ライフ・オン・ザ・ボーダー・オブ・ホワイト・アンド・ブラック

バグ放送な。アイドルとカラテ。
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ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「……アバッ」胸に突き立つ腕を見つめながら、シホが血を吐いた。シズカは腕を引き抜き、濡れた手を拭き背を向けた。「あなたの敗因は…」シホが背中から倒れ込む。その身を赤く染めながら。「…私の饂飩を馬鹿にしたことよ」彼女の冴え渡る知覚は宿敵の生命活動の完全停止を明確に伝えていた。

2014-10-25 00:20:36
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

微かに手に残る生暖かい体温、内臓の温もり。急速に冷えていくそれらと同じく、シズカの興奮も醒めていく。待ち望んだ決着なぞ所詮はこんなもの。随分とあっさりしたものだった。せめて、もう少し続けても良かったのではないかと思うくらいには。…柄にもない。シズカは歩き出した。死者を残して。

2014-10-25 00:22:42
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

…ザリ。三歩踏んで違和感を覚える。ザリザリ。五歩にして遂に立ち止まる。ジツの効果で澄み通ったニューロンに霞掛かった感覚。ノイズ。眩暈。額を押さえて耐える。それだけに留まらず、視界さえも曇り揺らめき、壊れた中古UNIXの画面めいて風景さえも滲ザリザリザリザリ010111010101

2014-10-25 00:26:20
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「…これは」そこは果たし合っていた廃ドージョーではなかった。見知った劇場のステージ。ただし色彩はモノクロに変わり、床はチェス盤めいた白黒のマス目になっている。シズカの姿もまた墨絵めいて色を失っていた。魂をヤスリ掛けするような、サツバツとした風が吹き抜け、ライトが明滅する。

2014-10-25 00:29:58
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ぼんやりとした闇に目が慣れると、シズカは客席に人影を見出した。無数の少女たち。誰もが虚ろな表情で舞台を見つめている。その中に。「…ミライ=サン!?」それは古代ローマカラテの使い手であり、シズカの友人でもあったアイドルの姿だった。先日、シホに殺されたはずの。シズカは見渡した。

2014-10-25 00:34:21
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

つまり、この客席をまばらに埋める少女たちはシホの犠牲者だというのだろうか。更に知った顔を幾つも見出し、シズカの胸中に寂寥感をもたらす風が吹き荒ぶ。ブガー。突然オツヤめいた静寂を破り、開演を告げるブザーが鳴った。カン!シズカの目の前の煙たい闇を、冷たいスポットライトが照らす。

2014-10-25 00:36:41
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

立っているのは当然一人のアイドル。白かったアイドル装束は黒い血によりバイオシマウマめいたボーダーと成り果てていた。最早判別しがたい、亡霊よりも虚ろな目。それは決して空虚ではなく、己が飽和した感情から余計なものを排除し切ったからに過ぎない。今シホの目には純粋な殺意のみが煌々と輝く。

2014-10-25 00:39:53
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「いいわ。掛かって来なさい、シホ=サン」シズカがカラテを構える。シホは前傾の獣めいて構え、一声高く吼えた。「……コロス!」恨めし気に佇む亡霊たちに見守られ、最後のステージが幕を開けた。

2014-10-25 00:44:23
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

【ライフ・オン・ザ・ボーダー・オブ・ホワイト・アンド・ブラック】未

2014-10-25 00:45:18