インタビュー・ウィズ・ニンジャ (フィリップ・モーゼズ=サン)

『ナショナル・ストーリーテリング』誌による、ニンジャスレイヤー執筆者のひとりフィリップ・モーゼズ=サンに対しての貴重なインタビュー記事。(2000年) ブラッドレー・ボンド=サンに対してのインタビューはこちら。 http://togetter.com/li/72693 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【インタビュー・ウィズ・ニンジャ】 『ナショナル・ストーリーテリング』誌による貴重な記事、執筆者のひとりフィリップ・ニンジャ・モーゼズ(訳注:当時のペンネームはマクドガル・ニンジャだが、翻訳の都合上フィリップに統一)に対してのインタビュー(2000年)

2010-11-29 21:51:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――ブラッドレー=サンから貰ったオリガミ・メールをもとに、我々はサンフランシスコの郊外にある廃モテルを訪れた。

2010-11-29 21:53:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

--カリフォルニアの燦燦たる日差しの下、指定された部屋で待っていると、ジーンズにTシャツ姿の男が、割れた窓から突然飛び込んできて礼儀正しくオジギしたのだ。ああ、これはフィリップ=サンだ、と我々は直感した。彼はそのままカラテを続けながら、にこやかにインタビューに応じてくれた。

2010-11-29 21:58:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――てっきりニンジャ装束で現れるものと。「それなんだ。それこそが、真っ先に僕たちが伝えたかった事さ。皆、ニンジャといえばあの格好を思い浮かべるだろう? 皆、物事の表面ばかり見る。もっと本質的な、いわゆる魂というものに着目して欲しい。それこそがニンジャソウルだ。イヤーッ!(側転)」

2010-11-29 22:05:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――なるほど、深い意味があるんですね。ところで意外にも、初版執筆時、お二人は日本を訪れたことがなかったとか? 「逆にそれが良いケミストリーを生み出した。僕たちはそれをブラムストーカー・エフェクトと呼ぶ。彼が東欧を実際に訪れていたらドラキュラは駄作になっていたかもしれないよ(笑)」

2010-11-29 22:14:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――お2人の役割はどのように分担されているのでしょうか? 「これも一言ではいえないね。その時々で全く違うから。ただ、最初の頃に使っていたメソッドは……まず僕が基本的なストーリーラインを提示し、そこにブラッドレーがリアルな日本描写や考証を追加する、という形だった(中段回し蹴り)」

2010-11-29 22:21:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「僕ももちろん日本文化の造詣は深いし、凄く愛している。ムーヴィー、コミック、ノヴェル、ミュージック、ニンテンドー、メガドライヴなんかをね。そう、僕のバックグラウンドは、ややサブカルチャー寄りなんだ。一方、ブラッドレーは漢字の読み書きもできるし、ショドーやチャドーもかなり上手い」

2010-11-29 22:24:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そういうわけで、日本の歴史、伝統文化、古事記、ハイク、神秘的な言語である日本語やカタカナが深く関わるシーン……これらについては、主にブラッドレーが担当した。ただし、このキャッチボールは1回じゃ終わらない。その後僕がエディットし、さらにブラッドレーが、と何度も繰り返される」

2010-11-29 22:31:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――まさに化学反応! 「その通り。彼にはもう会ったね? 君たちが感じた通り、ブラッドレーは哲学家であり夢想家だ。一見、ローマの哲人のように理路整然としていそうで、時に凄くスピリチュアルなんだよ。彼の中では東洋の美徳と西洋の美徳が渾然一体となっている。イヤーッ!(レッグスイープ)」

2010-11-29 22:34:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「僕は、彼よりもう少し理詰めの男さ(笑)。コンピュータ工学を学んでいたからね。サイバーパンク的な要素は、主に僕の担当だよ。あいつは機械オンチなんだ(笑)。全く違う二人だから、その間に起こるケミストリーは凄い。どちらかが体系化しようとするともう片方が脱構築し、世界を広げ続けるんだ」

2010-11-29 22:37:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――あなたにとって、サイバーパンクとは? 「一言で表現すると“再生産が可能な神話”だと思う。コナンのような擬似神話作品も素晴らしいけど、過去をベースとした神話は、時代を超える普遍的な力を持ちつつも、ひとたび完成するとそこでストップしてしまう。イヤーッ、イヤーッ!(ダブルパンチ)」

2010-11-29 22:42:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「一方で、サイバーパンクは十年も経つと全てのものが古びてしまう。もちろん中には、その古びた感じが逆に良い味を出す神話的作品も存在するよ。ここで大事なのは、サイバーパンクなら、十年に一度リメイクが可能ってことさ。基本的な物語の骨子を保ったまま、無限に再生と進化を続けられると思う」

2010-11-29 22:44:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「つまりそれは、壮大な反復だ。ニンジャスレイヤーは、ミニマルテクノ的な反復の美学によって構築されている。ハイクと同じだね。数段落単位の反復が、ページ単位、エピソード単位の反復へ、そしていずれは再生する神話的な反復へと達し……ニンジャソウルは螺旋を描いて高みへと昇るだろう(恍惚)」

2010-11-29 22:46:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――次の話題に。あなたはしばしば解説内で“ニンジャスレイヤーはゴシック・サイバーパンクだ”と述べていますが、どういう意味なのでしょうか? 「2つある。まずは、古典的なサイバーパンクの文法を踏襲していること。次に、ニンジャとは吸血鬼のようなゴシック・ロマンの対象ということだ」

2010-11-29 22:50:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――ゴシック・ロマンにも造詣が深いのですか? 「ああ、僕は古今東西のエンタテイメントに精通しているからね(笑)。僕はコンピュータ・プログラミングを使って、サイバーパンクと18世紀ゴシック・ロマンの間にあるメカニズムの共通点と相違点を発見したんだ。ナムサン!(バックナックル)」

2010-11-29 22:52:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――つまり? 「どちらも反近代の精神に則っている。また、現代の有りふれた殺風景を、一方は陰鬱なディストピアやサイバーガジェットに、一方は中世ゴシック的で不吉なアンヴィエントに置換している。どちらもアンタイセイの幻想なんだ。おっと、これ以上は長くなるからまた別の機会にしよう(笑)」

2010-11-29 22:55:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――ところで、ゲーム、特にRPGがお好きだとか? 「ああ、僕らはダンジョンズ&ドラゴンズの世代だからね(笑)。その影響は隠せないだろう。RPGは確かに、ニンジャスレイヤーのコスモロジーを構成する要素の一つになっている。でも、あくまで要素の一つさ。ナムアミダブツ!(金的パンチ)」

2010-11-29 23:05:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――ニンジャスレイヤーをRPG化してみては? 「出版するつもりはないけど、個人的には少し試したことがある。今年9th Level社から発表されたNINJA BURGER RPGをベースに、ハウスルールを乗せて遊んだんだ。NINJA BURGERはホチキス綴じのパンクなPRGだよ」

2010-11-29 23:19:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「プレイヤーは、同名のファストフード・チェーンのニンジャ配達員になって、バーガーを客に届ける。全く、酷いジョークだよ(笑)。このゲームでは体力だけでなく名誉も重要だ。キャラクターシートには指が10本書いてあって、不名誉なことをするたびにケジメするんだ。ここは結構リアルにできてる」

2010-11-29 23:23:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここにハウスルールを乗せ、世界観をニンジャスレイヤーにふさわしくシリアスにした。プレイヤーはソウカイ・シンジケートのニンジャになって、要人を暗殺したり破壊工作を行ったりするわけだ。ニンジャスレイヤーは敵として出てくる。そして、遭遇したプレイヤーはほぼ間違いなく殺される(笑)」

2010-11-29 23:26:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――ゲームの話になったので、回収騒ぎの原因になったアン●ーハルク事件について… 「すまない。それについては何も語りたくない。……ただ、誤解を招かないように一つだけ言っておこう。ブラッドレーには、名前の決まっていないニンジャを、何でもアン●ーハルクにする悪い癖があった。それだけだ」

2010-11-29 23:33:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……待てよ、もしかして君たちは、僕にアン●ーハルクの話をさせるために、ゲームの話題に誘導したんじゃないだろうな? ウカツ! インタビューは終わりだ! 終わり終わり! 駄目だ、写真は駄目だ! それを寄越せ! こうしてやる! イヤーッ! イヤーッ!! イヤーッ!!! サヨナラ!」

2010-11-29 23:38:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――こうして彼は、カメラとレコーダーをカラテで破壊した後、割れたガラス窓から逃げていったのだ。窓から外を見ると、彼は相当疲れていたようで、息を切らしながら金網を乗り越えるところだった。だが幸いなことに、我々もテープも生きていたので、こうして原稿を書くことができた次第である。(了)

2010-11-29 23:40:19