茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第1328回「行動変人」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート１３２８回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、今朝、びっくりしたなあ。もう。

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今朝、走っていたら、びっくりした。住宅街の中の公園で、おじさんが「しこ」を踏んでいたのだ。しかも、ハンパな踏み方じゃない。足を振り上げ、地面に向かって、「バーン」「パーン」と、びっくりするほど大きな、乾いた爆音を立てて足を踏み下ろしていた。一目で、アマじゃないとわかった。

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ぼくは動揺して、走りながらさりげなく「しこ踏み」おじさんに近づいて、脇目で観察した。まわしなどしていなくて、普通のトレーナーをつけている。かと思ったら、また「パーン」としこを踏んだ。１５０キロの剛速球が、キャッチャーミットに収まったような、そんな音がした。

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あのおじさんは、何だったのだろう。体型は、そんなに太っている、というわけではなくて、むしろ、筋肉質の、ひきしまったからだをしていた。昔相撲部だったのが、選手は引退して、今はコーチをしているとか。とにかく、ただものではないしこ踏みおじさんを、朝から見てしまった。

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性格とか、考えとかいうんじゃなくて、行動があからさまに変わっている人を、「行動変人」と名付けている。今朝のしこ踏みおじさんは、ぼくの「行動変人」の思い出のアルバムに、鮮やかな一枚をつけくわえた。また、あのおじさんに会える日が来るとしたら、ぼくの人生はファンタスティックだ。

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「行動変人」の心のアルバムをめくってみよう。小学校の頃、近所に、「ナンミョウホウレンゲイキョウおじさん」がいた。道で出会うと、いきなり、こっちに向かって合掌して、「おにいさん、ナンキョウホウレンゲイキョウ」と言って去っていくのだ。あれは、実に、ありがたいというか、コワかった。

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「行動変人」のアルバムは続く。大学生の頃、公園を走っていると、林のかたすみに、いつも自転車で来て、何か飲みものを口に含み、上を見上げて「ガラガラガラ」とうがいをしながら発声練習をするおじさんがいた。あれは、実に、ふしぎな光景であった。あのおじさん、元気かしら。

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「行動変人」の多くは、世間の片隅で生きているのだろうけれども、時にブレークすることもある。昔、電車の中で、冗談か何かを言ったあと、「なんちゃって」という、「なんちゃっておじさん」がフォーカスされていたが、あれは、たまたま発見されてスポットライトを浴びたのだろう。

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大阪には、いきなり「アメちゃんど〜お」というおばさんがいるとは以前から伝説で聞いていたが、数年前、ひとり通天閣の近くを歩いているときに、ほんとうに「アメちゃんど〜お」と言ってアメをくれるおばさんがいて、びっくりした。食べてみたら、普通に甘くておいしいアメであった。

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「アメちゃんど〜お」の場合、すでに、そのような「ミーム」が世間に流通していて、通天閣の近くでぼくにアメをくれたおばさんも、そのような「ミーム」に影響されていたのかもしれない。そのような意味では、あれが、原発性の「行動変人」であったかどうかは、確認することはできない。

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「行動変人」でいちばんうれしいのは、「これはオリジナルだ」「まだ世間に知られていない！」とほぼ確信できるときであろう。街を走っていると、案外そのような「行動変人」の「原種」に出会うことも多い。あなたは、どのような「行動変人」を目撃したことがありますか？

茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート１３２８回、「行動変人」をテーマに、１０のツイートをお届けしました。