ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム #2
【ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム】 #2
2014-12-16 13:54:11「追え!」「決して逃すべからず」「とらえよ!」ドンダッダ!ドンダッダ!ドンダッダ!ビッグニンジャが戦闘的タイコを打ち鳴らし、弓矢ニンジャが崖めいた穴越しに矢を射た。「ヤバイ……」ドモボーイは息を呑んだ。矢は着地時のドラゴン・ニンジャを正確に狙っていた。ドモボーイの判断は遅れた。1
2014-12-16 13:58:00「イヤーッ!」ドラゴン・ニンジャは片手をかざし、飛来した矢を掴んで止めると、親指一つで折って捨てた。「ア……」言葉を失うドモボーイをドラゴン・ニンジャは一瞥し、回廊を走り出した。「な……待ち……」ドモボーイはドラゴン・ニンジャの背中と崖向こうのニンジャ軍団を交互に見た。 2
2014-12-16 14:04:35ドォン!ドォン!ドォン!タイコのリズムが変化し、崖向こうの部隊は一斉に引き返し始めた。別のルートから回り込む算段だろう。「畜生!」ドモボーイは吐き捨て、ドラゴン・ニンジャを追って走り出した。これはウカツではない!彼は己に言い聞かせる。 3
2014-12-16 14:07:11これまで散々追い込みながらそのたび逃れてしまう困難な相手が、いきなり目と鼻の先に現れてみれば、当惑してしまうのもやむなし!しかも、間近で見たあのドラゴン・ニンジャの、おお、ぬばたまの黒髪、瞳の色は謎めいて深く、「ナメやがって……!」ドモボーイは邪念を振り捨て、歯噛みする。 4
2014-12-16 14:13:48この城はそもそもドラゴン・ニンジャ自身が奴隷に命じて建造させた所有物であってみれば、自由自在に城の各所を行き来するワザの程も頷ける。城は混沌に半ば呑まれた状態にあるが、それでも奴にはわかるのだろう。「待ちやがれ……」気配が近い!ドモボーイは前方の闇に飛び込んだ。「イヤーッ!」5
2014-12-16 14:18:08闇の奥は、天井に色褪せたブッダエンジェル絵図を残す広間であった。ここはザイバツの領域ではない。あまりにタイミングのよい伏兵の襲撃、隊の壊滅……そこから先の記憶はおぼろだ。自分はどこまで来てしまったのか。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ナムサン!今はそれどころではない!6
2014-12-16 14:22:10「イヤーッ!」ドモボーイはドラゴン・ニンジャに襲いかかったニンジャをインターラプトした。ドラゴン・ニンジャはこの広間で三人のメイルシュトロム派のニンジャと戦闘を開始していた。メイルシュトロム派に彼女を確保されれば、それはギルドにとって最悪の事態となろう。 7
2014-12-16 14:25:33「イヤーッ!」ドモボーイは鉄の右拳で目の前のニンジャを殴りつけた。「グワーッ!」KBAM!インパクト瞬間、手首から先が炸薬で1インチ前へ迫り出し、敵の顔面をメンポごと粉砕した。「アバーッ!」「「イヤーッ!」」一方、残る二人はドラゴン・ニンジャに二方向からの同時攻撃だ!8
2014-12-16 14:29:42「イヤーッ!」ドラゴン・ニンジャは左手で左ニンジャのカタナ持つ手の手首を受け止め、右手で右ニンジャの断頭チョップを止めた。「イヤーッ!」そして身を引く。「グワーッ!?」右ニンジャが血を吐いた。左ニンジャのカタナがその胸を貫いていた。ドラゴン!何たる攻防一体の組み技か!9
2014-12-16 14:39:01「な……」仲間を刺してしまった左ニンジャは怯み、ドラゴン・ニンジャを見た。ドラゴン・ニンジャは容赦なく引き込んだその腕を捻り、逆の手の掌打を顎に食らわせた。「イヤーッ!」「グワーッ!」更にヤリめいたサイドキック!「イヤーッ!」「グワーッ!」回転しながら吹き飛び、壁を直撃! 10
2014-12-16 14:53:37「貴方は何ですか」彼女はドモボーイに向き直った。「ウェイ……」ドモボーイは凄味に圧されて後ずさりしかけた。だが我に返り、なんとかアイサツを繰り出した。「ドーモ。ドラゴン・ニンジャ=サン。ドモボーイです」「ドーモ。ドモボーイ=サン。ドラゴン・ニンジャです」11
2014-12-16 14:57:12「俺はザイバツ・シャドーギルドのニンジャだ」ドモボーイは言った。ドラゴン・ニンジャは逃げなかった。周囲を警戒しながら、先を促すように彼を見た。「目的はお前を捕えてギルドへ帰還することだ!その……おかしな気を起こすんじゃねえ。ここは危険なんだぜ。俺から逃げたら良くない」 12
2014-12-16 15:07:30「なぜ?」「このあたりの区画はギルドの領地とは言い難い!さっきの連中はギルドのニンジャじゃねえんだ。奴らは……」「そんな事はわかります」彼女はピシャリと言った。「そしてそもそも、この城にギルドの領地など、初めからどこにもありません。私は認めたおぼえがありませんよ!」13
2014-12-16 15:12:15「な……」ドモボーイは鼻白んだ。「やめろ!そういうそもそも論は。事実上はそうなんだよ!」その時、顔面を碎かれたニンジャの手がぴくりと動く。その手にはクナイ!「イヤーッ!」ドモボーイは反応し、顔面を踏み潰した。「サヨナラ!」爆発四散!ザンシンが足りなかったか。「見ろ!危ねえぞ」14
2014-12-16 15:18:08ドラゴン・ニンジャは溜息をついた。「どちらにせよ、ここに留まれば多勢に無勢、貴方のその主張に関しては……」KRAAAASH!「ウオーッ!」壁が吹き飛び、ビッグニンジャがエントリーした!先程のタイコ持ちだ。回り込んで来たのだ!「見ツケタゾ!ドラゴン!」 15
2014-12-16 15:24:38「畜生!アイツの名はヴァストバルクだ」ドモボーイが言った。「要は裏切り者の腰抜けよ!あるじのイクサに加わる勇気もねえムダ飯食い野郎だぜ」「そうですか」「奴らは皆そういうルーザーの集まりだ。大義もクソもねえんだ。誓って言うが、アンタ、もし捕まったらロクな事にゃならんぜ」 16
2014-12-16 15:36:51「いた、いた!」「シュフフフ……」ヴァストバルクの両脇から続々と新手のニンジャが現れる。「連れない真似はダメだよォ……キシッ!キシッ!」二者は後ずさった。「何となくわかるだろ?なあ」ドモボーイが顔をしかめた。ドラゴン・ニンジャは頷いた。「あまり面白くはなさそうですね」17
2014-12-16 15:52:23ドォン!広間の別方角の壁が砕け、新手のニンジャ達が出現した。二者は背を向け、走り出した。闇を抜け、宙へ延びる螺旋階段を飛び移る。ダダドン!ダダドン!ダダドン!タイコ・ビートと下卑た叫び声が後ろから追ってくる。「賢い選択だぜ」走りながらドモボーイが言った。「一人より二人だろ」18
2014-12-16 16:02:42「貴方はギルドヘ私を連れ帰ると息巻いていますが」走りながらドラゴン・ニンジャは言った。「その帰り道もわからないのでしょう」「まあな。今はな」ドモボーイは認めた。「だが俺をナメるなよ。それに、いいか、ギルドはお前を悪いようにはしない。丁重に連れて帰るのが任務なんだからよ」19
2014-12-16 16:09:46「説得力のあること」ドラゴン・ニンジャは冷たく言った。彼らは桟敷から桟敷へ飛び移り、廊下に抜けた。不気味に輝くモミジが等間隔で植えられている。「しかしよォ……そもそも論はするつもりはねえが、何故今戻って来た。どうやって。なあ、ドラゴン・ニンジャ=サンよ?」「知りたいですか?」20
2014-12-16 16:28:38ドラゴン・ニンジャは足を止め、ドモボーイを見た。ドモボーイは気圧された。「知り……ああ、知りたいもんだ」「撒けたようですね」彼女は背後の闇を一瞥した。それから言った。「いいでしょう。ですが、質問は一度に一つです。どうやって戻ってきたか?貴方がたのジツの逆利用です」21
2014-12-16 16:31:52「逆利用……」ドモボーイにはおよそ理解の及ばぬ話である。ドラゴン・ニンジャは瞬きし、ドモボーイの言葉を待った。彼にはそれ以上訊きようもない。「では私の番ですね」ドラゴン・ニンジャは言った。「現在のザイバツ・シャドーギルドの頂点に立つ者は誰か?答えよ」「ダークニンジャ=サンだ」22
2014-12-16 16:38:38「ダークニンジャ……!」ドラゴン・ニンジャはよろめいた。「この城を……そしてザイバツ・シャドーギルドを……彼が……」「何だ?」ドモボーイは反射的に手を差し伸べようとしたが、彼女は首を振った。「私が何故戻ってきたか、でしたね?私はこの城で何が進行しているかを確かめに来たのです」23
2014-12-16 17:01:42「確かめにだと?」「では私の次の質問に答えてください」何だお前!ドモボーイの口をついて罵倒が出そうになったが、彼は何故か頷くしかなかった。奇妙な感覚である。問いに答えてもらったのだから、自分も答えを与えるべきだ。それが当然のことであり、古事記にもある。ドモボーイはそう思った。24
2014-12-16 17:04:15