#完全ノープラン艦これ与太話 【ヒロイック・テスティモニィ】#1～#2

春魔解丼 @vespiking

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磁気嵐で荒んだ海を臨む港湾都市の闇空を、巨大潜特型ツェッペリンが威風堂々と泳ぐ。腹に吊るした巨大液晶から、不健康なほどの光を煌々と垂れ流し、人々はそれを食入るように見たり、あるいは単なる照明として、闇夜に潜む原初的恐怖を踏み躙り歩く。 #KZNPLN

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液晶には、教員らしき妖精と、幼い駆逐艦、そして小型の深海棲艦。大柄な深海棲艦が、彼女らを追いたてる。クライマックスを煽る深刻なＢＧＭが、最新音響システムからズンズンと垂れ流される。『ウワーッ！』『助けて！誰か！』『モウダメダー！』『Wasshoi！』 #KZNPLN

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追い立てる悪の深海棲艦は、エントリー者のチョップをうけて吹き飛んだ！『グワーッ！』『そこまでよ！彼女達には指一本触れさせないわ！』『ヤッター！スゴイヤッター！』駆逐艦と深海棲艦、妖精はバンザイし、歓声を上げる。『き、貴様は！組織に盾突く敵！イズモマン！』 #KZNPLN

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『イズモマンを待ち受ける』タダーン！扇情的効果音。『絶体絶命の危機！』タダオーン！悪の深海棲艦の罠にはまり、床に投げ出される白色タイプ３軍服の軽空母。『史上最大のスケールで送る！』カットが変わり、小さな深海棲艦を庇う軽空母が映し出された。『劇場公開間近！』 #KZNPLN

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一連のツェッペリン液晶と同様の映像をＴＶモニターで流しながら、黒髪の軽空母は実際安い合成ビールを放り投げるように呷り、１～２口ぶんの残った缶を無造作にダストシュートへ放り投げた。缶は隣の柱にぶつかり、床をアルコールが汚すが、彼女は気に留めない。 #KZNPLN

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真っ暗な部屋で唯一の明かりだった予告映像をブツリと切り、軽空母はほとんど下着に近い風体で四肢を投げ出し、皺だらけのシーツに覆いかぶさった。「アー、アホくさい」軽空母飛鷹は携帯IRC端末で明日の起床時間をチェックし、端末を放り投げると、そのまま眠りについた。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ヒロイック・テスティモニィ】 #KZNPLN

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「時間厳守」「法の下の平等」「勝てば欲しくなる」「ちょっとやめないか」といった威圧的ショドーが、仰々しい西洋風建築物の内側を厳しく見下ろす。国会議事堂よりも豪華絢爛な絨毯敷きの大広間を、大型艤装を背負い白色のキモノ軍服を羽織った茶髪の戦艦が威圧的に闊歩する。 #KZNPLN

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磁気嵐により海路が分断され、同時に強固な鎖国政策を敷いた大日本帝国。各地の港湾基地はそれ自体が検問であり、カイガイカンや平和的深海棲艦の極僅かな期間の滞在を、厳しく管理する。そんな帝国において唯の一箇所、永住認可の権限までもを有する巨大検問基地が存在した。 #KZNPLN

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四大鎮守府の一、帝国の西端を守護するサセイボ鎮守府の歴史は平安時代にまで遡り、常に国防の要であり象徴であった。そして現代、鎖国日本の唯一の『正門』として、巨大人工島デジマ・アイズルを丸ごと敷地とし、正義の大要塞サセイボ鎮守府は大陸を睨み、聳え立つ。 #KZNPLN

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「ドーモ、最高裁判長！」「ドーモ！」「ドーモ！」闊歩する戦艦を、一列に並んだ妖精と艦娘が怒号と敬礼で出迎えた。「Thank you、Thank you。素晴らしい統一感ネ。今日も素晴らしい一日になるデショウ！」「アリガトウゴザイマス！」再度の敬礼が戦艦を取り巻く。 #KZNPLN

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「ところで！先日の広告宣伝のResultはどの程度デス？」サセイボ鎮守府司令室にどかりと座った戦艦、金剛は秘書艦に問うた。「マーケティング観点から言えば、上々だ。だが、プロパガンダ・メッセージの浸透率が悪いとの意見も挙がっているな」「Shit！」金剛は怒鳴った。 #KZNPLN

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「それでは意味がないデース！早くRetakeを要求シナサイ！」「大丈夫か？結構なカネが要るぞ」黒髪長髪の駆逐艦は報告書をバラバラとめくる。「No problem！MoneyはJusticeの下へ集まる！我々に必要なのは絶対正義！目的を見誤るな磯風＝サン！」 #KZNPLN

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「アー、わかっている。だがカネも大事だからな。そのあたりの勘定は任せておけ。司令は安心して、職務に勤しむべきだ」「Wow！磯風＝サンは素晴らしい秘書艦デース！」磯風は少々鬱陶しげに立ち上がり、窓からの景色を一望した。カイガイカンや深海棲艦が列を成している。 #KZNPLN

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「さて。あそこにいる何割が、この帝国の土を踏むのかな？」磯風は自嘲気味に呟いた。思えば自分も、帝国本土の土など長い間踏んでいない。「サア？我々は定数を合格させるセンタ試験官や、サツバツ面接官ではアリマセン。全員か、ゼロも、在り得る話デス」金剛は紅茶を啜った。 #KZNPLN

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ブーン！大きなサイレン音が響き、有象無象の列が蠢き始めた。「さて開場時間だが、私は予告リテイクの対応があるぞ？」「大丈夫デース。私が向かえば良い話デス」金剛は優雅に立ち上がる。「おお、怖いな。裁判長自らが出撃か」「誰が行くかは無関係デショ。我々は、正義なのだから」 #KZNPLN

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悠々と歩む歴戦の戦艦を見送りながら、磯風はIRC通信機を起動した。「ドーモ、荒潮＝サン。今から時間あるか。そうだな、飛鷹＝サンはそこにいるか？……話が早い。2時間で向かう」磯風は窓を開いた。ばさり、と、漆黒の髪が風に靡き、彼女の船体を覆った。「イヤーッ！」 #KZNPLN

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法廷じみた巨大な検問所で、エイトヘッドドラゴンじみて黒いうねりとなった艦艇らが、ぞろぞろと審問官のもとへ向かい、弾かれていく。「次、書類を。不可。次、書類を」「アイエエエ……」悲壮な顔つきの深海棲艦がぽとぽとと歩み、検問所を出て崖から跳び降りた。「次デース」 #KZNPLN

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検問所の中央、エンマ・ニンジャめいて鎮座する総司令金剛の前へ、黒軍服を身に纏う金髪碧眼の重巡が立った。「ドーモ！プリンツ・オイゲンと申します！」重巡は仰々しいバルケンクロイツ紋章が刻まれた証明書を差し出す。「……Okay。通りなサーイ」「ダンケダンケ！」 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ヒロイック・テスティモニィ】 #1終わり。 #2に続く。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ヒロイック・テスティモニィ】#2 #KZNPLN

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――時刻マルフタマルマル。サセイボ諸島西端、デジマ・アイズル正面港。 #KZNPLN