連載「漫画いちえふ」を終えてのご挨拶

 朝日新聞の連載企画「プロメテウスの罠」の「漫画いちえふ」シリーズ(全16回)を終えての後記です。
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関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記1)本日で「プロメテウスの罠」の「漫画いちえふ」シリーズが終わりました。全16回。取材し始めたのは7月下旬のまだ蒸し暑いころで、連載が終わってみれば冬。私がいる札幌ではすでに先日大雪になりました。作者の竜田一人さんが感動的なツイートをされているので私からも少しだけ。

2014-11-21 17:28:16
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記2)「いちえふ」が世に初めて出た昨年10月、私はまだモスクワ支局の勤務でした。ネットで情報を知り、福島第一原発事故という現在進行形の社会的事象を、漫画でルポするような作品に衝撃を受けました。元々漫画が好きで、漫画家にあこがれたこともあったことから関心は高く、

2014-11-21 17:30:44
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記3)機会があれば、絶対にこの作者に取材してみたい、という思いを持っておりました。今年4月、モスクワ勤務を終え、帰国しました。それから間もなく、社内でプロメテウスの執筆の公募がありました。竜田さんといちえふを取材するなら、深く、そしてたくさん書きたいと思っていましたから

2014-11-21 17:32:42
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記4)通常、十数回の連載が許されるこの欄で執筆することを希望し、応募しました。とはいえ、それまでのプロメテウスが扱ってきたテーマや内容と一風違ったテーマでもあったので、採用されるかは自信はありませんでしたが、運がよかったのか、何とか「当選」し、取材が始まりました。

2014-11-21 17:34:49
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記4)いちえふになぜ、私が衝撃を受けたのか。もう少し説明しますと、漫画という手法でルポに近いことをやっていたことです。ルポと言えば、文章による、例えば新聞記事とか、雑誌記事とか、あるいはテレビのドキュメンタリーなどを思い浮かべますが、漫画でもそれができるという、

2014-11-21 17:37:32
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記5)少なくとも私にとっては、「コロンブスの卵」的な新鮮な気づきがあったこと、また、何者の代弁者でもない、ということに細心の注意を払った作品であるところにひかれました。前者については、これまで私は新聞記者として、テレビ記者や雑誌記者の皆さんを良きライバル、良き手本として

2014-11-21 17:40:18
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記6)競ってきたつもりでいましたが、今後は、いちえふのような漫画作品も見習い、競っていく対象になるのだな、と実感しました。後者についていえば、私のロシアへの見方、報じ方と通じるものがあると(勝手に)感じました。少しいちえふからはそれますが、日本でのロシアのイメージ

2014-11-21 17:43:33
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記7)は決してよくなく、「卵が先か鶏が先か」の議論になりますが、それに反映してか、ロシア報道も、おそロシアという言葉に代表されるような、寒くて怖くて暗いロシアばかりが取り上げられているような気がしておりました。当たり前ですが、実際にはそうではない面もロシアにはあり、

2014-11-21 17:46:32
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記8)色んな視点、側面について情報提供した方が、ロシアと付き合っていく上で(好きになるにせよ、嫌いになるにせよ)、友好ではないかと思い、ロシアのポジティブな面も含めて伝えるよう工夫をしてきました。人によってはそれが「ロシアの回し者」と映ったのでしょうか、

2014-11-21 17:48:48
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記9)よくご批判も受けました。竜田さんが「東電の回し者」との批判を受けたことがあったと聞いたとき、当時の自分自身と重ね合わせることもあり、この人を取材したいな、という思いはますます深くなりました。

2014-11-21 17:50:02
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記10)さて、今回の連載ですが、ありがたい評価、ご批判、様々なご意見をツイッターを中心に読ませていただきました。例えば、すでに「いちえふ」のファンでよく読んでらっしゃる方にとっては、私の連載は物足りなかったかもしれません。この点は連載開始前、内部でも検討しました。

2014-11-21 17:51:59
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記11)結論としては、プロメテウスの読者の中には、いちえふを読んでいない人もいるだろう、ということになり、すでにご存じの方には真新しい話ではない回も複数あったかと思います。

2014-11-21 17:53:19
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記12)連載の主眼ですが、プロメテウスという欄は、取材相手(あえて登場人物と言わせていただきます)が、ある状況下でどう行動し、どう感じ、悩み、思ったかなど、心情面を再現していくコーナーです。今回の私の連載でも、竜田さんや編集者の皆さんが原発事故前、事故後、現場での作業、

2014-11-21 17:55:35
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記13)漫画を描くとき、持ち込むとき、新人賞の審査過程、表現について悩んだとき、などなど原発という出来事を描くに当たり、様々な局面でどのように行動したのか、そのときの心情はどうだったのかを明らかにしていくという内容です。

2014-11-21 17:57:38
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記14)原発事故が、被災地にいた、いないに関わらず、多くの人に色んな影響を与え、濃淡はあれど、人生に変化をもたらした。竜田さんもまた、その一人であり、事故によって竜田さんがその後、何を思い、原発に向かい、そして作品を描こうと思ったかなどを再現したいと思いました。

2014-11-21 18:03:49
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記15)回によっては、直接原発事故と関係のない(例えばバー・クイーンの話や仮設での活動の話など)エピソードも扱いましたが、個人的には、こうした被災地での様々な、あらゆる出会いが竜田さんの作品づくりと無縁ではない、事故後の彼の心情を描くのに必要不可欠だと思い、書きました。

2014-11-21 18:05:55
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記16)その中で、13回目の鼻血のエピソードについては多くのネガティブなご意見を頂きました。広報部が出した見解通り、取材上のやりとりについては、報道機関としては、取材先との関係上、原則、明らかにできませんが、少しだけ私の方から言わせていただきます。

2014-11-21 18:08:53
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記17)(この点は竜田さんにご迷惑をかけるものではないと思いますので)。竜田さんから連載の中で、低線量被曝と鼻血についての朝日新聞の見解を入れて欲しい、と私に要望があったのは確かです。ただ、それについては、そもそも連載が、竜田さんや、担当編集者の皆さんが様々な局面で

2014-11-21 18:10:56
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記18)どう行動し、感じ、考えたかを再現するといのがこの内容です。そこに朝日新聞がこう考える、という形で、一登場人物として入るというのはおかしい、というのが一番の理由です。登場人物である竜田さんや編集者の方が低線量被曝と鼻血についての考えは記事で記しています。

2014-11-21 18:15:11
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記19)鼻血の回については、福島を思う竜田さんがこのエピソードを描きたい、と思うものの、それでも編集者と話し合った結果、より表現に慎重になろう、さらに材料を集めよう、など何度も議論し、悩み、判断していくという、お二人の表現に対する謙虚さを書こうとしたものです。

2014-11-21 18:18:03
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

いちえふ後記20)うまく伝わらなかったのは私の力不足です。ですが、こうした趣旨をわかっていただけると本望です。最後になりましたが、竜田さん、担当編集者さん、バー・クイーンさん、AP通信の影山記者、その他取材に応じて下さった皆さんに改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

2014-11-21 18:21:14