川辺で、対岸へ助けを求める深海棲艦の必死の叫びが、無慈悲なるカテドラルの背に虚しく吸い込まれる。重傷の深海重巡洋艦はフラフラと廃工場の壁に寄りかかり、背に砲撃を受け、声もなく絶命した。 #KZNPLN

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｢ハァーッ！ハァーッ！……ヒヒヒ、調子に乗るから悪いんだ、重巡洋艦だからって……ヒヒヒ｣砲撃者は重巡洋艦の死体にひたひたと忍び寄り、これを検めた。重い両腕の艤装を投げ出し、白く煽情的な肉体がだらりと崩れる。砲撃者は殺害重巡洋艦にのしかかり、ナムサン……。 #KZNPLN

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彼の所業についての克明な描写は、どうか省略をお許し願いたい。重巡洋艦にひとしきり欲望を吐き出した砲撃者……駆逐イ級は、ゲコクジョの高揚感にほだされ、駆け出した。常人の三倍近い脚力で。……脚力？今、脚力と言ったか？おお、ナムサン！見よ！ #KZNPLN

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彼には脚があった。突然変異により、この駆逐イ級は脚力を得たのだ。そして彼にはもうひとつ、無視できぬ異変が起きていた。彼は……ニンジャなのだ。ニンジャの……駆逐イ級後期型！ #KZNPLN

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彼の名はアフターマン。スガモインフェルノより湧き出した一介の駆逐イ級でしかなかった彼は、ある日突如、ニンジャとなった。同時に突然変異を起こし、両脚を得た。彼は殺戮遊技場のヒエラルキー最下層から一転。狩られる側から、狩る側へと一夜にして成り上がった。 #KZNPLN

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彼はスガモ殺戮遊技場でゲコクジョし、アワレな重巡洋艦を追いすがった。(((あの女！駆逐艦の俺をバカにしてやがったんだ！ゲコクジョしてやる！)))それが真実であったか、彼の妄想であったのかは、最早定かではない。重要なのは、彼女が『抜け道』を知っていた事だ。 #KZNPLN

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異界スガモインフェルノには、『正門』たるスガモ重犯罪刑務所の他、外界とインフェルノを繋ぐいくつかの『抜け道』が存在する――真偽の怪しい噂であったが、彼は今宵、それが真実であることを知った。重巡洋艦はインフェルノを脱出し、マイヅルに逃げ込み、そこで殺された。 #KZNPLN

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(((ヤバイな……もしかして俺は無敵なのでは？)))アフターマンは高揚感にほだされ、マイヅルの闇夜を駆け抜けた。――彼は気付いていなかった。よもや、自らの後にもう1隻、探し求めていた『抜け道』を経て、マイヅルの闇へと解き放たれた悪魔がいようとは。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ディープ・ナイト・レクイエム】 #1終わり。 #2へ続く。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ディープ・ナイト・レクイエム】 #2 #KZNPLN

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魔城めいて聳えるマイヅル鎮守府を取り囲み、吐き出す排ガスで昼夜を覆う鋼の不夜城。日本海を臨む人工島に寄せ集めた工業区画と、マイヅル・シティとを分つキョート川は、さながらオヒガンと現世を隔てるサンズ・リバーめいて、境界線の様相を呈していた。 #KZNPLN

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対岸には、偉大なる救済と永劫の断罪を司る大聖堂マイヅル・カテドラルがエンマ・ニンジャめいて聳え、工業区画に背を向ける。隠せぬ暗部に目を向けぬオイラン化粧めいたマイヅル市街地と、果たしてどちらがオヒガンであろうか。 #KZNPLN

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ヤタガラス式羅針盤の原理を転用した重工業電磁エアロックにより汚染大気は切り取られ、降りしきる重金属酸性雨はサンズ・リバーを渡らない。暗く陰鬱な黒の世界は、黒の肌を持つ彼女らを覆い隠すには都合が良かった。 #KZNPLN

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今宵の重金属酸性雨は普段よりも弱い。しとしとと垂れる酸の雨中を、青錆びた素肌を大きく晒したレインコートの女が滑るように歩く。地に足はついておらず、大顎と戦艦砲を備えた異形の尻尾が奴隷蛇めいて全身を支える。彼女の異様な外見を、咎める者など此岸には存在せず。 #KZNPLN

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マイヅル鎮守府は大日本帝国有数の深海棲艦泊地と揶揄される。それほどに、この不夜城に隠れ住まう深海棲艦は多い。路地を一本入れば、働き疲れた労働者艦娘の憂さ晴らしにファック＆サヨナラされた深海棲艦などが見られ、残骸回収の日雇いアルバイトは工場労働者よりも待遇が良い。 #KZNPLN