#完全ノープラン艦これ与太話 【アドミラルズ・デシジョン】 #1～#2

春魔解丼 @vespiking

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魚雷設計図や弾道計算式を書いた紙が壁一面に貼られた、暗い部屋。サイバーサングラスをかけた白服の巡洋艦が、眼前の映像を眺め、蕩けた吐息を漏らす。アイカメラめいて撮影された、執務室の映像。視線は、やや低い位置に見える。巡洋艦はコタツに潜り込む。｢ウフフ、北上＝サン｣ #KZNPLN

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設計図の間に伸びるカケジクには｢大陸間弾道魚雷｣｢抑止力｣｢平和主義者｣｢レギンレイヴ｣といった革命的なショドーが力強く並ぶ。巡洋艦はコタツで丸くなり、荒い息で携帯IRC端末を取り出した。｢ハァーッ、ハァーッ、北上＝サン……死んで？｣ブツリ。映像が途絶えた。 #KZNPLN

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ＣＲＡＴＯＯＯＯＯＭ！遠く離れた辺境の鎮守府で、執務室が突如、爆発した。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【アドミラルズ・デシジョン】 #KZNPLN

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｢ぽい！？｣爆発音にいち早く反応したのは夕立である。鎮守府が、執務室が、燃えている。夕立はほとんど脊髄反射で鎮守府の方角へ跳んだ。人呼吸置いて、他の面々もぞろぞろと居住区から飛び出してくる。ウシミツ・アワーを告げる鐘の音が、総員を出迎えた。 #KZNPLN

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｢北上＝サン！アーッ！アアアアーッ！｣夕立はほとんど涙目になりながら、爆ぜ飛んだ黒い執務室で瓦礫を掻き分けた。北上は最近、執務室で寝泊りしていたはずだ。夕立の全身から汗が吹き出し、血流が血管の内壁をビリビリと擦る。瓦礫の下から、壊れた車椅子と魚雷管が出てきた。 #KZNPLN

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｢アアア、アアアアア……｣夕立は膝から崩れ落ちた。強固な魚雷発射管が内側からひしゃげ、黒焦げになっている。魚雷の暴発。そして、五連装の魚雷管10基、雷装50門が一斉誘爆。状況を検める限りは、そうなる。そんな、ばかな。誰より魚雷を知る北上が、暴発事故など。 #KZNPLN

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夕立の内側で、ふつふつと黒い感情が渦巻いた。北上が暴発事故など起こすはずがない。これは人為的なものだ。白目が涙を吸い取り、瞳を圧縮する。艤装がバカリと割れ、暗黒の触手がぐらぐらと沸き立ち、行き場のないエネルギーを空中に逃がす。｢オ、オオ、オオオオ……｣ #KZNPLN

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パキリ。瓦礫を潰す甲高い音を、夕立の鋭敏な聴覚は逃さない。｢……ぽい｣赤黒のキリングオーラに全身を包まれた夕立は、のそりとそちらへ向いた。キィキィと金属の軋む音、足音。夕立は筋肉を凝縮した。破壊された執務室のドアの前に、音の主はぬうと現れた。｢ぽい……？ぽい！｣ #KZNPLN

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夕立は涙を流し、影に飛び付いた。｢ワッ、ワーッ！ぽいぽい！バ、バランスが……｣｢ぽいーっ！北上＝サン！北上＝サン！｣夕立は喉を鳴らし、車椅子の巡洋艦にじゃれつく。｢ぽい……ヨカッタ……｣｢ごめんね、心配かけたね｣北上はサイバーサングラス越しに微笑んだ。 #KZNPLN

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｢ひでェ有様だな｣車椅子を押す茶髪の駆逐艦は、執務室の惨状を見てぼやく。｢そんなにひどいのか｣｢アー、これは間違いなく死んでる。九三式酸素魚雷、合計50発の大ハナビ・ショーだ。冗談キツいぜ｣駆逐艦は魚雷管を取り上げた。｢見ろよ、この壊れ方。まるでカートゥーンだ｣ #KZNPLN

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北上は宙を見上げながら、手渡された魚雷管を撫でるように触った。｢本当だ。こりゃひどい。完全に内側から吹き飛んでる。装甲の破れ方からして、そうか、ふむ｣北上はさらに入念に触る。｢右腰に吊った魚雷管の中央が起爆ポイント。あそこは手が届きにくい。最も劣化しやすい箇所だ｣ #KZNPLN

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｢つまり？｣茶髪の駆逐艦、秋雲が問うた。｢現場を入念に調べるほど、事故の線が濃厚になる。ここはちゃんと魚雷を外して手入れしないといけないんだ。鎮守府総指令、整備不足による爆発事故で死亡。こういうニュースが朝刊を飾る手筈だった｣｢今から差し替えか。ブン屋も多忙だ｣ #KZNPLN

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｢間違いなく雷装のプロの犯行。きっと雷巡だ。当代の北上はそもそも私で、木曾は大本営にいる。……秋雲。直近で建造された雷巡大井は、何をしてる？｣｢よし、待ってな｣秋雲はハンディUNIXを片手で操作した。｢アー……出てきた。こいつはなんとも｣ #KZNPLN

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｢当代、雷巡大井。元大本営所属。旧政権において陸軍ハバツに属し、同時に……羅針盤妖精キナシの施設部隊『REGINREIF』の一員。ピーコック島制圧戦時点でネオヨコスカにいたのが確認されている。キナシの死後……消息不明｣ #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【アドミラルズ・デシジョン】#1終わり。#2に続く。 #KZNPLN

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｢ハァーッ、ハァーッ……わ、私は今、例のひみつアジトに潜入しています……ハァーッ！ハァーッ！あ、あれは……！｣潜入者は息を荒げながら身を縮め、骨伝導式無線へ声にならない声を吹き込む。｢アーッ！なんてことだ！こんな事があっていいのか！｣ #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【アドミラルズ・デシジョン】#2 #KZNPLN

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『どうしたんだ青葉＝サン！何があった！』｢ハァーッ……！ハァーッ……！こ、これは……魚雷です！なんの変哲もない民家に、魚雷が、こんなにも！｣潜入者、青葉は真っ暗な部屋を手探りで進む。魚雷。魚雷。フクスケ。コケシ爆雷。コタツフートン。魚雷。ショドー。魚雷。 #KZNPLN

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｢雷装類がこんなに……超大和型だって沈められますよ｣『気をつけて。アブナイだ』｢わかってます｣青葉は部屋を検めていく。魚雷。魚雷。ソナー。ミカン。魚雷。魚雷……。『なにか、手がかりになるものは？』｢魚雷、ぐらいです……証拠の類は、おそらく全部、持ち出されてます｣ #KZNPLN

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青葉は陸上ソナーを再び展開した。キィー……ンン。生体脳が知覚できぬ高さの超音波が室内に反響し、動体を検知する。｢心拍数1隻。青葉ひとり。やはり蛻の殻です｣青葉は腰を屈めたまま、入口近くまで移動する。｢魚雷解除班をお願いします、総指令｣『わかった。少し待っててくれ』 #KZNPLN

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その時だった。青葉の右手に、なんらかの金属片めいた物体が触れる。青葉は掌を見た。大きな切り傷から、血が溢れている。鋭利な刃物だ。触れただけで手が切れたのだ。青葉は目を凝らした。十字に刃のついた、黒い鉄製の刃物が、床に刺さっている。これは、まるで……。｢スリケン？｣ #KZNPLN

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青葉の心拍数が３倍に跳ね上がる。この場所は、先程通った場所だ。魚雷をはじめとした、武器の類を入念にサーチしながら通った場所に、スリケン……！平安時代のニンジャが用いた、恐るべき殺人投擲武器が！こんなものは先程までなかった。つまり……？｢イヤーッ！｣｢アバーッ！？｣ #KZNPLN