鎮守府のクリスマス・2014年版

今年もSSの季節がやってきましたね。 去年のSSリレーはこちらになります。ご一緒にどうぞ→http://togetter.com/li/606996
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参加者一覧

桜の髪留めの武蔵(@BB_Y02_Musashi)
霰(@Arare_destroyer)
龍驤(@ryuujou_FC)
潮(@usio_DD)
こんごう(@Kongo_DDG)

開幕

龍驤 @ryuujou_FC

港の通りに綺麗な月、外の喧騒もここでは静か。 騒がしかった人波を避けるだけで、いつでも一人になれる。 手に盃を持てば、冬至の新月がぽかりと浮かぶだろう。 今宵も寒さが厳しい。 身体が軋んだり悴んだり。 海辺の風は容赦がない。 手に盃を持てば、風に扇がれて落としてしまいそう。

2014-12-22 20:07:08
龍驤 @ryuujou_FC

落とした盃を覗き込むと、さきほどの新月ではなく、自身の顔が浮かび上がった。 「今年は良い娘でいれたかな?」 こんな静かな場所だと、嫌でも自分と向き合える。 良い娘にしか現れない冬の魔法使い。ずっと私を見守ってくれた魔法使い。 今年は現れてくれるのだろうか。

2014-12-22 20:07:36
龍驤 @ryuujou_FC

さぁ世界中の冬の魔法使いよ! 悩み、されど挫けず、今年も頑張ったそんな娘たちにプレゼントを! 今宵はそんな、冬の魔法使いたちによる、気持ちのこもった手作りのプレゼントを。 波止場で一人佇むあの娘に届けよう。 錨を上げて、抜錨や! 艦娘SSリレー、始まるで!

2014-12-22 20:09:01
龍驤 @ryuujou_FC

さ、頑張ってな!トップバッター任せたで、武蔵(@BB_Y02_Musashi)!

2014-12-22 20:10:54
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

相わかった! 第一遊撃部隊、出撃する!

2014-12-22 20:12:00

桜の髪留めの武蔵(@BB_Y02_Musashi)の場合

桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

01 「ねぇ武蔵さん。陸(おか)で艤装動かしてもいいの?」 「さるやんごとなき御仁からの命だ。許可など不要さ」 「サルヤンさんってだあれ?」 「……おい、浜風。笑ってないで何とか言ってやってくれ」 「ふふ…いえっ…可愛い、ですね、清霜は……ふふ」 「??」 #鎮守府のクリスマス

2014-12-22 20:12:38
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

02 鎮守府から遠く離れた雪原を進む三人娘。 「だんだん、この視点にも慣れてきました!」 「ん。…じきに目的地だ、点検のほうはどうか」 「艤装妖精より報告。チェック完了、いつでも」 「ご苦労。長時間になるが、頼むぞ」 「了解です」 「…あ。ねぇねぇ、もしかしてアレじゃない…?」

2014-12-22 20:14:36
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

03 ― この日が憂鬱になったのはいつからだったのでしょう? 催事を謳歌する若人達から目を背けるようになってしまったのは、いつからだったのかな? 見上げる冬の夜空は広く深い。この夜空を渡るそりを撃ち落として…矛先を彼に向けてしまうのも仕方がないと諦めてしまったのは、いつからだ?

2014-12-22 20:16:23
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

04 夜空を見上げる。この空を覆い尽くしてしまえば、クリスマスなんて訪れないかもしれない。そう思って手を伸ばす。樹をよじ登る蔦のように天へと伸びる腕が ―― ―― 閃光に、遮られた。今は真夜中。地の果てに沈んだはずの太陽がどうして…降り注ぐ光から目を守ろうと手を広げて影を作る。

2014-12-22 20:18:10
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

05 「照明弾の点火を確認」「うぇ…何これぇ…」 「なかなか強烈な光景だな」 三人の声の先には、光に照らされてなお形を残す黒い影。コールタールのようにどす黒く、表面を泡立たせ、ぬらぬらと光を反射している。その塊の一部が里芋の葉のような傘を作り、照明弾の光から本体を守っていた。

2014-12-22 20:20:18
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

06 ― 光から守った数千数万の目、その視線の先に三ツ首の女が立っている。いいえ、そう見えるだけで、一人の女の両肩に一人ずつ少女が乗っているようです…外套にすっぽり包まれて全身は見えないな。どうして邪魔をするの? 邪魔をしないでください。邪魔をするな、そこを退け……

2014-12-22 20:22:54
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

07 留め金が幾つか外れる音と共に外套が風に攫われる。その下には更に鋼鉄を纏った女が立っていた。重厚な鉄塊の上辺、左右対称に二人の少女が腰掛けている。 「すまないが、この『夜道』は、」 巨躯の女が組んだ腕の片方を持ち上げ、天を指差しながら嘯く。 「お前達には譲れん」

2014-12-22 20:24:32
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

08 数千数万の視線を受けてたじろがぬ女。僕達の邪魔をするな、と思った時には、既に女は私達の手で覆い尽くされてしまっている。何人たりとも俺達の邪魔はさせない…このまま握り潰し 「…て、しまえるのか?」 手が、それ以上握りこめない。まるでこれ以上圧縮できない鉄球を握っているような…

2014-12-22 20:26:34
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

09 佇む女の鎧が翼のように左右に開き、纏わりつく影を打ち払った。鋼の翼、左右の小翼羽にあたる部分に少女が一人ずつ腰掛けている。 「まだ言葉を解する貴様らを討ち滅ぼしはせん。その顔もまた、人の一つの側面なのだろうからな」 中心の女が、腰の大筒を杖のようにつきながら朗々と告げる。

2014-12-22 20:28:32
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

10 「だが、譲れないな。あれは今の幼子らと、かつてのお前達の夢だ」 女の声を無視した影が再び空へ伸びる。しかし、軌道を予測した砲弾に撃ち抜かれて霧散する。腰掛ける少女が、携えた砲から立ち上る硝煙を吹き消していた。 痛いじゃないか。体表で弾けた泡から覗く幾千万の目で『敵』を睨む。

2014-12-22 20:30:19
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

11 「それで良い。…思い出せ。幼子の夢を護った父母らが居たことを。大勢の大人たちが、子らの夢を支え続けていたことを」 「枯れかけた人の子の暗い情念。でも、あなた方自身がそれを乗り越えてこそだということ」 「難しい話はわからないです!…でも、サンタさんの邪魔はだめよ? いーい?」

2014-12-22 20:32:11
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

12 正体不明の女、そして二人の少女。三者それぞれの目に宿るのは…慈しみ? この『敵』になら、 僕達の苦しみを、 私達の憂いを、 俺達の嘆きを ――

2014-12-22 20:34:10
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

13 「さあ、来るぞ! 夜空に鈴の音が響くまでの辛抱だ!」 「相手にとって不足なしです。機関最大出力」「機関最大、よーそろー!」 pic.twitter.com/y9HRY7AjOa

2014-12-22 20:35:41
拡大
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

14 鎧の背から重く響く汽笛を合図に、影が三人に突進する。 黒い翼を広げ、地に突き立てられた三本の砲身の脚を持つ大きな鳥。翼の探照灯から何条もの光を放って影を細分化・誘導し、真正面から影を受け止め、一つまた一つと投げ返す。夜空へ伸びる影の腕は、翼の少女らが悉くを撃ち落としてゆく。

2014-12-22 20:36:26
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

15 「いいぞ、掛かって来い! お前たちの敵はここだ!」 小間切れの影を片手で掴んで投げ返したり、大筒の砲身を掴み砲塔で殴る『銃床打ち』で大きな塊を打ち返したり。暴れる駄々っ子をあやすが如く一歩も退かぬ女。戦術や作戦をどこに忘れてきたのか、そも、最初からそんなものは無かったのか。

2014-12-22 20:38:35
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

16 二人の少女も縦横に砲を向け、伸びる影から夜空を守る。 「クリスマスは守るって言ったでしょ!?」 「……いえ、聞いてないですね」 「あれっ? 清霜、言ってなかった?」 「でも、今聞いたので充分。さあ、対空戦だけでも我慢しましょう」 「うん!…ほら、あなたたちも頑張って!」

2014-12-22 20:40:17
桜の髪留めの武蔵 @BB_Y02_Musashi

17 挑発、あるいは激励。やり場の無い情念の奔流を受け止め、押し返し続ける艦娘達。 「俯くな! 顔を上げて向かって来い! いいぞ…まだまだ暴れる元気があるじゃないか!」 「甚だご迷惑かとは思いますが、」「これがあなたたちへのクリスマスプレゼントよ。受け取って(気付いて)ね!」

2014-12-22 20:42:26
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