茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1333回【伝説の日食仙人】連続ツイート
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台風が、また、南の海上から日本に近づいてきている。大きくカーブを描いて、どうやら、今回は、本州にかなり接近しそうである。不確定要素も大きいものの、その頃新幹線や飛行機の移動と重なったら、困るなと思う。ところで、科学の発達によって、「ああ、台風が来る」とわかるようになった。
2014-10-02 07:19:33昔の人は、そうではなかった。秋晴れの空が広がっていると思ったら、次第に風が強くなってきて、気がつくと、猛烈な突風が吹いているのである。昔は、台風は「野分」(のわき)などと呼んだようだが、その頃は、この「野分」が、まさかはるか南海上で生まれて日本に来るなど思っていなかったろう。
2014-10-02 07:21:51現象学的に言えば、昔の「野分」と、今の「台風」は違うのである。昔の「野分」は、とにかく、穏やかな秋の空の中、時折やってくる謎の風であって、その気配のとらえかたや、前兆の認識も、科学が発達して衛星写真が手に入る現在とは、全く違っていたことだろう。
2014-10-02 07:22:51自然現象が予想できるようになることは科学の勝利だが、一方でかつてはあった体験が消える。日食や月食も、今は発生日時が予想できるが、かつて、突然皆既日食に襲われたひとたちは本当に驚いたろうし、その体験の「味」のようなものは、天文カレンダーを手にした私たちは体験できない。
2014-10-02 07:24:10もっとも、現代でも、皆既日食が起こることを事前に全く知らないで、当日、たまたま出くわしてしまった、という「仙人」のような人もいるかもしれない。そのような「日食仙人」がもしいたら、その体験を聞いてみたいなと思う。
2014-10-02 07:25:09より複雑な、日常の事象については、私たちはまだ不意打ちに出くわす。神さまの目から見たら、ある人が意外な発言をするとか、思わぬアクシデントに見舞われるといったことはすべてお見通しなのかもしれないが、私たちはかつての日食や野分のように、驚き、右往左往する。
2014-10-02 07:26:12予測可能性と、その体験の意外な味わいの間には、明らかにトレードオフがあるのだから、私たちは、せいぜい、まだ科学では予想できない事象との出会いを、受け入れ、楽しむことを心がけるべきなのだろう。
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