#完全ノープラン艦これ与太話 【ライジング・コメット・ダイバーダウン】 #5～#6

春魔解丼 @vespiking

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ライジング・コメット・ダイバーダウン】#5 #KZNPLN

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（これまでのあらすじ：大本営クーギショ所属の爆撃機エンジニア妖精、エクサは自身の開発した大型爆撃機を大規模テロに利用され、妻子を喪い失意の底にいた。そんな折、彼女に新たな羅針盤妖精、大本営中将の人事オファーが訪れるも、彼女はこれを断った） #KZNPLN

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（これに失望した弟子のテラはクーギショを飛び出し、暗黒ＰＭＣメガコーポであるオミナント警備へ出奔。数週間後、オミナント製と思われる超大型爆撃機が高度1万mの成層圏で暴走。新羅針盤妖精タモンとキッカワは、爆撃機の専門家であるエクサに件の超重爆撃墜プランを相談した） #KZNPLN

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｢重爆に、急降下爆撃を！？｣キッカワは驚く。｢そうだ。羅針盤、ヤタガラスは指向性の高い磁気嵐を生み出す霊的兵器。発動機として運用すれば時期嵐がバリアめいて働き、搭載量に応じて物理的耐久性も向上する。アマテラスとかいう代替発動機も同じ性質だろう。機関砲より現実的だ｣ #KZNPLN

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｢皇国兵器に対する砲撃は磁気嵐バリアで弾速が落とされ、着弾時の貫通力は激減する。まして6発機。ならば、爆弾の炸裂で吹き飛ばせばいい｣エクサは計算式を書き連ねる。｢二式八十号徹甲爆弾を磁気嵐の上から、主翼の発動機に叩き込む。これで完全貫通はしない。爆風で翼を折る｣ #KZNPLN

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一般的に羅針盤と呼ばれる磁気嵐制御装置。もとは旧大日本帝国が大戦末期に研究した、航空機の発動機である。これ自体がエンジンとスタビライザーの両方を兼ね、長大な航続力と安定した高速飛行、大馬力による搭載火力強化を実現する。世に言う『皇国兵器』である。 #KZNPLN

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霊的発動機を搭載した新鋭航空機群『皇国兵器』は羅針盤自体が大戦中に実用化しなかった事もあり、当時はすべてがペーパープランに終わった。秋水や橘花といった極一部の計画機が機体のみ製造され、代替のロケット燃料やジェット発動機で試験飛行が行われたに留まる。 #KZNPLN

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時を経て現代。ついにロールアウトした霊的発動機YR51、通称『ヤタガラス』は航空機の発動機として使用できる時代ではなかった。各国の無人迎撃兵器は過剰発展し、軍用航空機はオートマチックに撃墜される。戦場はマクロの戦略兵器を淘汰し、ミクロの戦術兵器に先祖帰りした。 #KZNPLN

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だがヤタガラスは局地戦において思わぬ戦果を発揮する。艤装テックの発展により、スケールサイズで軍用艦と同等の戦力を得た艦娘。その最大の課題であった、洋上における指針決定と作戦地域までの安全な航行。これらを解決する制御装置として『羅針盤』ヤタガラスは日の目を見た。 #KZNPLN

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各国の主力兵器が羅針盤と艦娘へと移行した現在、皇国兵器は艤装スケールサイズで数例が試作。マスターヒコーキの名を冠する魔法少女めいた羅針盤妖精、イサロクが所有していたが、彼女の死亡に伴いクーギショに所有が移った。現存機は『秋水』『橘花』『火龍』の3種である。 #KZNPLN

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資料の残る皇国兵器でも『閃電』『景雲』などは未着手であり、試作時代のレシプロ版が艤装スケールで正式にカンゼンタイと定義された『震電』のような例もある。だが皇国兵器の中でも唯一つ、存在とおよそのスペックのみを遺し、計画資料がほぼ全滅した航空機がある。陸爆『富嶽』だ。 #KZNPLN

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皇国兵器のミッシングリンクと呼ばれる幻の重爆『富嶽』。一般に知られる所によれば、かのスーパーフォートレスを上回る巨体に総重量20tの爆弾を満載し、4挺の防御機関砲と6発の発動機を搭載するカイジュウじみた超大型爆撃機であったという。｢そう。4挺。倍になってる｣ #KZNPLN

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｢20mm機関砲。先程、8挺と言ったな｣｢ああ。だがなにせ写真確認だ。実際はまだあるかも……｣｢イヤ、8挺だ｣キッカワを遮り、エクサは断ずる。｢その根拠は？｣｢……富嶽に防御機関砲4挺は少なすぎる。ヤタガラス前提なら、倍積むべき。そう主張したエンジニアがいた｣ #KZNPLN

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エクサは自嘲気味に呟いた。｢――私だよ。そのバケモノを造ったのは、おそらく、私だ｣ #KZNPLN

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【 #KZNPLN 再開します】

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｢どういう意味だ？｣｢そのままの意味さ｣エクサは顔を伏せた。｢防御機関砲を8挺。胴体側面、主翼の前後に1挺ずつ、計4挺。後部に1挺。胴体下部、中央に1挺、後方寄りに2挺。20mm機関砲を計8挺｣キッカワは写真と見比べた。｢相違ない｣｢ハハ、当時は笑われたものだ｣ #KZNPLN

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｢富嶽の優位は、高高度における高速性にある。B-29を知っているか？世界最高の重爆だ｣エクサはちらと棚を見た。歪んだ銀の航空機模型を。｢B-17に装甲では遥かに劣るB-29を最高たらしめたのは、高度だ。戦闘機に上を取られない。これ以上の防御はない｣ #KZNPLN

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｢ましてヤタガラスを積む前提。上方向の防御力は疎かでもいい。富嶽にとって最も警戒すべきは、秋水や震電のような『下から重爆を殺せる超乙戦』なんだ。下部機関砲で迎撃し、擦れ違いざまの一撃を耐え、側面機関砲でカイシャクする。20mm8挺は必要最低限の武装だ｣ #KZNPLN

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エクサははたと我に返り、身を引いた。後悔に勝り、奇妙な高揚感があった。おそろしい高揚だった。｢……すまない。つい熱くなった｣エクサは深呼吸する。｢何の話だったか。……そうだな。そうだ。目下暴走中の件の重爆。あれは私が造ったバケモノだ。私が思い描いた、夢の形だ｣ #KZNPLN

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｢私の夢が翼を持ち、大空を翔んでいる。三本足の鴉が、私の夢を収穫に来た。心の臓腑を鷲掴み、紅の唇に赤い夢を流し込み、啜る。そうだ。あれを造ったのは間違いなく、私だ。――私は、良い弟子を持った｣エクサは膝から崩れ落ちた。床を殴った。｢本当に、良い弟子を、持った｣ #KZNPLN

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エクサがそうしている間、軽口のキッカワすらも黙り、じっとエクサを見ていた。演習場のカンバンに描かれたタモンとキッカワの姿は、幾隻もの艦娘の心に宿る生きたミーミーだ。あの緑の演習カンバンを知らぬ艦娘など、そうはいない。己の意思を超えて、己の意志が強く、力強く蠢く。 #KZNPLN

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エクサはしばらくして、すくと立ち上がり、2人に向き直った。そして言った。己の意思で、己の意志を。｢わかった。羅針盤妖精に、なろう。そのかわり、条件がある｣｢……言え｣キッカワが問う。シリアスな瞳で。｢まず一つ。『彗星』を1機、寄越して欲しい。ヤタガラスを組み込む｣ #KZNPLN

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｢そして、もう一つ｣エクサはずいと前に踏み出した。タモンとキッカワ、そしてエクサが正三角形を描く。｢……新羅針盤四天王の長、大本営大将。マスターケツイ・ゴンベモン。やつに、一目会わせろ｣ #KZNPLN