#トラ泊神戸支部~司令官は何者編④

Twitter上で書いている、自分のところの鎮守府をモチーフにしたSSのまとめとなります。 今回で完結です。 10月26日更新。
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ですか @desuka_desuyo

諸事情(ド忘れ)のため、更新日時を変更してお送りいたします。 司令官は何者編④ #トラ泊神戸支部

2014-10-26 15:31:34
ですか @desuka_desuyo

「真意?なんのことかな」 任務娘の言葉に頸を傾げながら答えると、彼女は困ったような表情をして口を開いた。 「青葉さんに言っていた『本当の名前』についてですよ。そもそも本当の名前ってどういうことですか?青葉さんは青葉さんじゃないのですか?」 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 15:34:47
ですか @desuka_desuyo

「それも確かに名前ではあるね。でももう一つ、大事な名前があるはずなんだ」 「えーっと、艦番とかですか?」 「それはちょっと違うかなぁ」 任務娘が視線を下げて黙り込む。真剣に考えているようだったが答えにはたどり着けなかったらしく、早々に諦めてこちらに向きなおった。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 15:40:47
ですか @desuka_desuyo

「君もまだ名を持っていないけれど艦娘の一人だったね。だとしたら答えが分からなくても仕方ないだろう」 「どういうことですか?」 不思議そうな顔で尋ねてくる任務娘の言葉にあえて答えず、私は彼女に問いかけた。 「艦娘とは、一体何者なんだと思う?」 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 15:44:30
ですか @desuka_desuyo

「分かりません。過去の軍艦に宿った魂が人の形を持った、というようなことを聞いた覚えがありますが、実際どうかは……」 任務娘が先ほどよりも困惑した表情で、記憶を掘り返すように途切れ途切れの言葉を放つ。俺はその言葉を真っ向から否定した。 「それは違うよ」 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 15:47:34
ですか @desuka_desuyo

「じゃあ、何だと言うんですか?」 「艦娘も、元はただの一人の少女だ」 俺の言葉に任務娘がビクリと肩を震わせる。そして戸惑うように声を震わせながら問いかけてきた。 「で、でも。私の記憶の中にそんなものは……」 「君はオフのとき、何をしているか覚えているかい?」 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 15:49:57
ですか @desuka_desuyo

「休みになることがないので分かりません」 「そんなことはないだろう。艤装を脱ぎ、私室でくつろぐことだってあるはずだ。その時、君は何をしていたか。自分の口で話せるかい?」 「それは……」 任務娘は答えようとしたが、口をパクつかせただけで言葉は発せられなかった。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 15:52:51
ですか @desuka_desuyo

「……分かりません」 「そうだろうね。だって、オフの時の君と、今の君は別ものなのだから」 「どういうことですか!?」 俺の言葉に任務娘が珍しく取り乱していた。俺は彼女を落ち着かせて続きを話す。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 15:58:26
ですか @desuka_desuyo

「艦娘は自らの身体に艦霊を降ろすことで深海棲艦と戦う力を得る。これは聞いたことがあるかもしれない。艦霊についての説明は省くけれど、いいかな?」 任務娘が頷くのを確認して、俺は話を続ける。 「では艦霊をどう降ろすかなのだが、ここで大きく関係するのが艤装だ」 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:01:12
ですか @desuka_desuyo

「艤装が、ですか?」 「あぁそうだ。主機や武装、制服まで完璧に揃えられている理由がそこにあるんだ」 「……艤装が艦霊の憑代となっている?」 「その通り、良くお分かりで。人体に直接艦霊を降ろすことは非常にリスクの高いものだった。だから間に一つ、挟むことにしたんだ」 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:05:26
ですか @desuka_desuyo

「なるほど。ですが今の私は完璧に艦娘としての意識なのですが、これはどういうことなんですか」 任務娘が鋭いところをついてくる。流石、運営本部から連絡係として起用されるだけはあるということだろう。 「あぁ、それは艤装と素体との関係性にあるね」 「関係性……ですか?」 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:10:01
ですか @desuka_desuyo

「そう、関係性。艤装を身に着けていればいるほどより艦霊側に。逆に艤装から離れれば離れるほどもともとの人格側に意識が移ることになる。さっきオフの時について言ったのはこのことだよ」 俺の説明が理解できたのか微妙な顔つきで、任務娘はう~んと唸った。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:12:42
ですか @desuka_desuyo

「む、難しいですね。とりあえず、私たちは私たちであって、もともとこの体を持つ人でもある、ということですか」 「まぁ、簡単に言えばそうなるのかな」 「それって倫理的にどうなんですかね?」 本当にこの娘は察しが良い。だがこの件については俺もどうしようもなかった。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:14:42
ですか @desuka_desuyo

「そうだね、問題が無い訳じゃないと思うよ。ただ、深海棲艦が跋扈する今、四の五の言ってられないのが現状なんだろうね。だからこそ、俺が艦娘達のためになる鎮守府を作りたいと思ったのがあるんだけれど」 「なるほどぉ」 納得したのか任務娘がうんうんと何度か頷く。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:17:28
ですか @desuka_desuyo

そんな任務娘の動きが急に止まったかと思うと、慌てて口を開いた。 「って、さっきの説明!これじゃ本当の名前についてが分かってないですよ!」 「話しただろ、もともとの人格の名前だって」 「それは分かりました。でもそれじゃ青葉さんは知ることが出来ないじゃないですか!」 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:20:35
ですか @desuka_desuyo

「それが、出来るんだなぁ」 口元をニヤつかせて答えると、任務娘が怪訝そうな顔で聞き返してきた。 「どういうことですか?」 「艦娘は経験を積めば積むほど練度があっていく。それと同じで艤装を装備し、艦霊とより長い時間を共にした艦娘は、元の人格と混ざり合っていくんだ」 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:24:34
ですか @desuka_desuyo

「そんなことが起こり得るんですか!?」 「あぁ、実際この泊地でも、一航戦の二人は艦の意識と元の意識が混ざりつつある状態だ。大体練度が90を超えると、その度合いが大きくなる傾向があるみたいだな」 俺は以前、記憶について加賀に相談されたことを思い返す。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:28:45
ですか @desuka_desuyo

『経験したことのないはずの幼少期の記憶が夢に出てくる』 『加賀ではない別の名前で私が呼ばれている』 普段物静かな加賀が半泣きで俺に尋ねて来てから、艦娘についてかなり調べたのだった。 「それは、良いことなんですかね?」 任務娘が問いかけてくる。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:32:33
ですか @desuka_desuyo

「どうなんだろうね。ただ、これを乗り越えた先に、艦娘として真の力を得るのだと思うよ」 「それまでは、自らのことも話さない。そういうことですか?」 「まぁ、そうなるね」 俺の答えを聞いて、任務娘が大きく息を吐いた。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:34:52
ですか @desuka_desuyo

「分かったような、分からなかったような。とりあえず、頭を使って疲れました」 「君もいつか分かるようになるさ」 「そうなればいいんですけどね」 任務娘は俺の言葉にそう言い返すと、特に予定はないからと帰って行った。俺も大きく息を吐く。喋り通しで疲れたようだ。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:37:51
ですか @desuka_desuyo

「自らが何者なのか。それを知ることは苦しいことなのかもしれない。でも、それを乗り越えなくちゃいけない時が、来るんじゃないかな」 俺は艦娘名簿を開いて、高練度帯の面々を眺めた。その中には青葉の名前も。時期に彼女たちも自分について悩むことになるのであろう。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:40:57
ですか @desuka_desuyo

そうなったとき、艦と元の少女どちらも尊重できるような鎮守府を作らねば。そう思いながら、俺は名簿を閉じると執務室を後にした。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:42:51
ですか @desuka_desuyo

「青葉の、本当の名前?」 先ほど司令官に言われた言葉をもう一度呟く。目の前の鏡には藤色の髪を後ろでまとめた一人の少女の姿が映っていた。私はそれに向かって言葉を放つ。 「あなたは誰なんですか?」 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:47:19
ですか @desuka_desuyo

鏡の中の少女が、少しだけ口元をニヤつかせて笑った。 #トラ泊神戸支部

2014-10-26 16:47:27