【捏造未来】成人済メルボルン同棲ルク翔【事実婚】
【side:R】最近、ルークはよく子供の姿を追いかけている気がする。休みの日、ルークの運転する車に乗ってショッピングモールに買出しに行くとよく子供連れに擦れ違い、その度にルークの視線はその姿を追っていた
2014-11-18 21:44:55その視線の意図が分からないわけではなかった。もう10年近く恋人として連れ添っているけど、同性であることを全く気に病んでいない訳ではなかったから。家庭が欲しい。そう思う事は人としてごく当たり前のことだと思うし、正直それを叶えてやれない自分自身が悔しかった。
2014-11-18 21:47:04いつかルークも、このどうしようもない願いに困り果てる事になってしまうんだろうか。俺はそれが杞憂になってほしかったけど、でもやっぱり、それは避けられない問題なんだってことが後々わかってしまったんだ。
2014-11-18 21:48:57ある日、研究所で俺は見てしまった。確か昼休み明けくらいの時間帯で、ルーク…もとい主任に報告があって俺は主任に当てられた自室へ向かっていた。仕事が終われば家で何度だって顔を合わせられるけど、でも何となく俺は嬉しくなりながら歩いていたと思う
2014-11-18 21:52:14あともうひとつ廊下の角を曲がれば、という所で誰かの声が聞こえた。一つはルークの声、もう一つは女性の声。確か彼女はルークの秘書のはず。少し気が強いけど、仕事はできる良い人だ。けれどその声はなんだか話し込んでいて雰囲気は何となく良くない。だからそっと、俺は覗いて、そして見てしまった
2014-11-18 21:55:41その後ルークが何やら言っていた気がするけど、俺の方は頭がいっぱい過ぎて、気がつくとその場から逃げていた。ルークが、彼女とキスをしていた。彼女と。女性と。俺ではない、他の人と。研究所を走り抜ける俺の頭には、あの休みの日、子供連れを見つめるルークの姿が過ぎっていた。
2014-11-18 21:59:34その晩、俺はルークに詰め寄った。久々に声を荒げて迫っていたと思う。俺は見たんだぞ、どうして彼女とキスをしていたんだ、と。いつから?俺に黙って?ルークは違うとか何とか言ってたけど頭に血が上りすぎて全然聞いてなかった。
2014-11-18 22:03:50パン、と次の瞬間には頬を叩かれてた。叩いたルークは自分自身で驚いてて、茫然としてた。俺も驚きはしたけど、でも叩かれたことがまるで肯定されたみたいで、辛くなって研究用の自室に逃げ込んだ。ドアの向こうからノックと声がするけど、俺は全部無視を決め込んだ
2014-11-18 22:12:19結局それから一言も、何も言わずに夜を明かした。最悪なことに、翌日早朝からルークはロスへ長期出張だったから、もやもやしたまま離れ離れになってしまった
2014-11-18 22:14:15ルークのいない研究所と自宅を往復する毎日を過ごしながら、俺は少しだけ冷えた頭で考えた。どうしてルークは俺という存在がありながら裏切ったのか。いや、そもそもあれは裏切り行為と言えるのだろうか。ルークは、いい加減生産性のない俺との生活に飽きてしまっただけではないのだろうか
2014-11-18 22:17:00ルークは個人的感情を表に出す事は早々ないから実は俺に打ち明けなかっただけで、本当は家庭を持ちたかったのではないか?それもずっと。俺に気を遣っていただけで、本当はそういう願望があったのではないか?だから俺に隠れて彼女と、キスを。
2014-11-18 22:18:58そうなるともしかして、俺がルークに甘えてずるずると今の生活を望んでいるせいでルークは願望を叶えられないのではないか?家庭を持つという、ごく当たり前の願いを、俺が邪魔しているのではないか?つまり俺が原因では?
2014-11-18 22:20:53その後ちょっと時間が出来たのを見計らって、個人ケータイを取り出した。電話帳に表示されたルークの名前と番号。ロスとの時差を計算しつつ、震える指とボタンを押す。あれから何日経ったっけ。何日喋ってないっけ。分からないや。けど俺から言わないと話は進まない。いい加減話さないと。
2014-11-18 22:29:52予想より少ないコール音でルークはすぐ出た。翔悟、と呼ぶ声にやっぱり安心してしまう。涙が自然に滲んでしまうのをひたすら堪えて久しぶり、とだけ応えた。それから深呼吸を数回繰り返してから、ルーク、と名を呼んで、やっと切り出した。
2014-11-18 22:33:22「やっと頭冷やせたからさ、謝りたかったんだ。あんな酷いこと言ってごめん。俺、ルークの気持ちなんて一切考えてなかった。ルークだって思うところあるもんな。ずっと一緒にいたのに、気付けなかったなんて俺ホント馬鹿だよなぁ。本当にごめん」
2014-11-18 22:36:02「もう彼女のことについては俺から何も言わないよ。だから気にしないで」『翔悟、ちゃんと話さなかった私にも責任はある。翔悟、私は』「うん、分かってる。分かってるよルーク」
2014-11-18 22:38:00