竹熊健太郎「紙から電子へ〜現代の黒船襲来」

たまには自分でまとめてみました。竹熊の出版界への関わりから電子出版の時代までの考察です。
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竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

子供の頃は漫画家になりたかったのですが、漫画を書くとそれを載せる雑誌が作りたくなり、そのうち雑誌を作るために漫画を書くようになって、雑誌編集者になりたいと思いました。ところが編集者になるためには出版社に就職しなければならず、それにはいい大学を出ないと駄目だということが分かり、

2014-12-04 10:09:26
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]大学に落ちてプロ編集者を断念しました。その後業界事情が少しずつ分かってくると、編集者になったとしても、編集長になるまでには最低20年はかかる事がわかり、出版社に入らなくてよかったと思いました。出版社に入れないなら、出版社を作ってやれと思ったのですが、これが大変で、

2014-12-04 10:15:32
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]日本で出版社を作るには、途轍もなく高いハードルをクリアーしなければならないと分かりました。それで同人誌を作りましたが、同人誌程度で満足することはできず、悶々としていましたら、インターネットが現れました。ネットを使えば、もの凄く安価に雑誌が創刊できますが、

2014-12-04 10:20:16
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]その代わりネットの海で「目立つ」ことは、炎上でもしない限り困難だとわかりました。そうこうするうち出版界の元気がなくなってきました。私がフリーライターとして業界に入った30年前は、社員編集者から「出版は不況に強い」と聞いていましたが、どうもそれほどではなかったようです。

2014-12-04 10:26:09
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]ただ電子雑誌を3年間運営して、ネットで目立つには資本さえあればそれほど難しくはないと思いました。私のようなポッと出は難しいですが、商業出版社の資本とノウハウ、実績があれば、雑作もないと思うのです。例えば一線級のプロ作家が完全新作をWeb漫画で連載すれば、必ず話題になり、

2014-12-04 10:49:34
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]アクセスが殺到し、確実に盛り上がると思うのです。ここでいう一線級作家とは、たとえば鳥山明、大友克洋、浦沢直樹、井上雄彦といった方々です。この方たちの「完全新作」というのがポイントですが、なぜこれができないのかというと、よくわからない「大人の事情」があると思うのですね。

2014-12-04 10:54:03
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]「大人の事情」は作家・出版社の双方にあると思います。簡単に言えば、作家も出版社もまだ紙で儲けたいわけです。それが沈み行く泥舟だと分かっていても、紙が経済的基盤のうちは、それを優先にしたいのですね。私から見ても、電子出版はまだ二軍扱い。どこかで限界が来ると私は思いますが。

2014-12-04 10:59:37
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]紙雑誌とネット雑誌の違いは、おそらく50年代における映画とTVの違いに相当すると思います。50年代に現れたTVを、各映画会社は脅威に感じて、「五社協定」を結んで自社に所属する映画スターをテレビ局には貸さないという嫌がらせをして防戦しました。

2014-12-04 11:14:09
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]結論から言えば、映画界のTVに対する抵抗は徒労に終わりました。1958年に11億数千万あった日本の「映画観客動員数」は、15年後の1973年には1億3千万人まで落ち込んだからです。日本国民は週に一度通っていた映画館を見放して、家で無料で見られるTVに靡いた結果です。

2014-12-04 11:20:57
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]映画人口は、わずか15年で10分の1にまで落ち込んだのです。産業の大崩壊です。しかし映画会社も役者・監督も生き残りました。全員、あれほど嫌っていたTVの軍門に下ったからです。映画会社は役者や監督・スタッフを解雇する大リストラを行ない、TVに職を求めて生き伸びました。

2014-12-04 11:25:48
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]かつて映画界を襲った「黒船襲来」とそっくり同じことが、現在、出版・放送界とネット界の間で起こっています。果たして出版界・放送界はどのようにしてネットという黒船に対抗すべきか? その答えは50年前の、TVに対する映画界の生き残り方にヒントが含まれている、と私は思います。

2014-12-04 11:29:41
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

映画人口の推移は、服部弘一郎氏のブログにグラフが出ていました。これを見ると映画動員数が底打ちした73年以降、むしろ映画総売上は伸びています。ただし物価の変動はこの50年で10倍以上になってますから、グラフをどう見るかは難しいですね。eigajournal.wordpress.com/2014/03/09/%E6…

2014-12-04 12:45:15
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

補足。映画会社が生き延びた理由はいくつかありますが、最大の理由は不動産部門の強化だったと思います。つまり映画会社は大都市駅前の一等地に直営の映画館を持っていましたので、これの不動産価値が莫大だったのです。

2014-12-04 13:45:40
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

「社員」だった俳優や監督をリストラして映画は外注制作とし、自分は製作・配給に徹して生き残りを図る。さらに不動産事業で利益を上げるという構図です。現在の大手出版社の生き残り策に近いです。バブル時代、漫画で莫大な利益を上げた大手出版社は、都心の一等地にかなりの土地を所有しています。

2014-12-04 13:51:03
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]さらに出版社が有利だったのは、「作家」は最初から全て外注だということ。映画会社が必死の思いで俳優や監督をリストラした苦労がないのです。加えて出版社にはスタジオのような大規模な設備投資が要りません。ただし今後、紙から電子へと業態を変えるとなると、リストラは必至だと思います。

2014-12-04 13:57:54
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]なぜなら、電子出版は人員が最小限の人数で済むからです。出版社の社屋もずっと小さくて済みますし、編集会議も、原稿依頼や受け取りもオンラインで出来てしまいます。電脳マヴォも最初の1年半は月一回スタッフが喫茶店に集まってミーティングをしていましたが、最近は全くしていません。

2014-12-04 14:03:47
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]電脳マヴォには締め切りもありません。更新は直前まで変更がきくので、作家さんが落としたとしても差し替えが容易だからです。連載が中心であれば更新ペースを作る必要がありますが、マヴォは読切が中心ですので、一定の更新ペースは不要です。

2014-12-04 14:13:47
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]何故締め切りが必要なのかといえば、製版・印刷・配送の都合です。それらを担当する会社はスケジュールで動いてますから、ひとつの雑誌の都合で変更するわけに行かないのです。その点電子雑誌は、製版も印刷も、配送も必要ありません。なので、電脳マヴォには締め切りがないのです。

2014-12-04 14:18:04
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

紙の本の生き残り方とは、多分こういうことだと思うのですよ。RT @DOTs_and_Loops: shinchosha.co.jp/bunko/blog/100… なるほどなー、こういうコレクターズアイテムな商法になってくのかー〉新潮文庫復刻版

2014-12-05 00:15:01
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

電脳マヴォに「締め切りが無い」のは事実です。それというのもマヴォには学生・アマチュア・兼業作家さんが多く、スケジュール管理で作家さんを縛り付けることが難しいことと、原稿料が出せないからです。プロ作家に依頼する場合のみ、些少の原稿料をお支払いしています。将来的には改善する予定です。

2014-12-05 01:34:44
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

編集コストの問題もあります。締め切りを設定した途端にコストが跳ね上がります。作家さんによっては、催促がないと原稿が描けない人がいます。この「催促のコスト」が馬鹿にならないのです。手塚治虫・松本零士・平田弘史先生級の猛者になりますと、編集が毎日仕事場に張り付かなくてはなりません。

2014-12-05 01:41:09
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

多くの出版社では、手塚治虫先生の担当編集者は若くて体力があり、独身の新入社員と決まっていました。何日も何週間も家に帰れなくなるので、既婚者は離婚の危機に見舞われるからです。それ程作家を担当するにはコストがかかります。なので電脳マヴォでは締め切りが無く、催促も特にしません。

2014-12-05 01:45:39
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

なので電脳マヴォには、中断作品が結構あります。なんとかしたいと日々気にかけていますが、原稿料が支払えないので催促できません。かくなる上は何が何でも原稿料を支払って、作品を完結させたいと思います。ここまで編集コストを切り詰めていますので、マヴォが運営できている側面もあります、

2014-12-05 01:50:01
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

また電脳マヴォでは編集会議を廃止しました。マヴォには編集室がなく、かつては月一回のペースで新宿の喫茶店で全員集まって会議していましたが、ほぼ竹熊の雑談に終始してしまい、飲食代が勿体ないので止めました。現在はオンライン会議室(サイボウズ)を使ってそこでやっていますが、十分です。

2014-12-05 01:57:36