鎮守府のサンタさん 第二幕

正宗 @FL_BOM_INNER

――さらに、少し後。 再び、屋根の上に佇む、男。 「遅いな…風邪引いちまうぜ…」 先ほどとは違い、軍服をラフに着崩した感じで、両手を震わせながら、誰かを待つ。 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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「はいはーい、お待たせしました、提督ー」 「ニャー」 とん、と、軽やかな音を立てて屋根に飛び乗る、エラー娘(初代)。 少し急いできたのだろう、顔が上気している。 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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「お前なぁ…遅くなるなら、一声くらいかけてくれてもいいだろ？」 「五月蝿いですよ、提督。こっちはイベント海域に備えて、後輩の指導とかなんとかで時間がないんです、ごちゃごちゃ言ってるとこの世からの接続キャンセルさせますよ？」 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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「…ごめんなさい」 鬼気迫るエラー娘の声に、平伏する男。 「わかればよろしい」 ふんすと胸を張る、エラー娘。 さすがの男も、エラー娘の前には沈黙である。 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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「で、もう始めちゃっていいんですか？」 準備運動とばかりに、軽く伸びをしながら、エラー娘が問いかける。 「おう、いつでもいいぞ、クリスマスを、とびっきりに演出してやってくれ！」 男が親指を立てて、合図を送る。 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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「じゃあ、いっきまっすよー…っと！」 目を閉じる、エラー娘。 と、おもむろに一回転し、空へと舞い上がる。 「…気をつけてなー…」 手を振り、飛び立っていく姿を見送ると、どっかりとその場に腰掛ける、男。 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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「さてさて、プレゼントの次は、演出、だよなー…にひひ」 にやにやとした笑みを浮かべながら、先ほど送り届けたプレゼントに沸き返る、鎮守府を見下ろす。 一方、空の上。 雲の中、目を閉じるエラー娘。 「まったく…これ、疲れるんだけどなぁ…！」 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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大きく息を吸い込み、くるりとその場で一回転。 一瞬、あたりを光が包む。 その後には、サンタ服に身を包んだ、17～18歳の女の子が立っていた。 傍らには、真っ白な体毛の、虎が一匹。 「私だって、プレゼントくらい、贈れるんだからねーっ！」 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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目の前に手を伸ばし、目を閉じる。 髪の毛が、風とは違う力に、舞い踊る。 ― Connect Weather. ―― Reject Cloud. ――― Set New Weather. ―――― Alignment [Snow]. #鎮守府のサンタさん #第二幕

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―[現在の天候との接続を強制的に切断しました] ―[新しい天候との接続を開始します] その瞬間、あたりが真っ白に染まる。 真っ白に染まった空気は、次の瞬間、大小の綿雪となり、地面へと降り注ぎだした。 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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「…ふぅっ…」 大きく息をつくエラー娘。 その姿は、少女のものではなく、いつもの姿だった。 「まったくもう…こんな願い、一回きりなんですからね？」 「ニャー」 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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「おー…降ってきた降ってきた」 目の前に降り積もる、雪、雪、雪。 それらは、あっというまに視界を白く染め、屋根を、渡り廊下を、木を、草を同色に染めていく。 #鎮守府のサンタさん #第二幕

正宗 @FL_BOM_INNER

「わっはっは、クリスマスと言えば、雪！こうでなくちゃ！」 屋根の上で高笑いする、男。 どうでもいいが、憲兵に見つかったら連行待ったなしである。 #鎮守府のサンタさん #第二幕

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『わー！雪ー！すごい！』 『雪っておいしそうですよね』 『赤城はん、さっきケーキ食べたばかり…』 めいめいに聞こえる、ホワイトクリスマスへの、声。 それに満足気に頷くと、男は再度はしごを降り、執務室へと消えていった。 #鎮守府のサンタさん #第二幕

正宗 @FL_BOM_INNER

―雪の、鎮守府。 ――演出家は、エラー娘。 ―――提督と、艦娘と、全てのキャラクターに、メリー・クリスマス。 #鎮守府のサンタさん #第二幕 #了