ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10100245:メニイ・オア・ワン #7

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ:メニイ・オア・ワン】#7

2014-10-08 21:55:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

落下速度が増すとともに、螺旋状の回転もまた、際限無く増してゆく。ジャスティスは早朝のネオサイタマの遠景を見る。都市の各所の高い位置にはためくのは、「忍」「殺」の旗たち。最悪だ……この街は彼女の物だ。築き上げてきた心地よい庭だ。それが心無い者の手によって、無残に蹂躙されたのだ。 1

2014-10-08 21:57:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女は生存の可能性を探る。セイギオオキイタテは変わらず空にある。その冷たい威容!あれこそが秩序の象徴だ。彼女はIRC通信機で自動援護射撃指示を出そうとする。ザリザリザリ……ナムサン、落下高速回転の熱、ニンジャスレイヤーの発する熱によって、彼女のアーマーは機能停止に至っていた。 2

2014-10-08 22:00:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

然り、熱だ。苦しい。ジャスティスは落下の先を見る。タマ・リバーか。植林区域か。否。堅い大地だ。彼女は悲鳴をあげようとする。乾く!正義!秩序!インガオホー!ニンジャスレイヤーの叫び!「イイイイイイヤアアアーッ!」彼女の身体は脳天から大地に衝突し、白く吹き飛ぶ、「サヨナラ!」 3

2014-10-08 22:09:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRATOOOOOOOM……BOOOOOM……ZGGGGGTTTTTT……流星めいたアラバマオトシの着弾点を中心に、突風が半径数百フィートにわたって拡散した。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは飛び離れ、たった今コンクリートに生じた小クレーターの淵に、片膝を突いて着地した。 4

2014-10-08 22:12:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは肩で呼吸し、内なる衝撃に耐える。アラバマオトシを用いるタツジンは、地面との衝突瞬間に落下ダメージの全てを敵の身体へ流し込み、逃れる。さもなくば敵もろともに死あるのみ。エンシェント・ウケミを必要不可欠とする奥義だ。彼はやってのけた。それでもこの高度は、堪えた。5

2014-10-08 22:16:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アマクダリ・セクト「12人」の一人、ハイデッカー最高司令官……ネオサイタマを独善的な警察組織で管理支配せんとしたニンジャ、ジャスティスは、こうして死んだ。だがセイギオオキイタテはいまだ空にあり、ハイデッカーも、なによりアマクダリ・セクトも健在である。 6

2014-10-08 22:22:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

陽炎のなか、ニンジャスレイヤーは記憶をたぐるように、おぼつかないチャドー呼吸を始める。「スゥーッ。ハァーッ」歪みかかったメンポがミシミシと音を立てて軋み、形状を戻してゆく。休まねば。少しでも。彼は落下地点周辺を確認する。雨に強い合金アート彫像の数々。寂れた屋外展示場の一角。7

2014-10-08 22:31:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は目を閉じる。今すぐこの場を離れたがよい。いたずらに時を浪費すれば、忍殺旗のあれ程の大仕掛けを用いたカモフラージュもその効力を発揮できぬ。だが……もう数分、否、もう数十秒でよい。もう数十秒だけ、時間を……。やがて、エンジン音が近づく。ここまでクルマで入ってきた。そして制動音。8

2014-10-08 22:38:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

特徴的なアイドリング音。そしてドアが開き、完全に防音された車内のBGMが外気に流れ出る。「ブッダコスモス……ユーアーインザスペース……」ニンジャスレイヤーは目を開いた。ナンシー・リーが手を差し出した。「行きましょう」 9

2014-10-08 22:39:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは車内ザシキに滑り込んだ。武装霊柩車ネズミハヤイDⅢはセイギオオキイタテへフックロープで跳んだニンジャスレイヤーと空中で別れたのち、安全地点まで移動、ノボセ老を降ろし、戻ってきたのだ。時間表示は10106010。「で。どっちに行くね」デッドムーンが尋ねた。10

2014-10-08 22:49:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ナビをする」ナンシーはデッドムーンに言うと、ニンジャスレイヤーにパック・スシを差し出した。「少しでも休んで」ニンジャスレイヤーは頷き、スシを素早く食すと、メディテーションに没入した。スペイシーなBGM。「……ユーアーインザスペース……」「瞑想にもいい」デッドムーンが呟いた。11

2014-10-08 22:52:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カコーン……。金箔塗りシシオドシがゼンめいた音をハナミ会場に響かせると、参加者達は奥ゆかしく目で会話し、さざなみめいて立ち上がった。厳粛に規定された「ひと段落」がつき、初めての休憩時間が一同に与えられる。老齢の閣僚には、あからさまに顔色優れぬものもいる。当然であろう。 13

2014-10-08 23:09:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

儀式中、中座は勿論、姿勢をいたずらに崩すことすら不作法の誹りを免れない。読者の皆さんの中にハナミをご存知の方はおられようか?失礼ながら、おそらくそれはレジャーとしてのものであろう。政府中枢、カスミガセキ・ジグラットにおいて行われるのは、決して生半に扱ってはならぬ古代儀式だ。14

2014-10-08 23:15:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

閣僚、政府高官達が、SPに付き添われ、各々の休憩室に向かう。ハナミの間を出るなり、酸素ボンベやストレッチャーを必要とする者もいる。「アイエエエ!」立ち上がる際にふらつき、床に手をついて四つん這いになったのは、閣僚のひとり、タムノガオカ=サンだ。ナムサン……彼の辞任は決まった。15

2014-10-08 23:21:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

戦場めいて壮絶な休憩時間にあって、アガメムノンの怜悧な美貌も、身にまとうモンツキの着付けも、全く崩れていない。彼はニンジャなのだ。悠々と歩き進むその姿を、モータル達はなかば呆然としながら見つめる。彼らはゼウスの面影を、遺伝子に刻まれた恐怖記憶を、ニューロンによぎらせたか……。16

2014-10-08 23:27:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

今回の儀式の主役であるアガメムノンには専用のトコノマがあてがわれている。とはいえ、悠々とくつろぐ時間など、ありはしない。彼はタタミの上で正座し、目の前の掛け軸を見据える。彼は待った。カスミガセキ・ジグラットのこのフロアは完全なオフライン。強固な電磁的閉鎖環境に置かれている。17

2014-10-08 23:32:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「シバラク」フスマの向こうで囁く声があった。アガメムノンは答えた。「入れ」染み入るようにトコノマにエントリーしたのは、ニンジャである。SPと同じダークスーツ姿は、後ろ手にフスマを閉めた時、既にニンジャ装束になっている。「ドーモ。スクラピュラスエミッサリーです」18

2014-10-08 23:41:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。スクラピュラスエミッサリー=サン」アガメムノンは低く言った。「……つつがないか?」彼はスクラピュラスエミッサリーを横目で見る。伝令ニンジャは奥ゆかしく目を伏せる。アガメムノンは既に予期している。ニンジャスレイヤーがこの機に何らかの行動を起こさぬはずはないからだ。19

2014-10-08 23:44:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スクラピュラスエミッサリーの緊張が、畏怖が、空気中の微弱な電気の揺れを通じてアガメムノンに伝わってくる。「……ふむ。やはり事が起きたか」「……は」「お前の罪ではない。非合理な恐れを抱くな。時間の無駄だからな」「……は!」スクラピュラスエミッサリーは目を上げた。「申し上げます」20

2014-10-08 23:49:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」アガメムノンは、やや苛立つ。伝令ニンジャがなおも躊躇うからだ。「話すがいい」「は。……マジェスティ=サン、ブラックロータス=サン、メフィストフェレス=サン、ジャスティス=サンが、ニンジャスレイヤーによって殺害されました」「ほう」「殺害……されました」 21

2014-10-08 23:57:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スクラピュラスエミッサリーは唾を飲み、言葉を継いだ。「彼らの殺害に伴い、その護衛のニンジャであるサンダーローニン、ストームホーク……」「戦士の名は後でいい」「は。……マジェスティ=サンはTV出演中に殺害されております。さほど時を経ずして、ブラックロータス=サンが」「……」22

2014-10-09 00:00:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この時点で非常事態プロトコルが発動し、ニンジャスレイヤー、即ちフジキド・ケンジの指名手配が行われました。ニンジャスレイヤーはメフィストフェレス=サンの邸宅に移動し、彼を殺害。ダイザキ・トウゴが”12人”の1人であるという事実、その居場所を事前に把握していた事は確実です」 23

2014-10-09 00:04:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ロケット計画に紐付けたか」アガメムノンは淡々としていた。「続けろ」「は。……厳戒態勢を指揮するラオモト=サンはニンジャスレイヤーに対して手を打っておりますが……現在のところ……スミマセン、続けます。スパルタカス=サンが追跡を開始。アクシスの精鋭が各”12人”の臨時の護衛に」24

2014-10-09 00:08:29