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『アステロイド・マイナーズ2』(あさりよしとお)を読んでみました。うーん、まけて50点かなあ。『1』もそうだけど、有人宇宙飛行実現前に書かれたハードSF(A・C・クラーク)の欠陥をそのまま受け継いでいる。
2014-11-13 18:08:42例えばこれ。youtu.be/QBEfpVkwWS4 1950年制作のアメリカ映画『月世界征服』。今見るとヘンテコ。科学考証についてではありません。劇中でいろんなトラブルを味わうのですが、今見ると「そんなの事前に予想つくじゃん」なトラブルなのです。
2014-11-13 18:15:00『マイナーズ2』でも宇宙空間でトラブルに見舞われて慌てる姿がしつこく描かれます。いずれも科学的に正しいトラブル。しかしながら小惑星居住区とか月面基地とかが実現している時代なら、どれもとうに予測がついていて事前に手が打たれてるはずです。
2014-11-13 18:17:14ハードSFのジレンマがこれ。科学的にありうるトラブルを設定すればするほど、実際にやってくる未来にはそういうトラブルは起きなくなるの。木星探査船の搭載コンピュータが乗員を殺害する話をリアルに描けば、現実にはそういう事件が起きないように手が打たれるにきまってる。
2014-11-13 18:20:24『マイナーズ2』だと、どこかの独裁国家が宇宙戦闘機を国外の民間メーカーに発注して実際に宇宙に飛ばして空中戦に挑むもスター・ウォーズみたいにはいかないことに愕然とするという話がありますが、もうこの設定からしてダズ・ノット・メイク・センス。
2014-11-13 18:24:18なぜって、地球周回軌道上で敵機に追いすがるとか進路を変えるとかはめっちゃ複雑な計算を経ないとできないなんて話、『SFマガジン』あたりが20年も前にもう図入りで特集してそうな科学ネタだし、それを何も知らないで現実にやろうとする国が将来現れるとはとても考えられない。
2014-11-13 18:28:35『まんがサイエンス』では、毎回ぶっとんだ怪人が出てきて、強引な舞台設定でもその怪人のキャラクターとしてうまく収斂できるのです。が、ハードSFだとその手が使えない。
2014-11-13 19:21:57例えば月面基地に男二人きりの話。『サイエンス』なら怪人が出てきて、あさりとあやめを唐突に月に連れ出して軟禁して「うわーん何なのよこの生活は!」とか二人が泣き叫ぶ絵を出してそれで済んでしまう。『マイナーズ』はその手が使えない。
2014-11-13 19:25:46そこを強引に月基地に二人きりの絵を出すから、そもそもこの二人がなぜ月基地に送り込まれたのか、その経緯がはっきりしないぶん、なんだか嘘くさく感じられる。
2014-11-13 19:27:42月基地に暮らし出してからその不便さに気が付くなんておかしいじゃない。行く前に覚悟の上でやって来たのだから。不便とわかっていてなぜ月まで行く気になったのかをじっくり見せないといけない。そこを省略していきなり月の生活の絵が出る。
2014-11-13 19:30:19ハードSFとりわけ近未来ものの困難は、舞台こそ近未来でも登場人物のうち最低一名は現代人を混ぜ込まないとドラマが作りにくいことです。現代人の目線を体現した人物というべきでしょうか。それが効かないときは地の文で補う。
2014-11-13 19:57:08映画の『2001』の宇宙ステーションのやり取りを見ていると、60年代の人間そのもの。高い教育を受けて、経済的にもそれなりに高い社会地位にある60年代の白人たち。つまり映画公開時の観客代表。 pic.twitter.com/v4I9YgHvqy
2014-11-13 19:59:24サイバーパンクの定番テーマは、人間の体がすべて人工化できて、記憶すら書きかえられるとなると、「私」の根拠はどこにあるの?でした。そういう問題意識が目の前の未来として感じられていました。
2014-11-13 20:01:34昨日腐したあさりSFの良さは「気づき」を読者にうながすところ。『まんがサイエンス』もそうですね。そこは高く評価しています。例えばスペースコロニー計画がいかに非現実的であるかをちょっとした計算で「気づき」させるところとか。 pic.twitter.com/IF4QDpToFc
2014-11-14 06:59:27『マイナーズ』や『夏のロケット』は「気づき」でいっぱい。ただ登場人物が「気づき」に至る過程が強引なんですよ。ここで紹介したページでも、月基地から地球の小学校にテレビ中継してる真っ最中に基地員が計算を始めて「ありえねー!」と叫んでしまう。それこそありえない話。
2014-11-14 07:04:01なぜって月基地ができているような時代なら、コロニー計画がいかに非現実的かなんてもう常識化してるはずなんだから。それを今頃「ありえねー!」と気づくほうがありえない。
2014-11-14 07:05:12あさりはブラックな味が売りとよく言われます。本当にそうかな。今言ったように月基地が実現した時代になって今さら「コロニー?ありえねー!」と叫びだすありえなさを、ブラックな味と称して強引に押し倒しているようにも見えます。
2014-11-14 07:07:29「自作に関してはいかなる弁明もしない」と言い切るあさり。一見清い態度だけど、それも本当は「どんな批判やツッコミにも俺は耳を傾けない。ゆえに批判なぞしても無駄だぞお前ら」が半ば本音という気がします。
2014-11-14 07:09:46近未来の設定だけど主人公(か準主人公)は現代人(つまり私たち)。そこに近未来人たちがツッコミを入れてくる。これが『マイナーズ』のパターン。怪人がツッコミ役(ボケも兼ねる)だと『まんがサイエンス』になる。
2014-11-14 07:18:26あさりよしとお『アステロイド・マイナーズ2』を読んで思ったこと togetter.com/li/744839 マイナーズ1は「月基地を経由してもコスト的には無駄なんだけど、なぜかやろうとするんだよ」という愚痴で始まるので「わかってても人間はなぜかやる」こと自体がお題の気もしますが
2014-11-14 17:01:52軌道上のドッキングの基礎の基礎を主人公がろくに理解していないのは設定上無理があります。「全自動だから」では理由にならない。あさりSFの弱点がもろに出ている話だと思いました。 @izumino
2014-11-14 19:12:58それから小惑星が山のてっぺんと同じなんだと主人公が気が付く話も変。なぜって山頂とは「たどり着く」ところであって「暮らす」ところではないのだから。@izumino
2014-11-14 19:13:26