紅鎮守府日記 大鳳編

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戦争さん @RAKUNYA

やや呆然とする提督を置き去りに、医務室を出て行く大鳳。 「……なんだ、『大鳳』……いや、『トモコ』のやつ――」 誰もいない部屋で、先ほどの戦闘で少々痛む関節を揉みながら。 「――やればできるじゃないか」 呟かれたその言葉は、虚空へと消えていった。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 23:19:01
戦争さん @RAKUNYA

「だから、その証拠として……いずれ、同じ証を、この指にください」  空母とは思えぬ小さな体躯。細く華奢な指先でつままれたのは右薬指。 「……それなら強くならないとな」 「……はい。よろしくお願いします……提督」 #紅鎮守府日記

2014-12-31 23:18:36
戦争さん @RAKUNYA

その言葉に提督は首を傾げる。しかし、大鳳はなにやら吹っ切れた様子で立ち上がり、言う。 「私も、"お兄さま"と同じくらい……いえ、大鳳として、それ以上の絆を……あなたと築いてみせます」  近づき、そっと提督の右手をとる。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 23:18:03
戦争さん @RAKUNYA

少しだけ寂しそうな大鳳に、どうしたらよいか分からない提督。 沈黙の時間が過ぎていく。 数分だけ、互いの息づかいしか聞こえぬ時間が過ぎた後、大鳳が口を開く。 「……お兄さま」 「……なんだ? 」 「負けませんから」 「……? 」 #紅鎮守府日記

2014-12-31 23:17:33
戦争さん @RAKUNYA

「はい……あの、ちょっとお手を借りてもよろしいですか? 」 「……? 」  左手を差し出す提督。指には二つの銀のリングが光る。 「……お兄さまには、すでに強い絆が……あるのですね」 「ん……まぁ、な」 「……そうですか」 #紅鎮守府日記

2014-12-31 23:16:55
戦争さん @RAKUNYA

「……そう、ですか」 「ただ、あのときだけは違った。あれは……あの行動をしているのは、大鳳ではなくトモコだと……そう感じたんだ」 「…………」 「だからトモコに呼びかけた……これでいいか? 」 #紅鎮守府日記

2014-12-31 23:16:23
戦争さん @RAKUNYA

「ん……あー……」 質問に対し、言葉を濁す提督。 「…………なんというか、だな」 「……はい」 「……最近、俺はお前の中での大鳳を見ていた……いや、お前の行動それ自体が、大鳳としてなじみ始めていると思っていた」 #紅鎮守府日記

2014-12-31 23:15:51
戦争さん @RAKUNYA

「……なにか、思うところがあったのか? 」 「……いえ、あの……いえ」  迷いながらもなにかを考え込む大鳳。 「……一つだけ、質問が」 「なんだ? 」 「どうして……あの時、私のことをトモコとお呼びになったのですか? 」 #紅鎮守府日記

2014-12-31 23:15:15
戦争さん @RAKUNYA

「突然舞台に上がって打ち合ったと思ったら号泣……完全に情緒不安定なやつだな」 「うぐっ……」 「まあ、実はこうして会場を抜け出せて感謝もしているんだが……」 そこで一度言葉を切ると、座っている大鳳の足下にしゃがみ込む提督。 「……なにか、思うところがあったのか? 」#紅鎮守府日記

2014-12-31 23:14:22
戦争さん @RAKUNYA

―紅鎮守府 医務室― 「……ご迷惑をおかけしました」 「まったくだ」  宴会が続く中、提督は突然泣き始めた大鳳を連れて医務室へと来ていた。  舞台に関してはとっさに響がロシア民謡を歌うことによってなんとか場を繋いだが、それでも大鳳のしたことは大きかった。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 23:13:36
戦争さん @RAKUNYA

今、この瞬間だけ。 私は『トモコ』として。 マスターに。お兄さまに。提督に。 全てをぶつける。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:42:50
戦争さん @RAKUNYA

「説明しろ! "トモコ"!! 」  どうして貴方は、その名を呼ぶんですか……!!  気づけば体が動いていた。『大鳳』ではない。『トモコ』の持つ、そのすべてを相手に叩きつけるために。  せっかく慣れかけていた『大鳳』をすべて殺し。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:42:19
戦争さん @RAKUNYA

ここにいるのは《神姫『トモコ』の記憶を持っただけの艦娘『大鳳』》ならば、求められているのは『トモコ』ではなく『大鳳』だ。 だから私は『大鳳』になった。『トモコ』はいらない。必要なのは『大鳳』 それなのに。どうして、なんで……。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:41:44
戦争さん @RAKUNYA

我慢できなかった。私の家族とそっくりな技を使うあの女が。 心の奥で気味悪がっていた。あの家とそっくりな空気が漂うこの場所を。 それでも私は黙っていた。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:41:12
戦争さん @RAKUNYA

それなのに、どうして……。 "私だけ、ここにいるんだろうか" 目覚めてから思わないことはなかった。"なぜ""どうして"私だったのか。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:40:18
戦争さん @RAKUNYA

嗚呼、でも。嗚呼それでも。 ――アンお姉様。ジュゼお姉様。マイルズ、ニーナ、ビー、オデッサ、ヴァネッサ……。 私の大切な姉妹。少し優秀なAIを積んだだけのロボット。偶然集まっただけの個体。 それでも確かに、私たちは家族だった。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:39:45
戦争さん @RAKUNYA

「……説明……してもらおうか」 すごく、すごーくそっくりで。 「……本当に、なにからなにまでそっくりです」 けれども全く違う、別人なんだということに。 雰囲気も、口調も、なにもかもがそっくりな、私の新しいマスター。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:39:06
戦争さん @RAKUNYA

打ち合ったのは、たったの二合。 いや、それも必要なかった。最初の一太刀で、すべて理解していた。 あぁ、この人は……。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:38:09
戦争さん @RAKUNYA

嗚呼……嗚呼……。 なんということでしょう。 これがヒトのカラダ。これがタマシイのイレモノ。 なんて……なんて……。 素敵なんでしょう……!! #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:36:34
戦争さん @RAKUNYA

ドクドクと波打つ心臓。ザーザー耳鳴りがひどい。会場の光がひどくまぶしいはずなのに、動きは一つ一つスローモーションのように見えている。意図しない呼吸の乱れはひどく胸を圧迫し、"私の中の大鳳"が悲鳴をあげるほどに体温は上昇しきっている。 初めて知る。これが"動揺" #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:35:39
戦争さん @RAKUNYA

その演武を見た時、私は一瞬自らの意識が知らぬ間に夢を見ているのではないかという錯覚に陥った。  それを否定してくれたのは、奇しくも疑いを抱いた体自身の反応だった。 #紅鎮守府日記

2014-12-31 22:34:52
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