『2010年宇宙の旅』の訳に異議あり

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It happens sometimes @ElementaryGard

Arthur C. Clarke's _2010: odyssey two_再読。第一章でフロイド博士(前作でも主役級で登場)が旧友のロシア人科学者とやり取り。月で発掘されたモノリスのことがようやく情報解禁されてどの国も探査できるようになった顛末について。

2014-12-13 13:30:22
It happens sometimes @ElementaryGard

で、ディミトリ博士がこう語る。"But that's ancient history---like the just-departed administration of yours that was responsible for the whole mess."

2014-12-13 13:32:39
It happens sometimes @ElementaryGard

ここ、伊藤典夫訳では >いずれにせよ過ぎ去った歴史だ。先日崩壊した政権と同じで。あれはひどいものだった。 だったかな。今ハヤカワ文庫版が手元にないのでうろ覚えです。

2014-12-13 13:36:12
It happens sometimes @ElementaryGard

で、この訳ではだめなのです。地球外知的生命の存在を示唆する謎の物体が月で発見され、アメリカ政府はそれを最高機密に指定して世界に公開しなかった。映画『2001年宇宙の旅』でいうとここ。 pic.twitter.com/HGG1ugUlVt

2014-12-13 13:41:02
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It happens sometimes @ElementaryGard

アメリカ大統領選は4年ごとに行われます。現実の2000年11月にブッシュJrとゴアが大激戦して僅差でJrが大統領になったときのことは記憶に新しい。

2014-12-13 13:44:42
It happens sometimes @ElementaryGard

ディミトリ博士の台詞を改めて見てみましょう。 >like the just-departed administration of yours that was responsible for the whole mess."

2014-12-13 13:45:51
It happens sometimes @ElementaryGard

「先日任期満了した政権こそがすべての元凶だったのだし」と私なら訳す。伊藤訳と比べてみてください。小説内では2000年からまる8年つまり二期連続で同じ大統領政権だった、と読めます。

2014-12-13 13:49:34
It happens sometimes @ElementaryGard

月でのモノリス発掘そして異星人が残したものだと判明したのは2000年のことだった、と想像できます。新政権の下、このことは最高国家機密に指定された、と。もっともどうやら8年の任期満了前に情報公開したようですけど。

2014-12-13 13:57:12

訂正。新政権は2001年からですね。ということは小説ではモノリス緘口令は2001年?すると木星到達は翌年。

It happens sometimes @ElementaryGard

さて小説のなかで米露共同の木星有人飛行計画が進みます。さらにはアメリカ大統領からフロイド博士に宇宙船搭乗の申し出があって、博士はそれを受けるのです。大統領の名前がちらっと出てきます。Mordecai。これ、ユダヤ系の名前です。ユダヤ系大統領…ということはおそらく民主党政権です。

2014-12-13 14:03:00
It happens sometimes @ElementaryGard

著者クラークはさりげなく2000年代のアメリカの政治情勢を語っているのです。私たちにとってはすでに過去ですが、この小説は1982年刊行だから2000年代は未来の話。

2014-12-13 14:05:04
It happens sometimes @ElementaryGard

2000年に共和党(保守的です)政権になって、それが8年続いて、2008年に民主党が政権を奪回。そしてロシアから提案された共同宇宙計画を受け入れ、フロイド博士に声をかけた。

2014-12-13 14:07:21
It happens sometimes @ElementaryGard

月で謎の遺跡(らしきもの)発見→謎を解く鍵は木星にあり→有人探査をやろう→乗員4名が死亡、1名は行方不明→謎は解かれないまま フロイド博士はこの一連のできごとの責任者でした。その負い目があるところに、米露共同の木星探査計画への参加を申し出され、彼は燃えた。

2014-12-13 14:12:03
It happens sometimes @ElementaryGard

政治情勢の変化が背後にあるわけです。著者クラークはいちいちそこまで綴らない。会話のなかにさりげなくヒントを挟んで読者の想像力をかきたてる。素晴らしい。

2014-12-13 14:14:15
It happens sometimes @ElementaryGard

伊藤訳ではそこが伝わらない。原文を読み取れていないのです。日本での邦訳敢行は1984年?うーん当時でもこのくらいは読み取ってほしかった。

2014-12-13 14:15:56
It happens sometimes @ElementaryGard

そうそう、アメリカ単独の木星探査計画で乗員4名が死亡したのは、搭載の人工知能ハルが異常をきたし乗員5名全員の殺害にでたからでした。木星探査の真の目的を船長と副長の二人には言うなと言い渡されたのがきっかけで精神分裂症状を起こした。 pic.twitter.com/Pwng5VaoHz

2014-12-13 14:23:49
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It happens sometimes @ElementaryGard

伏せる決定をしたのは、やはり問題の政権による判断だったことが_2010_のなかで解説されます。ディミトリ博士がこの政権を非難したのは、月のモノリスのことを世界に伏せたことにくわえ乗員死亡の元凶でもあったことを踏まえてです。そう読めるし、読めないといけない。

2014-12-13 14:26:21
It happens sometimes @ElementaryGard

訳者あとがきに目を通すに(今手元にないので記憶で書いています)訳者の伊藤氏はそこまで読みとれずに翻訳したようですね。

2014-12-13 14:28:12
UFO教授 (藤木文彦 Fumihiko Fujiki) @UFOprofessor

これは、クラークが「予言者」だったと言いたいのかな? >『2010年宇宙の旅』の訳に異議あり - Togetterまとめ togetter.com/li/757104 @togetter_jpさんから

2014-12-14 18:15:54
It happens sometimes @ElementaryGard

あの本がベストセラーになったのは、名作の続編であることに加えクラークの手でそっと近未来を垣間見せてもらえる快感もあったのだと思います。少なくとも政権を担う政党の予想については的中でしたアーサー卿。@UFOprofessor @togetter_jp

2014-12-14 19:16:39
It happens sometimes @ElementaryGard

第一章でジミトリ博士とヘイウッドが対話。これはおそらく2009年の初頭です。「今年一月の時点では木星探査船の名前はレオーノフ号だ」という台詞があるから。アメリカ政権交代が少し前にあったことも対話から読み取れる。四年ごとに、一月二十日に大統領の就任式があるから、[続く]

2014-12-15 16:21:01
It happens sometimes @ElementaryGard

二人が対話しているのは2009年1月下旬以降と推定できます。ちなみに場所はアレシボ。電波望遠鏡のメッカ。調べてみたらプエルトリコだそうです。直径305m。小説のなかにもこの数字がでてきます。 pic.twitter.com/zsyaraad8T

2014-12-15 16:26:40
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It happens sometimes @ElementaryGard

日没のなか、ロシアとアメリカの科学者がこの超巨大アンテナのやぐらの先で対話する。フロイドは"'I'm starting to freeze."(冷えてきてたまらん) そんなに寒い土地なの?熱帯海洋性気候なのに。1月でも夜の気温は平均21度。

2014-12-15 17:49:53
It happens sometimes @ElementaryGard

天文台の標高はわかりませんでした。野辺山やパロマなどの数字はすぐわかったのに。ということはあまり高いところにあるわけではないのでしょう。

2014-12-15 17:50:39