【アイドル・ポリス26】#1

アイドルとカラテ。イベント重点な。 2→ http://togetter.com/li/739544
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ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ファンファンファンファン…ウシミツ・アワーのネオサイタマ市街を、一台のパトカーがけたたましく駆け抜けていく。前方の強盗と思しきボロ車を追っているのだろうか。パトカーの軌道は右に左に蛇行し、危うく接触しかけた乗用車が道を逸れ、街路の謎めいたオブジェにぶつかって爆発炎上した。

2014-10-29 23:41:49
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

賑やかな一般道に比べ、その上のハイウェイは実際静かだ。異常なほどに。…音もなく黒い車両が道を滑り来る。それはハイデッカーと呼ばれる特殊治安維持機構の専用車だ。夜闇に紛れるよう偽装が施されているのだ。その後ろに大型車両を挟み、もう一台。二台のクルマは護送車の警護に当たっている。

2014-10-29 23:44:22
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

護送車の中、メットを着用したハイデッカー達に監視され、一人の拘束着姿の少女が檻に閉じ込められている。少女の名はシホ・キタザワ。ロックバンド『国家機密』のボーカリストだ。彼女はアンタイセイを謳う反社会的存在であったが、今日のライブにおいてこのような仕打ちを受ける謂れはなかった。

2014-10-29 23:47:31
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ライブハウス『和三盆』でのライブ中、突如踏み込んできたハイデッカーは客に向かって非殺傷武器で襲い掛かり、彼らを理不尽に逮捕した。『国家機密』のメンバーも例外ではなく、むしろ彼女達は囲んで棒で叩くなど更なる残虐行為の対象となった。その中で、シホを庇った相棒は…おお、ナムアミダブツ。

2014-10-29 23:52:07
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

虫の息で生き残ったシホは何も分からないまま朦朧とした状態で連行された。全身の強烈な痛みが気絶を許さず、麻痺した感覚の中で悪夢めいた光景をリフレインさせている。拘束着などなくともシホは指一本動かせないだろう。放っておけば実際死ぬ重症である。(((…私は…死ぬの?)))

2014-10-29 23:56:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

脳裏にバンドメンバーを打ちのめしたチーフハイデッカーの姿が浮かぶ。あのジゴクめいた警棒捌き、嗜虐心に満ちた笑み。怒りが込み上げてくる。だが彼女に復讐を果たす力はない。彼女は死ぬのだ。(((いいや、死なないさ)))薄れゆく意識に声が響く。(((ジュリア=サン…?)))

2014-10-30 00:00:51
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

それは彼女を守ったギタリストの声か、ただの幻聴か。シホの拘束された手が動く。(((あたしらのロックはフジミさ。そうだろ?シホ=サン)))在り日の相棒はそう言って笑い、指を独特の形に曲げて天に掲げた。彼女の得意のポーズだ。シホは折れた指を震わせ形を作る。抵抗の証、キツネ・サインを!

2014-10-30 00:04:51
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

急停車した護送車の窓にフラッシュが瞬く。防音仕様の車内からくぐもった銃声が数発。そして不気味な沈黙。ややあって、護送車のドアが開き何者かが天井に飛び上がった。両手をついて身を震わせるシホの拘束着がざわめく。それは波打ち姿を変え、白黒のアイドル装束となった。「…ハ、アアア…」

2014-10-30 00:10:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

全身に歪な活力が満ちる。沸き上がる衝動が彼女の怒りに引火し燃え上がる。霧掛かった世界がクリアに映る。傷付いた身体が再構成され、別の何かに成り代わって行くのが感じられた。素晴らしい万能感。「…これが、アイドル」二台のビークルからハイデッカー達が下りてくる。「ザッケンナコラー!」

2014-10-30 00:15:31
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

今の彼女になら分かる。彼らは人工的に生み出されたクローンヤクザだ。元は闇組織の兵士だった筈。それがなぜ…?シホは彼方を仰ぎ見た。ネオサイタマに君臨する威容、今やハイデッカーの巣窟である警視庁ビルを。仇敵はあそこにいる。シホは奪い取った二挺の銃を構えた。暗黒武道ピストルカラテ。

2014-10-30 00:20:51
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

生まれて初めて握ったグリップは、十年来の付き合いのように手に馴染んだ。忌々しい快感。怒りと喜びに捩じれる口元を白黒柄のマフラーが覆い隠す。闇の中にジゴクのサイリウムめいた白い灯が瞬いた。「ドーモ、ルーントリガーです」復讐者はアイサツし、引き金を引いた。

2014-10-30 00:25:19
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

【アイドル・ポリス26】#1 終わり。#2 に続く

2014-10-30 00:27:53