不知火に落ち度はない その23

yamoto @yamoto

んじゃ、今日も始めるよー。 わくわく浜風デイズ。 #落ちぬい

yamoto @yamoto

それはある意味神業の領域だった。 踏み込む足は滑るように。 体重移動は継ぎ目無く。 抜刀の瞬間はコンマ2秒に満たない。 特殊合金で作られた日本刀の先端──物打部分が重金属の巻藁に食い込みそのまま通過する。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

さらに刃は一度だけではない、二度三度と軌道を変えて巻藁を通過する。 空母ヲ級レベルに設定した、仮想ターゲットがなます斬りだ。 そのまま無駄のない移動で、次の獲物へと走る軽巡神通。 艤装のエンチャントフィールドが薄く刃の先端に集約される。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

次のターゲットはル級クラス。浅く切るだけでは無効。 しかし、神通はそれを超越する。 三撃の突きが、ル級を想定したターゲットの眉間、喉、心臓を貫く。 240fpsのスーパースローカメラがその手の動きと体さばきを捉えきれず、ブレを生じさせた。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

三段突きかよ、と乾いた笑いが漏れる。 小説の中でしか見たことのない剣技が目の前で再現されていた。 これが神通の持ってる本来のスペックなのか。 規格外過ぎる存在がそこにいた。 正直このデータは参考にならねえな。 使う奴が強すぎる。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

ただ、艤装のエンチャントフィールドを使った、対装甲切断技術は非常に参考になった。 高熱でもなく、振動でもなく、第三の選択肢としてのやり方。 おやっさんの2年間は全然無駄ではなかったのである。 ただ、あの試作二十号──艤装無しじゃ使えないけどな。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「と、いうわけで神通の演舞を楽しんでいただけたかな？ スーパースローカメラの映像だよっ！」 はいありがとう川内。最新のiPhoneすげーなって思い知らせてくれて。 お前これやりたかっただけなんだよな。 でもわざわざ自撮りで出てこなくて良いぞ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「あ、ちなみにあと三十秒ぐらい待ってね。えっと……設定こうだよね」 嫌な予感がする。 カメラがなんか変な方向に動いて、斜め上を見るアングルに固定された。 空中技でも見せる気だろうか。 スーパースロー映像に切り替わり、奥から神通を連れてくる川内 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

なんかそれっぽく印を結んで、ぱくぱくと口を動かす。 スーパースロー映像は声入らないんだよな。 なになに？ か み か ぜ の じ ゅ つ ？ #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

次の瞬間である。 ばっさーっと、横殴りの風が吹いて神通のスカートを天空高く跳ね上げる！！ おいちょっとまてこれ放送事故！！ なんか見えちゃいけない大人なぱんつがまるだしスーパースローカメラ再生されてんぞ！？ へー、レース柄とかまでくっきりなんだな。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

あと川内。おい川内。 お前のまではっきりばっちりくっきり見えてんぞ。 白黒チェックってお前パンツでチェスでもする気か。 センスは悪くねえな。うん。 なお、神通はもうスカートを防御してるが川内はまるだしである。 ドヤ顔パンモロ。嬉しくねー。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

そうして吹き荒れる風の中をスカート押さえた神通が追いかけ、まるだしの川内が駆け抜けていく。 チェックパンツがまぶしすぎる。 妹のパンモロを全力で見せてナニしたいんだ。 しかもお前のパンモロが全部持ってってるぞこれ。 といったとこで、映像は終了した。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「……なんだろう、この疲労感」 「もう、サボってないでちゃんとやってください」 「お、わり」 尖った声に、意識を戻される。 ここは俺の自室であり──何故か浜風が三角巾を頭に装備し、ぱたぱたとモップを動かしておいでである。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

Q,なにしてるんですか？ A,俺の部屋のお掃除です。 久々に休暇を取れたと思ったら、この始末。 なお、不知火は司令室で書類整理ナウ。 休みが被ってた浜風と基地内でばったり出会い、そいや最近部屋の掃除してないと言ったら、フル装備で突撃いただいたわけで。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

なお、浜風。普通に家庭スキルはかなり高い。 はたきでぱたぱたと届かない部分の埃をまず落として、次に細かいところをやるとの指示を的確に出す。 雑巾がけ派らしくバケツもご用意済。 考えてみたら浜風の部屋、いっつも綺麗だったもんなあ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

ただし背が届いてないのはご愛敬。 椅子を使って高い所を背伸びしながらのお掃除である。 時折グラグラして、たぷたぷしてる。 ナニが？ 何だろうなあ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

と言うか俺がやればいいじゃん、高いところというツッコミは甘んじて受けたいのだが。 「適当にしないでください。隅の方まだ汚れてます」 「もー、こうです！ ちゃんと見ててください！」 「そうじゃなくてー……はい、支えて！ 持って！」 という有様でしてな。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

なんというおかん力。この浜風二十歳に満たない年齢で、主婦パワーありすぎである。 考えてみれば午後６時の常連ともなれば、その程度余裕だった。 良いお嫁さんになるぞ、お前。 旦那が寝てるところを掃除機で吸うような感じの。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

と、言うわけで俺は全てを諦めて、敷きっぱなしの布団へとダイビングトゥミー。 ああ、だらだらゴロゴロするという、最高の贅沢を今こそ解き放つ。 「はい、そこ埃だらけの所に寝ない」 けりゃ。 まさかの足が出ましたよこの子。 布団から蹴り出されましたよ俺。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「流石にそう言うの良くないと思うんだが」 「埃だらけの所に寝るのが駄目なんです。布団干してください。かび臭いですよ」 本来総員起こしタイミングで、いろいろチェックは入るし、整理整頓はデフォなのだが。 うちはそんなに厳しくないんだな、これが。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

大抵は秘書艦を中心としたカーストみたいなのが製造され、その上で網を張るように規律ができあがる。 しかしながら、過去うちの鎮守府でカーストができたことはない。 長門だろ？ ◎◎だろ？ そして不知火だろ？ どれも女王蜂とは言えないのだ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

多分あれだな。陽炎あたりはカースト作れそうな気がする。 あいつ無駄に大所帯のネームシップだしな。 誰にでも好意的に付き合えると取り巻きが出来る。 それを組織できると立派なボスになるのである。 泣いてないぞ。俺に取り巻きが居ないとか。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「しかたないので渋々と布団を干すのであった」 「声にでてますよ。もー」 ぱふぱふぱふ。 おい、はたきで俺をはたくんじゃありません。 誰が埃まみれの洗ってない提督だ。 割りとそういう陰口を頂いたことも耳に入ってる。 不知火がため息混じりに言ってた。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

ぱん、ぱんぱんと埃をたたき出す。 太陽光線がダニを焼き殺す気まんまんで照りつけている。 これなら今晩は、太陽の香りに包まれて眠れそうである。 死んだダニだけがいいダニなのだ。 ああ。なんかこう。 浜風いると日常ってのがわかるなあ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

一方室内では掃除機がフル回転。 お部屋の埃をぐんぐん吸い取ってる。 さすがダイソン。吸引力の落ちない唯一のサイクロンである。 これ浜風の私品？ ノンノン、俺の私物だ。 モグリの野郎が「これオススメだから買え」と命令形だったのだ。 #不知火に落ち度はない