マンガの窓表現が最近凸凹リアルになってることについて

この10年で窓表現が記号的抽象表現から具体的かつ凸凹を受け入れるようになった意味について。「GANTZ」、「アイマムアヒーロー」、「おやすみプンプン」を事例として
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建築エコノミスト森山高至「土建国防論」執筆中 @mori_arch_econo

「マンガにおける窓の表現について」加筆しました。

2014-10-28 15:31:55
建築エコノミスト森山高至「土建国防論」執筆中 @mori_arch_econo

実際の建築デザインにおいては窓回りのディテールをどこまでシャープに出来るか、というのが非常に重要な要素です。事例はミース・ファン・デルローエによるバルセロナパビリオン(1929・昭和4年の作)ですが、こんなのが理想とされています。 pic.twitter.com/Ez8BDgZdFY

2014-10-28 14:38:14
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ところが日本の建築設計で一般的なアルミサッシだと、もう窓回りのディテールがどうしようなくダメなんですね。枠周りがガッタガタで縦方向の部材と横方向の部材もデッパリとヒッコミで面(つら)がそろっていないし、溝々コキコキになっているんです。 pic.twitter.com/bjx8gH14ny

2014-10-28 14:49:37
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もちろんこのガタガタ凸凹にも理由があります。ひとつには昔アルミ原料が高かった頃アルミ使用料を減らし強度を出すために断面を工夫したとか雨水の逃がしのためだとかです。しかし、日本のサッシ周りのデザインの悪さは、掃除のしにくさでもあります。 pic.twitter.com/tNlgBZ3vRa

2014-10-28 14:55:02
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日本でもガタガタにならず窓ディテールをシャープすっきりにすることはできるのですが、特注になったり取り付けに関しても非常にシビアになってきますから、コストが倍ではきかなくなります。写真は谷口吉生さんの葛西臨海広場展望広場のサッシ割です。 pic.twitter.com/gMww5umm6r

2014-10-28 14:58:25
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現実の世界の窓回りデザインはキレイの四角な枠ではなく複雑な断面形状の部材が凸凹と一筋縄ではいかないんですが、マンガの世界では窓は記号化されて谷口吉生さん張りのシャープさを誇っております。(ただし木製窓だとこう出来なくもないんですが) pic.twitter.com/wdkR8oSWbm

2014-10-28 15:08:00
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リアル背景の元祖とも思われる大友克洋先生ですが、案外、窓回りは洗練されてキレイなんです。天井ギリギリでそろえたり桟も細くてミース・ファン・デルローエとか谷口吉生並みのシャープな窓ディテールです。そのためか、あんまり貧乏臭くないですよね pic.twitter.com/jd9QwZGtKn

2014-10-28 15:21:01
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昨今のマンガ空間において、住宅用アルミサッシの安っぽさや、ダサさのリアリティが急激に上がっていて、この絵でもそうですが、縦部材と横部材の幅が違うこと、枠が凸凹していることで、普通の賃貸アパート感が倍加してもの悲しさを補強しています。 pic.twitter.com/Cbfne5vpPQ

2014-10-28 15:30:49
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比較の意味で「ソラニン」の一シーンを建築家デザイン変換してみました。天井ピタリで、サッシ窓枠を細く縦横同寸法で凸凹無くしてあります。また壁と床の境目にある巾木も取ってみました。なんかヴィトゲンシュタインの建築とかバラガン邸みたい、、、 pic.twitter.com/MRKlZsgXhb

2014-10-29 11:10:57
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さらに建築家デザイン変換を施してみました。サッシを壁面のセンター配置に変えて、開口幅を拡大。だんだん安藤忠雄さんのマンションみたいになってきてしまいました。 pic.twitter.com/OkxrVdadne

2014-10-29 11:43:18
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本日は東北大の五十嵐研の方がお見えになりました。なんと!マンガにおける窓表現について研究なさっているんだとか。そこで、この10年間で窓表現は抽象から具象へ圧倒的な勢いで変化している旨、「プンプン」「アイアムアヒーロー」「GANTZ」の室内空間のアルミサッシ表現を例に解説しました。

2014-10-27 15:26:48
建築エコノミスト森山高至「土建国防論」執筆中 @mori_arch_econo

たとえば「GANTZ」。最初のマンションの一室。その後の異様なRPG世界の入口を果たすこの部屋が一旦普通であることが大事で、読者はすんなり物語に入り込めるのですが、普通のマンションのリアリティを支えているのがアルミサッシ枠の凸凹です。 pic.twitter.com/ZTxK71wh8B

2014-10-27 15:58:24
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「アイアムアヒーロー」でもサッシ表現は重要です。常に閉塞された状況からいかに脱出するかに生死がかかっていますが、教室に集まったゾンビの群、これに出っくわしたときの恐怖のリアリティを支えているのも、内側から見る普通の凸凹教室サッシです。 pic.twitter.com/D9R9yharwZ

2014-10-27 16:05:03
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「アイアムアヒーロー」では内側から見る窓を通じて外界をのぞむシーンが数多く出てきますが、そのたびに読者は一定のフレームの中に囚われた身動きのならない切迫感、最も普及した安いアルミサッシの凸凹枠を通じるゆえに、リアルに感じとるわけです。 pic.twitter.com/OjGJeYGDSt

2014-10-27 16:14:22
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「おやすみプンプン」では窓の外はいつも眩しい。ホワイトアウトしています。そのとき、彼らは決して外界には出ていかないんだよな、と何かのもの悲しさにリアリティを与えているのも窓の桟の表現です。特に南条さんの部屋の腰までのサッシが秀逸です。 pic.twitter.com/WtIDVGtZj7

2014-10-27 16:34:29
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「あおやすみプンプン」の中に出てくる謎のニューエイジ的団体ペガサス団の宴会風景です。プレファブの元作業場?と思わせるのが高い位置にあるサッシです。ここでは後光のように作用してるところがみすぼらしいリアリティの中で狂気を高めていますね。 pic.twitter.com/FqzLT6yWw5

2014-10-27 16:38:35
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建築エコノミスト森山高至「土建国防論」執筆中 @mori_arch_econo

@HIRARU_TONOGI なるほど!最後の晩餐ですね。しかもこれ誰が見た風景なのでしょうね。いにお先生は、俯瞰したり手前にモノを舐めたりの凄く映画的なカット回しが多いですが、この横長のワイドアングルはマンガでないと表現できないですね。

2014-10-27 16:45:59
建築エコノミスト森山高至「土建国防論」執筆中 @mori_arch_econo

@HIRARU_TONOGI プンプンまだですか!この数年の若者だけじゃない世界の閉塞感をじっくりと描いてあって激落ちするところもありますが、非常に同時代精神を感じ取ることができて素晴らしいですよ。文学でいえば坂口安吾だと思いますし、芥川賞候補ではないかと思います。。

2014-10-27 17:04:14
建築エコノミスト森山高至「土建国防論」執筆中 @mori_arch_econo

以上の作品の窓との違いを、ギャグ漫画でもありデフォルメもほどこしてあるわけだから一概に比較はできませんが「魁!クロマティ高校」この窓は記号化されたものであり、形而上的であり、クロ高があくまで抽象的空間だということがよくわかるでしょう。 pic.twitter.com/glkoCKfxw4

2014-10-27 17:22:40
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建築エコノミスト森山高至「土建国防論」執筆中 @mori_arch_econo

マンガにおける窓の表現について、なんでもかんでもリアルであればよいという意味ではなく作品の性格によります。余計な線をなくしたデフォルメが常道と思います。一方、建築家でも窓が実はキレイな矩形ではないことを忘れていて脳内で抽象化し記号化して、ディテールが見えていない人も多いものです。

2014-10-28 15:57:06
建築エコノミスト森山高至「土建国防論」執筆中 @mori_arch_econo

こうして考えてみると、窓は二重に四角を描きさへすれば「窓と伝わる」記号だけど、実際の窓は形状的に非常にノイジーであるということがわかります。建築デザインでは現実のガタガタをこの記号に近づけようとし、一方、マンガの世界では記号から脱してリアルに近づこうとしているということですね。

2014-10-28 18:30:47
建築エコノミスト森山高至「土建国防論」執筆中 @mori_arch_econo

@HIRARU_TONOGI 現在連載中の「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」も凄いです。空に浮かぶ非常事態が誰の目にも分かるにもかかわらず、それを見て見ぬ振り、もしくは日常として受け入れた現代都市を舞台に、いつ恐ろしいことが始まるのか?とヒヤヒヤさせてくれてます

2014-10-27 17:27:58