シー・ワー・リビング・ゼア #4

映画版モチーフです。2じゃありません。でも参考にした場面はアーケードです。
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2014-10-25 21:01:51
劉度 @arther456

【シー・ワー・リビング・ゼア】#4

2014-10-25 21:02:49
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss を使用していただけると大変ありがたいです。宜しければ暫くの間、お付き合い下さいませ)

2014-10-25 21:05:36
劉度 @arther456

風が耳元で叫んでいた。艦橋の最上階、更にその屋根の上である。下を覗けば足がすくむ程の高さ。そこに提督は立っていた。「大丈夫かな、これ……」向こう側の船からここに倒れかかっているアンテナマスト、それを伝って向こうにいくつもりだったのだが、思ったよりも細かった。 1

2014-10-25 21:06:53
劉度 @arther456

仕方なく、マストにしがみついて這うような格好でマストを渡り始める。非常に格好悪いが、見た目など気にしていられる状況ではない。なるべく下を見ないように、黙々と前に進む。半分ぐらい来たところで、腕が疲れてきたので、一度止まって休むことにした。 2

2014-10-25 21:10:13
劉度 @arther456

真下は丁度、船と船がぶつかっているところだ。ここで落ちれば、ねじれた甲板で体を両断されるだろう。もっとも、甲板が普通でも死にそうな高さなのだが。「ふぅ……」死の淵に立っていることを自覚した提督の口から、溜息が漏れる。軍人とはいえ、いつも最前線に立っているわけではない。 3

2014-10-25 21:13:32
劉度 @arther456

何しろ提督の仕事は、補給線の構築と、前線と本土に送る食料の調達。要するに後方支援だ。最前線で戦う一流の役者たちのために舞台をセッティングするのが役目であり、自分が舞台に立つことは考えていない。必要にかられて戦線に立つ時も、大体は艦娘たちの機転に助けられている。 4

2014-10-25 21:16:52
劉度 @arther456

だが、今回の演目は、提督による一人芝居。拙い芝居の腕で、なんとしても不知火を助けなくてはいけない。どんなに無様で、情けない結末になろうとも。「……よし」ひとまず体力を回復させた提督は、またマストを這い進んでいく。じりじりと、前へ。少しずつ着実に。 5

2014-10-25 21:20:17
劉度 @arther456

前に進んでいくと、ようやく向こう岸の終点が見えた。折れたアンテナマストは丁度艦橋の根本に届いている。そしてその先には甲板、主砲、そして船首が見える。だが、提督は自分の目を疑った。主砲から先が、漆を塗ったように黒い。クジラの皮膚のような、特異な装甲だった。 6

2014-10-25 21:23:40
劉度 @arther456

すぐに提督はあるものを思い出す。「深海棲艦の装甲か……」『不知火』の船首部分は、深海棲艦を構成する物質によって侵食されていた。ここは不知火の心象世界、ならば、あれが意味するものは。「……急がないと!」更にペースを上げて、提督はマストの上を這い進んでいく。 7

2014-10-25 21:26:59
劉度 @arther456

幸い、滑り落ちることなく提督は向こう岸にたどり着くことができた。硬い地面に足をつけたことに安堵しつつも、提督は警戒を怠らない。ここには、敵意をもった怪物がいる。2度も襲撃を受けては、気をつけるなという方が無理な話だ。懐にしまった銃を確認する。 8

2014-10-25 21:30:15
劉度 @arther456

準備万端なことを確認してから、提督は艦橋に続くドアを開けた。電気が付いているのに、中は暗い。いや、黒い。ところどころに、艦首と同じ深海棲艦の装甲が張り付いている。物陰に何かいないか慎重に見極めながら、提督は階段へと近づく。最上階に向かわなくてはいけない。 9

2014-10-25 21:33:29
劉度 @arther456

2階に上がり、ドアをくぐると、床や壁のあちこちに紙が貼られている部屋になった。海図室だ。出ている海図はどれもバラバラで、キスカ方面や鎮守府近海、日本海、果てはカスピ海の地図なんてものもある。それらを眺めつつ、奥のドアから階段を登ろうとするが、ドアが開かない。 10

2014-10-25 21:36:51
劉度 @arther456

どうやら鍵がかかっているらしい。電子ロックではなく、シンプルな物理錠だ。鍵があれば開く。「あいつが鍵を置いてそうなところっていうと……」机の引き出しを片っ端から開けてみる。もちろんすぐには見つからない。しかし書類に紛れるように、一冊のアルバムがあった。 11

2014-10-25 21:40:12
劉度 @arther456

迷わず手に取り、ページを開く。思った通り、間に鍵が挟まっていた。戦場では比類なき武人である不知火だが、たまにずれていることがある。鍵は引き出しに入れなくてはならないという固定観念に囚われて、同時に鍵を隠さなくてはいけないと考えた結果がこれなのだろう。 12

2014-10-25 21:43:27
劉度 @arther456

心の中でも不知火はいつも通りだ。それに少し安心して、鍵を手に取ろうとすると、写真の一枚が目に入った。白い和服姿の少女と、金髪の白人の少女が、薄暗い部屋で座っている写真だ。どちらの少女も、しあわせそうにわらっている。しかし、彼女たちが座るその床は。 13

2014-10-25 21:46:56
劉度 @arther456

ブォォォォン!激しい汽笛の音が、耳を打った。「っつう……!」まただ。また、音に引き裂かれるように、空間が剥がれ落ちていく。海図、書類、壁、灰、そしてアルバムの写真までもが、焼け焦げ灰になって消えていく。そしてその下から、赤錆びた空間が姿を現す。 14

2014-10-25 21:50:26
劉度 @arther456

さっきと同じだ。怪物を警戒し、腰のホルスターから銃を抜きながら、慎重に先に続く扉を開ける。どうせ後ろのドアには鍵がかかっているだろうし、そもそもここまできて戻る気は無い。先に伸びる通路は、曲がりくねった金網の道だった。錆びついているが、金網が抜ける心配はなさそうだ。 15

2014-10-25 21:53:43
劉度 @arther456

靴底を金網に叩きつけながら、提督は歩き出す。この空間にはギロチンのような巨大な羽の換気扇や、凍えるような冷気を吹き出す排気口がある。それだけだ。今のところ、下半身が蛇の兵士や、目を覆い口を縫いつけたヒトガタは見当たらない。 16

2014-10-25 21:57:23
劉度 @arther456

カラン、カラン。通路の先から音がした。何かがいる。息を呑んだ提督は、手の内のリボルバーを握り直した。恐る恐る前に進む。だが、先に待っていたのは、ただの空き缶だった。古い、そして不味い乾パンの缶詰だ。缶を転がしていった人影は見当たらない。奥に行ったのだろうか。 17

2014-10-25 22:00:47
劉度 @arther456

空き缶を越え、更にその先に進むと、格納庫のような広い部屋に出た。提督の歩く金網は、そのまま壁沿いに取り付けられた足場に繋がっている。部屋のはるか下方に床は無い。代わりに肉があった。サッカー場ほどの広さのある床を隅まで埋め尽くす、脈動する肉塊だった。 18

2014-10-25 22:04:08
劉度 @arther456

その上を奇妙な生物が這い回っていた。蛇に人間の手を生やした、グロテスクな怪物だ。体は床の肉塊に繋がり、そして蛇は床の肉を一心不乱に喰らっている。身の毛もよだつ光景だが、幸い、提督に危害を加える気はなさそうだった。気を取り直して、先へ進む。 19

2014-10-25 22:07:52
劉度 @arther456

だが、足場の中程までやってきた時、後ろからガンガンとやかましい足音が響いてきた。振り返ると、部屋にあのヒトガタの群れが押し寄せてくるところだった。「来たかっ!」足場は悪い。走って逃げることは難しい。ならやることは一つ、この隘路で迎え撃つのみ。 20

2014-10-25 22:10:51
劉度 @arther456

駆け込んでくるヒトガタに、提督は銃を撃った。鉛弾が次々とヒトガタを撃ち倒し、金網から突き落としていく。格闘技はからきしな提督だが、射撃の腕は舞風と海兵隊の特訓、何より本人のセンスのお陰でかなり高い。落ち着いて狙えば、走る人間にも当てることができる。 21

2014-10-25 22:14:10
劉度 @arther456

6発の銃弾を6匹に、更に素早く次弾を装填して、もう6発を6匹に。「下がってろ!」1ダース全てのヒトガタが、下に叩き落とされた。新たな獲物が落ちてきた途端、下にいる蛇の触手が駆け寄り、貪りつくしていく。同じ怪物同士で、息があってもお構いなしだ。 22

2014-10-25 22:17:27