半可通さんによる『的川泰宣先生「はやぶさ物語」講演メモ』
今日の的川先生講演、忘れないうちに印象的な話だけ書き留めておこう。技術的なことはわからないし、既にあちこちで知ることができるので、エピソード的なものだけを拾っておく。
2010-11-27 23:10:21的川先生「今の子どもは死を身近で見たことがない。しかし、はやぶさを実のお兄さんのように思っている子が全国にいて、再突入の映像を見るたびに、自分の兄弟が死んだように悲しんだそうだ。」
2010-11-27 23:12:29的川先生「はやぶさの命名は、小惑星イトカワの命名より先。猛禽類のハヤブサの挙動から取った。もちろん糸川博士設計の一式戦闘機隼との関係も頭になかったわけではない」
2010-11-27 23:14:51的川先生「打ち上げ後すぐ、リアクションホイールが一基故障した。川口君がダメだと思ったとしたらまず一回目はこの時だろう。」(むろん川口プロジェクトマネージャーのこと。的川先生は川口先生と「川口君」と呼ぶ……hankatsuu注)
2010-11-27 23:17:14的川先生「イトカワの観測結果がScienceを独占。編集長から『独占してくださってありがとう』と、ちょっと皮肉っぽい手紙が来た」(hankasuu感想……皮肉だったんだ?!)
2010-11-27 23:18:42的川先生「一回目のタッチダウンの時、川口君は記者会見に行きたがらなかった。二回目のタッチダウンをきちんとやってから行きたいと言った。」
2010-11-27 23:19:53的川先生「タッチダウンのオペレーションは30代の若い人。事前に何度か訓練して習熟。こういう技術は世界でも日本しかない。1年間本を読んだってダメ。現場が腕を鍛えた。」
2010-11-27 23:21:18的川先生「サンプル採取の弾丸を撃つ時、画面にWPCという表示が出る。これが出たとき、ふだん静かでものを言わない橋本君が『出たー!!』と言った。川口君は『命令が出ただけで本当に弾丸を撃っているか、後で調べないとわからない』と冷静。でも顔はほころんでいた」
2010-11-27 23:27:00的川先生「生キセノンガスの噴射について、まず國中君に相談。夜9時に携帯に電話をかけた。彼は当時団地の役員をしていた。『すぐ来てくれ』『今団地の役員会の最中なんですよ』『役員会より大事な用だから』」
2010-11-27 23:29:20的川先生「國中君にキセノンガスを使おうと言ったら、國中『いやです』 的川『なぜ』 國中『キセノンって高いんですよね……』何度かキセノンを吹いて、翌日 國中『あー今日は2万円使っちゃった』」
2010-11-27 23:31:58的川先生「別件で文科省の役人さんとばったり会った。文科省の人『はやぶさ、行方不明になったんだって?追跡のお金もういらないよね。』 的川『もうちょっと待って下さい』 文科省の人『行方不明になってみつかった探査機、一機もないと聞いてるけど』 的川(つまんないことだけよく知ってるな)
2010-11-27 23:35:18的川先生、お役人にオイラーの式を見せ、浅田真央ちゃんにたとえて回転時の慣性モーメントの話を説明。的川「めちゃめちゃな回転をしててもいつかは必ず安定するんです」 文科省の人「式はわかんないけど、言ってることはわかった」 そして一番聞かれたくない質問が。
2010-11-27 23:37:19文科省の人「で、いつなの?(はやぶさの回転が安定するのは)」 的川先生、確率の問題だと答え、急いで川口先生にはじき出してもらった。1年以内に安定する確率61%と出た。 それを聞いた文科省の人の表情を見て、1年以内に回転が戻らなければ予算切られるな、という感触を得た。
2010-11-27 23:39:35はやぶさとの通信が回復した後、1bit 通信開始。のぞみのピンチで得たノウハウ。的川先生「小さい男の子を持ってるお母さんは、1bit 通信 やってらっしゃいますよね。女の子はよくしゃべるけど男の子はしゃべらないから」
2010-11-27 23:41:20的川先生「(お母さんと小さい男の子の 1bit 通信。男の子が小学校から帰ってきて) 母「宿題あるの?」 息子「うん」 母「国語なの?」 息子「ううん」 母「算数なの?」 息子「うん」 ……で、やっと「今日の宿題は算数で、何頁から何頁まで、と突き止めるわけですね。」
2010-11-27 23:44:04(1bit 通信つづき) 的川先生「僕は体重100㎏あるんですが、JAXAにいる女性であきらかに100㎏ある女性がいるんですよ。でも怖くて100㎏ありますかなんて聞けない。僕が「僕100㎏になっちゃったよ。この気持ち、100㎏になったことのある人でないとわからないよね?」
2010-11-27 23:45:58(1bit 通信つづき)この時、女性がにっこりしたので、(あ、100㎏はクリアしてるな)とわかった。(このような1bit通信を……hankasuu注) 3ヶ月かかって、126㎏ぐらいだろうと突き止めた。
2010-11-27 23:47:35キセノン生噴射で川口先生と國中先生が議論となっていたところに、中和器から噴射したら・・・というアイデアが出されて採用となった話。このエピソードの凄いと思った。なんせ、普通の人はメンツだ、何だと優れているとはわかっても他の意見は簡単に取り入れられるものじゃない・・・と思うから。
2010-11-28 00:16:59的川先生が「ご婦人からはやぶさの帰還を評して「お腹を痛めて子を産んで、自分は死んでいく・・・この感覚は男の人にはわからない」・・・はい、そうですね・・と」(意訳) そういう思いを抱かれる人もいるのだね・・・
2010-11-28 00:22:03小学生が「今から何をやっておくとよいですか?」 的川先生「うんと遊んでおいてください・・・そうするとアイデアが出るようになる・・・今から宇宙の事ばかり勉強したらマニアになるだけ(苦笑)」 ・・・うーん、なんか身に覚えがあるような。家庭を持つことができたら気を付けます(^^;
2010-11-28 00:26:56的川先生講演会メモ続き。IESクロス結合に関して。的川先生「帰り道、とうとうイオンエンジンすべてが故障した。ABCDと呼ばれている四つのイオンエンジンのうち、Aエンジンは打ち上げ後すぐ故障したのでずっと悪口ばかり言われてきたが、(使っていないので)まっさらだった。
2010-11-28 08:42:39